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旅行の目的(地)

うっすら、うすーーーら感じていましたが、やはり旦那様と旅行でしたね。


どこへ行くのでしょうか? そして二人きりなのでしょうか? それとも義父母と一緒なのでしょうか?


う~ん、私的には二人きりは遠慮したいところですねぇ。

私は自分で自分の身の回りのことはできますけど、旦那様のお世話なんてしたことないですから自信ありませんし。あ、弟妹の世話ならできますよ? それと一緒でいいのならいいですけど。 

それに、最近でこそ旦那様と一緒にいる時間が増えてきましたが、14日間なんて未体験ゾーン突入です。そんなに長い時間一緒にいたこともないので、すぐに会話が尽きてしまうと思うんですよね~。

毎度のことですが、ほんとサプライズのお好きな方です。

ワタシ的には、旅行なんて初めてですので、一緒に計画とか立てたりしたら楽しいんだろうなぁと思うんですけど、旦那様は違うのでしょうか? そうすれば行くまでの気分が盛り上がって、よりワクワク感があがるってもんじゃ?

ま、いいですけど。

心に去来するイロイロは、心の中に留めて。私が旦那様のお言葉を待っていると、


「明日一日で準備を整えられますか?」


旦那様が聞いてこられました。


え、と。まず開口一番がそれ? 旅行準備ですかい!


いや待て旦那様。まずはどこに行くのか、何しに行くのか、そう言ったことを教えるのが先じゃね? ……こほん。落ち着こう。いつものことだ。大丈夫、コノヒトの通常営業だ。

「準備はともかく、旅行って、どこに行くのか聞いてもよろしいですか? 私何にも知らされていませんでしたので」

ゆっくりと深呼吸して心を落ち着かせてから、旦那様に聞きました。

「ああ、そうでした! まだ伝えてませんでしたね。旅行先は公爵領です。一番メインの領地に行く予定ですから、気楽にしていて大丈夫ですよ。王都からもそう遠くはありませんし」

うっかり忘れてたよ~的に、旦那様は爽やかに微笑みながら教えてくれました。

「そうですの? わかりました」

ようやく分かった旅行先は、公爵領ですか。とりあえずミステリーツアーにならなくてよかったです。

行先がわかって、ちょっとホッとしていると、

「で、準備はどうですか?」

とまた旦那様が聞いてきました。

私はう~ん、と頭の中で考えます。服と、その他の着替えと、後は何を持っていけばいいのでしょうか? 旅行なんて初めてなんで、荷作りの仕方がわかりません。まあ、そこはダリアたちが教えてくれるでしょう。

それよりも気になるのは仕立ててもらっている服のことで。

「え~と、仕立てていただいている服次第ですわ。今日、たくさんお仕立てしていただきましたから」

だって六着もですよ! そんなの今日一日で仕上がるのでしょうか? ……仕上げてくる気はしますが。うん、これ以上は考えないでおこう。

「ではそれ以外を準備しておけばいいでしょう?」

「まあ、そうですね」


そう言えば私、そもそも旅行用のトランクとか持ってましたっけ?




次の日も、旦那様はお仕事に出かけていかれました。後もう少しで片付くということだそうです。

いつも通りエントランスまでお見送りすれば、

「昼過ぎには帰ってきます。ああ、お昼は待たなくて結構ですよ」

ちらちら、と何か含んだ瞳を寄越す旦那様ですが、

「はい! では遠慮なく先に食べておきますね!」

素直に受け取りニッコリ笑ってお返事したら、しゅんとしてました。旦那様が待たなくていいって言ったくせに。おかしな人ですねぇ。ああ、でもまたメインダイニングでお一人様ランチだから、旦那様をお持ちしている方がいいのかしら?




「着替えは、今仕立てているもので充分ですわね。後は下着と、夜着と……。あ、ミモザ、お飾りの入った箱をとってくれる?」

「はーい。あ、ステラリアさーん、靴はどうします~? 私、どんな服をお仕立てしたのか知りませんから、合うものがわかりませんの」

「そうねぇ。とりあえずヒールの低い、履きやすそうなものを選んでみて」

「了解です!」


衣裳部屋では、ステラリアとミモザが楽しそうに、しかしてきぱきと旅行準備をしてくれています。今日はミモザの調子もいいので、一緒に手伝ってくれています。

旅行準備なんて初めてですので、みんながいなかったらオロオロするしかなかったかもしれませんね! 自分ちの領地に行くことを旅行に含めるのなら経験ないとはいえませんが、なにせ伯爵領うちのりょうち、痩せた土地ですが実は王都からはそんなに離れていませんので、馬車に揺られても半日あれば着いてしまうんですよ。馬を駆れば日帰りできちゃうくらいの距離です(実際お父様はよくやってます)。そして領地むこうに行けば、実家以上にささやかですが、領地むこうの家もあります。ですので荷作りなんてしたことなかったんですよ。

そんなことをつらつらと考えている間にも、どんどん支度はすすんでいきます。

どこからともなく用意された新しい下着や夜着は、一体いつの間に? としか言いようがありません。普段使いのお飾りから、ちょっと豪華なお飾りも、次々と二人の手により選ばれていきます。

行くのは私なんですが、衣裳関係こういうことに関してはちっとも口を挟む余地がありません。つか、挟ませてくれません。ミモザは前からですが、ステラリア、おまえもか!

