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交差する道 2

「ーーぃ」


 うん?誰か何か言ったかしら?


「ーーティ!」


 ごめんなさい。よく聞こえないわ…それに私なんだか息が苦しくって…


「レティ!」

「うっ、げほっげほっ!」


 私はあまりの息苦しさに咳き込んで、徐々にはっきりしだす意識の中目を開けると、ぼんやりと心配そうな鳶色の髪と瞳が視界に飛び込んできた。

「ああ、よかった!死んでしまうかと思いましたよ!」

「う……ん?あれ、なんで…?」

 状況が把握出来ず、とりあえず起き上がって辺りを見回す。

 目の前には湖。

 手には瓶。


 そして隣にはメルと……テディ?


「えっと、確か鞄の帯が切れて、荷物が落ちて、〈つるつる美白くん〉が湖に落ちて、私も落ちて、溺れた。のであってるのかしら?」


 2人の顔を交互に見やると、2人同時にウンウンと頷く。

「あの、それで、なんでテディがココに…?」

 よく見るとテディもずぶ濡れで鳶色の髪からぼたぼたと水が滴り落ちている。

「僕は北の方に用事があって、その途中でここで休憩してたんですが…まさか君が茂みから飛び出して来るなんて思いませんでしたよ。しかもそのまま湖に突っ込んで浮き上がって来ないから!」

 と言ってテディはぎゅーっと私を抱きしめた。


 えっ、えっ?!助けてくれた…んだよね…?


 私はこの状況に真っ赤になりながらテディにお礼を言う。

「あ…の……助けてくれてありがとう。えっと?久しぶり、ね?」

 抱きしめられたままどうしていいか分からなくなって、とりあえず挨拶をしてみる。

 するとますますテディは腕に力を込める。


(く、苦しい…男の人って本当に力が強いのね…)


「テディ、私はもう大丈夫、だから、い、いたいっ」

 私の言葉にハッとしてテディは力を緩めると、そっと身体を離してくれた。

「す、すみません!本当に無事で良かった…久しぶりですねレティ。凄く会いたかったです」


 柔らかく微笑む鳶色の瞳にドキッと心臓が跳ね上がった。

「う、うん。私もテディに会いたかった、わ?」


(あ、あれ?なんか変じゃないかしら?普通の会話よね?これ?)


 なんだか良くわからない感覚にドキドキと心臓の音が全身に響き渡る。

 あ、そうか、溺れたから身体が興奮しているのね。


 ホッと息をついて今度はメルを見る。

「メルも心配掛けてごめんなさい。私はもう大丈夫だから」

 そう言うと涙を浮かべながら何とも複雑そうな顔で「うんうん」とメルは頷いてみせた。


 その様子を見ていたテディが少し眉を潜めて私に声を掛けた。

「レティ?その…彼は?」

「ん?ああ、そかテディはメルと初めてなんだっけ。この子はメルよ。私が小さい頃に拾った小間使い。私の命の恩人なの」

「初めまして。お嬢様の小間使いでメルと言います。お嬢様を助けて頂いてありがとうございました!」

 ぺこりとメルはテディに笑顔で頭を下げる。


「小間使い…」とテディは何故かホッとした顔をしてニッコリ笑ってメルに挨拶をした。

「武器商人で吟遊詩人のテディです。レティとは前に一緒に旅をした事がありまして…そういえばレティはどうしてここに…………うわぁっ!!」


 メルに挨拶をした後、テディが私に振り返ると、話の途中で目を見開いて思いっきり仰け反った。

「テディ?どうかしたの?顔赤いけど…」

 湖に落ちて熱でも出たかしら?とテディの額に手を伸ばすと、ブンブンとテディは両手を大きく振って更に後ずさる。

「レ、レティ!近づいたらダメだ!っていうかなんでそんな格好してるんですか?!」


 そんな格好ってどんな……

 と、そこで私は気が付いた。

 そういえば、イスクリスの衣装のままで旅してたから……


 テディに言われてようやく事態を把握した私の全身にカーッと熱が駆け上がる。

「いやっ!えっと!あのっこれはっ!その、ずっとベルンにいたからっ!なんて言うか、今着る服がこの手の服しかなくって!」

 大慌てで外套の端をギュッと掴んで身体を隠す。

 いたたまれなくって後ろを向いて誤魔化した。


(穴があったら入りたいってこういう事を言うのね)


 チラッとテディを見ると、テディも真っ赤になったまま何故か正座して腕で顔を隠しながら明後日の方向を見ていた。

「う…そうですよね、ベルンに居たんですよね…あの、なんか、すみません……」

 何でテディが謝るんだろう?!


 お互いパニックになりながら真っ赤になって硬直していると、メルが私達を交互に見てから何かを納得したように「うんうん。なるほどー」と言って腕を組んで私達に声を掛けた。


「お2人ともそのままでは風邪を引いてしまいますので、ボク焚き火の準備をして来ますね」

 何処となく嬉しそうなメルの様子に私は首を傾げる。

 テディはハッとして、慌てて「僕も手伝います!」とメルを追って森の奥へと進んで行った。

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