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想いの行方 4

 =====



 やはり思った通り、レイと伯父様の反応は芳しくなかった。

 特に伯父様を説得するのはかなり苦労したと言える。

 最終的にはレイが折れ、その後に一緒に説得してもらう形となったのだった。

 条件としてお城の兵士が何人か着いてくることになったけれど。


「魔法の講義で優秀な者を選んでおいたぞ。ああ、中にはヤツも居るからな。気をつけろ」

 ヤツと言われてなんとなく察しが付いた。意外と成績も良かったから…

「ダニエルの事ね…うーん…」

 テディの事を考えてばかりいた所為か最近少々気まずいのよね…

 彼も特に今はレイに頼まれて特別な仕事をしている訳でも無いみたいで、暇さえあれば魔法の講義に参加するし、兵士達に混じって剣を持ってたりするし、私の所に質問をしにきたりもする。


 なんていうか、至って真面目にやってると思う。

 それだけに気まずいのだ。


「あー…ねぇ、クロエとか、来てもらうわけには…行かないわよね?」

 どれくらい王都を離れるか判らない以上、隊長補佐で兵の訓練を仕切っているクロエが離れるのは流石に無理かしら?と思いつつもダメ元で聞いてみる。

 なにぶん女性の兵士はクロエしか今の所居ないのだ。


 するとレイは少し考えてから、

「そうだな、ジゼルダ公や親父達とも相談してみよう。その方がアベルや叔父上も安心するだろう」

 と言ってくれた。


 その結果、クロエも着いてきてくれる事となった。これで少しは気まずい思いをしなくて済むかもしれない。

 旅立ちの日、私はみんなに見送られながら一先ずフェンスへと向かう。

「お前の事だからどうせトルーデンで終わらんだろう。暴動が発生しているなんて情報は入って来ていないがくれぐれも気を付けろ。諸侯にもお前が訪れるかもしれない旨は伝えておいてやる」

 と、最後にレイは私に言った。


 お兄様や伯父様も伯母さまも最後まで心配そうな顔をしていたけど、お父様は笑顔で送り出してくれた。

 付いた護衛はクロエやダニエルを含めて7人で、みんな私よりも年上だった。

 馬車は使わず馬に跨り進んだ為、1日でフェンスに着くことができた。

 これだけの人数の護衛なので流石にアルダの所には行けなかったけれど、クロエがコッソリと挨拶に行ってきてくれた様で、翌朝遠くからアルダが手を振って心配そうに見送りに来ていたのが見えた。


 必要になるであろう薬剤は伯父様から特別な許可を貰ってフェンスで買い付けることが出来た。

 荷馬車を用意して貰い、他にも食料や衣類等も持てるだけ積み込みトルーデンを目指した。

 平地だった場所から徐々に山道へと入っていく。

 空気が徐々に薄くなり、慣れない私やダニエルはすぐに軽い高山病に掛かってしまった。


「暫く休めば良くなるとは思いますが、あまり酷いようでしたら仰って下さい。1度山を降りないと危険ですから」

 私はクロエに言われてこくりと頷き張られたテントで横になると、持っていた薬草の本とメモを開いてめぼしい薬草が無いか調べる。

 おそらく逃げてきた人の中に同じような症状で悩んでいる人もいるかもしれないと、回らない頭を必死に回転させた。


 結局良くなるのに2日ほど掛かって、トルーデンに着いたのは王都を出てから12日後の事だった。

 道中で高山病に効きそうな薬草を幾つか採取し、魔法薬に変え持ち歩いていたおかげで、トルーデンで案の定倒れていた重症な患者さんを何人か治すことができた。

 町長に話を聞けば、この町は場所が場所だけにそこまで困った事態には陥ってないらしく、私達が何とか持ってきた物資で当面の間は充分に難民を助ける事が出来そうだという事だった。


 それでもやはり、高山病や怪我をする人が増えているようで薬の方は些か不安があるようだった。

 私は兵士達に頼んで薬になる薬草を採取してもらい、寝る間も惜しんで大量に魔法薬を作る。

 魔法の講義で優秀な彼らはさすがと言うか、薬草の採取を終えると熱心に薬の作り方を学び質問をしてきていた。

 数日もすれば今度は町の医師達が暇さえあればそこに混じって私に色々と質問をする。

 私は私で薬や医療に関して彼らに質問をして、本では知り得なかった知識なども得られ、思わぬ収穫を得ることができた。


 患者も落ち着いてきた所で、やはりというかレイの予想通り、私は北を目指す事にした。

 ただやはり今後が不安なので、暫くの間この地にとどまって王都とやり取りをしてくれる人は居ないかと兵士に頼むと、何人かが快く名乗りを上げてくれた。

 その中から私は1人選び、トルーデンを託した。


 山を下り、リドのある北を目指す。

 道中の村や街でやはり同じように難民に出くわし、出来うる限りの手助けをして回った。

 気がつけばリドがすぐ目の前という頃には兵士はクロエとダニエルだけになっていた。


「少し休んだ方がいいんじゃねぇか?リドは割と大きな街だし今すぐどうこうなるような事は無いと思うぞ。ハニーが倒れたら何にもならねぇ」

「そうして下さい。姫、お顔の色があまり宜しくないです。私も流石に疲れましたし、数日はこの町でゆっくりと過ごしましょう」


 自分ではまったくそのつもりは無かったのだけれど、どうもよほど酷い顔をしていたらしく、2人は揃って私を宿の一室に閉じ込めた。

 クロエとダニエルが今後の日程について話し合っている声が外から聞こえてきたけど、2人が言っていた通りよほど疲れていたのか、私はその会話を最後まで聞くことなく泥のように眠りに落ちていった。

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