セルレイン達の常識 21
ウィルザイアが、ジューネスティーン達への指導教育は他のメンバー達に頼むような事を言い自分には関係ないような表情をしていたので、それでは無責任だと他のメンバー達は思ったようにセルレインを見た。
その視線を気にするよりも先にセルレインは、リーダーとして今の発言は困ると思ったようにウィルザイアを見た。
「おい、あの子達の魔法を使えるようにするのは、お前の役目だからな。魔法戦における戦略は、お前の担当だぞ! 道徳面とかを俺達に押し付けても、魔法戦の戦略は、お前が中心になって考えるんだからな!」
セルレインがウィルザイアに釘を刺してきたので、周りのメンバー達は、その通りだと言わんばかりに今度はウィルザイアを見た。
その様子に、ウィルザイアは少し気圧されていた。
「わ、分かっているわよ。だけど、魔法を海面に向かってとか、砂漠に向かって放たせろって、どれだけ凄いのよ! 私は、そんな魔法なんて見た事も聞いた事も無いんだからね! 初めての試みなんだから、見た後には全員から意見をもらうから!」
ウィルザイアは、半分不貞腐れたように言った。
その様子には、忘れていたわけではないだろうが、内心では、できれば忘れていたいと思ったようだ。
セルレインは返ってきた言葉と表情を見て、ウィルザイアの不安要素を減らしておかなければならないと思ったようにため息を吐いた。
「おいおい、ギルドだって、俺達が2人の面倒を見る時に、ちゃんと相談に乗ってくれるって言ってたじゃないか。魔法に関しては、きっと、ギルドも専門家を寄越してくると思うから、俺達だけで考えるなんてことはしないさ。でも、方向性を決める時、お前の意見が貴重になると思んだ」
ギルドは、ジューネスティーン達の面倒をセルレイン達のパーティーに丸投げするつもりは無いとエリスリーンから聞いている。
そして、ギルド側の窓口はメイリルダとなる。
メイリルダは、入所4年目なのでギルドの中では末席ではあるが転移者を任せれていた。
末席となる若い職員でもあり、そんな経験の浅いメイリルダでは、セルレイン達メンバーには不安要素が多いと思われていた。
「セルレイン。とりあえず、俺達は、その転移者の2人と会って話をする事が大事なんじゃないか? 今、ここで転移者の2人が1年経って、どれだけ成長したかにもよるだろう、……。不安要素は色々有るだろうけど、まずは2人と会って能力の確認をしてからだろうな」
「ああ、そうだ。始める前から不安要素を並べても仕方がないだろう。案外、いい奴らで素直に聞いてくれるかもしれないぞ」
ストレイライザーとアジュレンが、今の状況について冷静な判断を言葉にしてくれた。
「そうよね。何かを考えるにしても2人と会って話をしてからよね」
「ああ、そうね。魔法も、実際に見たわけじゃないから、私も見てから考える事にするわ」
ストレイライザー達の話にメイノーマが乗ると、それを聞いたウィルザイアは、あっさりと不安そうだった様子から吹っ切れたように話したので、アイカペオラは、ホッとした様子で見ていた。
「そうよ。今は、この前金の中銀貨1枚を喜びましょう」
メンバー達は、破格の前金を貰っていた事を思い出し、場の空気が落ち着いた。
セルレイン達は、破格の依頼料にてジューネスティーン達の教育係としての依頼を引き受けた。
その前金として、中銀貨1枚が一人一人に渡っており、完了後は、その10倍の金額を貰うことになっているので、多少、何かあったとしても、その金額の高さから不安要素も吹き飛んでしまう。
不安な気持ちは有ったが、その前金の額を思い出すように声に出された事でメンバー達の不安は和らいだ。
「そうよね。私達は、ギルドと協力して2人の転移者を冒険者として育てるのだから、困った時はギルドに相談することにすれば良いのよね」
「私達だけで解決する必要はないのだから、困ったら直ぐに相談するようにしましょうね」
アイカペオラとメイノーマが、困った時にはギルドが相談に乗ってくれる事を強調するように言うのでウィルザイアは安心してきた。
「案外、俺達は美味しい依頼を受けたのかもしれないな」
「ああ、問題があったらギルドも相談に乗ってくれるなんて、通常の依頼じゃ考えられないしな」
「そうだ。俺達はギルドと相談して進められるんだ。一般的な依頼なら俺達だけで解決する必要があるが、今回は報酬も高いし、それにギルドの後ろ盾も有るんだ。こんな美味しい依頼は聞いた事が無いぞ」
ウィルザイアを安心させるようにアジュレンもストレイライザーも、そして、セルレインも、それらしい事を言った。
メンバー達は、ウィルザイアを安心させようとした。
「どうだろうか、これからメイリルダに話を聞きに行かないか?」
「ああ、それはいいな。時間も有るのだから、ついでに、その転移者達と会えれば話が早いんじゃないか?」
「ああ、俺もそれがいいと思う」
セルレインの提案に、ストレイライザーが乗ってくると、アジュレンも同意してきた。
その話をメイノーマが嬉しそうに聞いている。
「そうよね。早い方がいいわね。ウィルザイアも、それでいいでしょ」
「えっ! ええ、そうよね」
アイカペオラが、ウィルザイアを誘ってくれたので、セルレインは助かったという表情をした。
本来ならセルレインが誘うべきなのだろうが、同姓で有るアイカペオラが誘ってくれたことによってソフトに誘うことができたと思ったようだ。