心配していた旅行用のトランクですが、これまたいつの間にかしれっと用意されていました。かわいらしいオールドローズカラーの革張りのトランクです。

そこに、クローゼットから引っ張り出されたアレコレが、どんどん詰め込まれてゆきます。


「旅行には、ステラリアと、旦那様付きのローザが一緒に参ります。身の回りのお世話はこの二人がいたしますので、何かあればどちらでもかまいませんからお申し付けください」


ステラリアとミモザの荷造りを見ながら、ダリアが言いました。

よかった! 侍女さんが付いてきてくれるのですね! これで二人きりは回避できました。

旅行と聞いて最初に懸念したことが払拭されたので、私はにんまり笑顔になりました。

「ステラリアがついてきてくれるのね! わかったわ。さすがにミモザは連れて行けないものね~。そんなことしたら私がベリスにられてしまうわ……」

最後はボソッとつぶやいたので、近くに居るダリアにしか聞こえなかったようですが。当のダリアは微笑んで同意しています。うん、その微笑みの同意が怖いわ。

「うう、奥様~! 私もついて行きとうございました~」

ダリアの説明を聞いたミモザが、その大きなヘーゼルの瞳を潤ませてこちらを見てきますが、私も命は惜しいのです! ……って、違うか!

「私もミモザと一緒に行きたかったわ。でも今回は我慢してね? 私たちが留守の間は、ゆっくりしているといいわ。そうだ、庭園に入り浸りでもよくってよ!」

私はそう言ってミモザをなだめました。

主がいない間くらい、使用人さんたちだってのびのびとしてもらっていいと思うんですよね。お屋敷にはいますが、休暇な感じ? 開店休業? ま、そんな感じでゆる~く過ごしていてもいいと思うんです。

するとダリアが。

「ああ、奥様。まだ申し上げておりませんでしたが、先代様ご夫婦がお屋敷(こちら)に滞在されております」

「え? お義父様たちはこちらにいらっしゃるの? 一緒に旅行に行くんじゃなくて?」

義父母も一緒に領地に帰るものだと思っていたのですが。

「はい。旦那様と奥様の旅行の間の留守番を買って出られたのですわ」

「あら、そうなの」


「実は今回のご旅行に、ロータスも一緒に参りますので」


もう一人の旅行同伴者を発表したダリアです。

「え?! ロータスも?」

その意外さに目を丸くする私。

だって、ロータスは執事ですよ? お屋敷の要のロータスが、私たちと一緒に14日間もお屋敷を空けていいのでしょうか? フィサリス公爵家は、ロータスで機能しているといっても過言ではないのですよ! そのロータスが14日も……以下略。

そりゃ驚きますって。

私の反応がおかしいのか、クスクス笑うダリアです。


「そうでございます。今回の旅行は、公爵家のご領地めぐりです。大半は一番大きなご領地での滞在になりますが、飛び地的にあるご領地も回る予定です。旦那様は奥様に、直接公爵領を見てもらいたいと思っておられるようですわ。そしてご自分の勉強も兼ねて、ロータスを先生役に連れて行くそうでございます」


ダリアの口からですが、ようやく今回の旅行の趣旨がわかりました。机上の空論……ではなく、机上の退屈な講義おはなし……ではなく、生きた勉強をしろということですね! 私にはその方が向いていると思います。

だからロータスなんですね! オッケー、了解しました!!

しかし、大事なロータスを連れて行くというのにはやはりためらいがありまして。そりゃあ、有能万能な使用人さんたちばかりですけど、指揮者がいないとその力は存分に発揮できないのでは? と、ね。

「ロータスがいないと、大変じゃない?」

ロータスの仕事は多岐にわたりますからねぇ。事務面・金銭面、きっと他にもいろいろあるんですよ。私があずかり知らないだけで。

「食材の調達などはカルタムだけでも大丈夫ですし、それ以外のことは私だけでもなんとかなりますわ。それに不測の事態があった時のために、大旦那様がいらっしゃるのでして」

私の不安を払拭するかのように、ダリアが微笑んで頷きました。

そうですよね! ダリアがいれば心強いですよね! ベテランだし、ロータスに次いでこのお屋敷のことをよく把握してくれていますもの。

義父母にお留守番をさせることには、ちょっと気が引けますが。この際目をつぶりましょう。

「そう? なら安心ね!」

ダリアだけではありません。カルタムだってベリスだっていますもんね! そうだわ。

私が一人納得していると、

「ただ……」

それまで淀みなく話していたダリアが詰まりました。

「ただ?」

なんでしょう?

「大旦那様が『よし! ではロータスがいない間、私が執事代行を務めよう!!』とかおっしゃって、張り切っておられまして……」

そう言って苦笑するダリアです。

ええ、とっても簡単に、すっごく張り切っておられるお義父様が目に浮かびましたよ。

「あ~。ま、まあ、張り切っておられるならおまかせしたらいいんじゃない? お義父様ならこのお屋敷のこと、ロータスといい勝負できるくらいばっちり把握してらっしゃるし!」


お義父様のことだから、銀縁メガネと黒の燕尾服(※ロータスの標準装備)も用意して、ノリノリでロータスのコスプレとかしそうですね! 


今日もありがとうございました(*^-^*)


今日(3/14)の活動報告に小話を載せる予定です♪ お時間よろしければそちらも覗いてやってくださいませ!

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