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交差する道 1

 =====



 ウイニーの北西ノートウォルド。

 と言ってもほぼ北に近い地域で、そこまで大きな港町ではない。と聞いている。

 ダニエルの旅行記によると、この場所は北の島国へ渡る渡航線があるらしく、貿易もそこそこ行っているらしい。

 昔、南を追われた耳の長い半獣族が移り住んだ地域だとアルダは言っていた。



 アルダが帰った後、私は早速薬を調合し、命名〈つるつる美白くん〉を完成させた。

「とうとう出来たんですね!」

 と嬉しそうにメルが声を上げる。

 メルに薬を3本渡して使用方法を説明する。


「1日1回1本まるまるお風呂に入れて頭の芯まで浸かる事。それを3日続ければ元通りの肌に戻る筈よ」

 私が説明を終えると、メルは眉を顰める。

「3日間、ですか?無理じゃないですか。3日ここに滞在するなら分かりますけど、急がないといけないんですよね?薬は完成しても使えないじゃないですかぁ!」


 ……盲点だったわ。

 北上するに当たって必ずお風呂のある宿に泊まるなんて不可能だわ。


「数日置きとかダメですよね?」

「…多分変な耐性が付いて薬が全く効かなくなるわ」


 はあぁぁ〜…と2人で大きく嘆息を吐く。

「まぁ、とりあえず薬は出来たし、ひと段落したら何処かお風呂のある場所で3泊しましょう」

 メルはがっくり肩を落として「そうですね…」と悲しそうに呟いた。



 翌日私達は馬に乗って北上を開始する。流石に王都によって行くのは気が引けるので、北西に進まずに真っ直ぐ北に進むことにした。

 幾つかの村や町を経由して、北にある森の中では1番大きな焔狼(えんろう)の森に入る。

 焔狼の森はその名の通り、焔狼が住んでいると言われている森で、初代ウイニー王国国王が焔狼と契約を行った場所でもあるらしい。


 ダニエルの旅行記によると、この森には割と危険な狼型のモンスターがいるらしいのと、美しい湖があるらしい。


 旅行記を頼りに、馬を誘導する。

 森の中でもこの森はそこそこ高低差があるみたいで、丘を登っては降りてを繰り返していた。

 湖が見えてきた頃には、馬も大分疲れを見せていた。


「湖も見えてきたし、あの辺で休憩しましょうか。この子達も大分お腹が空いてるみたいだし」

 そう言って私は馬をおりて手綱を引いて歩き始める。

「わかりました。日もだいぶ高くなりましたしそろそろお昼に丁度いいですね」

 メルも私に続いて馬をおりて歩き始める。


 っとここまでは何も問題は無かった。

 歩き始めて数分後、もう目の前に湖というところで異変が起きた。

 主に私の鞄に。


 ブチッと嫌な音がする。

「ん?」

 と私は立ち止まって周りを観察するが特に何も見当たらない。

 気のせいかな?と思ってまた歩き始めると、ブチブチブチッと大きな音が響き渡り、あろうことか、肩掛け鞄の帯が豪快に引き裂かれてしまったのだ。

「えっ?!うっそ!まってまって!!」


 運が悪いことに鞄は森をスルスルと緩やかに転がり始め、湖の方へ直行する。

 私は慌てて鞄を追いかけてなんとか鞄を抱き締めるが、幾つかの荷物が外へ転がり出していた。

「いやぁぁぁ!まってー!!」

 ある程度重みのある荷物はその辺でバラバラになって止まってくれたのだが、例のあの〈つるつる美白くん〉がよりによって湖にダイブしようとしていた。

 私は鞄をその場に残して〈つるつる美白くん〉の後を必死に追いかけた。


「だめええええ!!もう材料ないんだから勘弁してえぇ!!」

「お、お嬢様〜!」

 後ろからメルの声が聞こえたけどそれどころではない。

 〈つるつる美白くん〉は私の悲痛な叫びを無視してコロコロと湖に向かって突き進む。

 やがて茂みの中へ〈つるつる美白くん〉は吸い込まれて行き、私もその後を必死で追った。

 薬の入った瓶は一度バウンドすると、私の目の前で宙を舞う。

「止まって!!」

 と叫びながら、瓶に手が触れたその瞬間、

「えっ?」

 と、左の方から何処かで聞いた事のある声が聞こえた。

「ん?」

 と、私が振り返り、湖の前で立ち尽くす誰かの影を確認した瞬間、

 ドッボーーンとど派手な音を立てて瓶と一緒に私は湖へ身を投げ出してしまった。


「お嬢様ー!!」


 と、水面の方からメルの声が聞こえた気がした。


(あ、私、もしかして泳げないかも)


 と、気が付いた時には意識を手放していた。

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