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交渉と対話 6【フィオ編】

 キツネが消えた後、僕は合図を送り、雪狐兵の拘束を解いた。


「兄上、家臣の中で兄上が最も信頼できる人はこの中に居ますか?出来ればエルネスト嫌いな人がいいです」

「それなら目の前にいるコイツだ。毎度の報告も渋っていたしな」

 クイッと顎で目の前に居た兵を指す。

 よくありふれた茶髪で焦げ茶色の瞳の好青年と言った印象がある。

「貴方、名前は?」

「自分は雪狐第1部隊隊長バシリー・エッカートと申します。歳は27で配属年数は12年です」

 成る程。おそらく兄上とは筒井筒の仲と言っていい位長い付き合いなのだろう。

 この人なら問題なさそうだ。


 僕はスッと立ち上がると、バシリーに向かって笑顔で拍手をする。

「おめでとうバシリーさん。あなたが今日から雪狐の騎士団長です」

「っは!……い?」

 唖然とするバシリーを無視して僕はどんどん話を進める。


「あー、もうキツネもいないので雪狐と呼ぶのもおかしいですね。まぁ、名前は追い追い考えるとして、早速お仕事を与えましょう。リン・プ・リエン内にいる雪狐をここに集めなさい。ただし、信用がおける部隊のみです。エルネストの息がかかっている人間がいると貴方がたが足元を救われる事になりますよ?人選は慎重に行うように」


 事態が動き出した今、使える人間はとことん使う。

 雪狐にはここを拠点としてウイニーとの国境付近の警備を担当してもらう。

 外側に向かってではなく内側に向かって。だ。


「必要なら兄上に一筆書いてもらうと良いでしょう。ついでにエルネストにこの場所を教えた人物の特定と処分もやって頂けると助かるんですけどね?まぁ、優先事項は最初に言った通りです」


 ポンポンとバシリーの肩を叩くと、戸惑いながらも「判りました」と返事をした。

「副団長とかまぁ、色んな人選はバシリーさんの動きやすいようにで構わないです。あ、ゲイリーと夢想も置いて行くのでこき使って下さい」

「本当に貴方は人使い荒いですね。そろそろ昇給を要求しましょうか」


 辟易としてゲイリーが溜息を吐き出す。

 しかしその眼は嬉しそうに輝いているのがありありと判った。

 部隊の教育から編成訓練等々、結局部下を育てる事がゲイリーは1番好きなのだ。


「昇給した所で使い道がない癖に何を言ってるんですか。本当に必要ならホルガーに頼んで下さい。さて、兄上は僕と一緒にここを出てもらいますから大人しくついて来て下さいね?外寒いので寒さ対策だけはきっちりお願いしますよ」

「ここを出るって、お前と俺だけでか?一体どこに連れて行く気だ」

「誰が聞いてるか分からないのに、どこに行くかなんてここで言えるわけないでしょう?いいから準備してついて来てください。所々で短距離転移は使いますが、それでも夜になるので死ぬ気で覚悟して下さいね」


 ここに来た時はそれ程でも無かったが、外の雪はかなり激しさを増してきていた。

 日はまだ高いが、直ぐに闇に包まれるだろう。


 兄上が準備をする中、僕も必要な物を屋敷の中から見繕った。

 時折ここを拠点として動く事があったので、大抵のものは揃っている。


 準備を終えると、兄上はバシリーに書状を手渡し「後は任せた」と言って挨拶を交わした。

 それに続くように「ゲイリーも頼みましたよ」と僕も挨拶をすると、バシリーとゲイリーは神妙に頷いて返事を返した。


 念の為、裏口から外へ出る。

 視界が悪くなりつつあったが、朝を待っていては手遅れになってしまうだろう。

 凍てつく寒さに耐えながら、僕は壁向こうに兄上を転送し、続いて自分も転移した。

 屋敷を遠ざかる二つの影は、ただひたすら南西へ向かって移動を続ける事となった。


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