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交渉中!

『同居生活する』『お飾りの奥様事項撤廃』『旦那様以外との恋愛禁止』――これらが旦那様から示された契約更改内容ですが、これって更改という範疇を超えて、もはや白紙撤廃からの新規契約に等しいと思うのは私だけでしょうか? ……まあ、どちらでもいいですけど。こちらとしてはやはり一番の懸念でありました実家の借金問題が『結納金』という形で解決されましたから何の問題もないのですが。

その上で旦那様は、

「社交なども、必要な範囲でいいのでお付き合いをお願いしますね」

もう一つ追加してきました。これは以前の私のオプション発言に対する布石ですね!

ちっ、オプション事項もしっかり盛り込んできたか! っと……すみません、動揺しました。

「わかりました」

動揺を押し殺し、なるべく平静に答えます。旦那様は私の動揺など気付かずにいるようで、私の答えに満足したように頷きました。

「僕からは今のところ以上ですね。何かあればその都度ということで」

「そうですね」

諦観の念で私がこくりと頷くと、

「貴女からは何かありませんか」

意外にも旦那様は私の意見を聞いてきました。


「私からの条件ですか?」

そんなもの聞いてもらえるなどと思ってもみなかったので、キョトンと小首を傾げていると、

「そうです。僕からの条件ばかりでは貴女に不平等でしょう? 本当はこんな取り決めなどなしに、普通の夫婦のようにヴィオラが僕の傍にいてくれるのが一番いいんですけどね」

微苦笑しながら旦那様がのたまいました。何気にあま~いセリフをかませてきましたが、 そんなもん、スルーですがな。

「……それなら、お食事のことなのですが」

私からの条件? お願い? といったらアレしかありませんよね。これから旦那様と毎日一緒に暮らすということは食生活も共にするということですよ。主にこっちの方向がつらい私は、少し考えてから口を開きました。

私の華麗なるスルーっぷりに旦那様の肩が落ちましたが、それも見ない方向で進めます。

いきなり食事のことを口にした私に、今度は旦那様がキョトンとなさいました。

「食事、ですか? 何か御不満な点でもありましたか?」

クイッと眉が上がります。ヤバいです。またカルタムにあらぬ疑いがかかってしまいます!

「いえいえいえいえ!! 不満などと滅相もございません! むしろ贅沢すぎて困っているくらいですのに、ってあわわ」

旦那様の勘違いに慌てて否定したもんですから、思わず口が滑ってしまいました。

「贅沢すぎる?」

そんな私の失言に、また怪訝な顔をして眉を顰める旦那様。

「いえ、あの、その、十分すぎるくらいに満足しておりますが、私には多すぎるのです。特に朝食! あれはいくらなんでも多すぎますし、もったいなすぎます」

「朝食ですか?」

「はい。何人分の食事ですかっていう量です。あれはどう考えても私には無理ですし、また倒れてしまいます」

夜はいいんです。朝・昼と食べてきて、胃もちゃんと活動をしてきているので、ハーフポーションくらいなら何とか闘えます。朝ですよ、問題は。量といい質といい起き抜けの寝ぼけた腸内SPたちにあの朝食は、まるで丸腰たちがダイナマイト相手に闘うようなものなのです。その生活に慣れる前に私は衰弱してしまうでしょう!

「それはいけないな! ヴィオラは小食なんだね」

私の『倒れてしまう』の言葉に過剰反応する旦那様です。グッと身を乗り出してきました。つか、旦那様。小食っていうよりは粗食なんですが……。ま、敢えて明言はしません。

「ですので、私の分だけでも量を控えさせていただきます。……旦那様も、毎日あれだけの量を全て食べられているのですか?」

「いや、うん、まあ、全部は食べていない」

それまではひたと私を見ていたくせに不意に視線を逸らせ、歯切れ悪く言う旦那様です。

「お義父様たちの前では普通の、パンとスープとメインディッシュとサラダくらいでしたよね?」

「ええ。両親のいる場合はいつも同じ、決まったメニューですからね。いつも合わせています」

「じゃあ、毎日好みが変わるっていうような、そんなもったいないことをしているともったいないオバケに祟られてしまいますよ!」

しかも全部食べてないなんて、あ り え ん !

「はあ……?」

私のいきなりの『もったいないオバケ』論にびっくりなさる旦那様。どうやらこの反応はもったいないオバケを知らないようですね! ええ、ええ、懇切丁寧に教えて差し上げますとも!

「そもそも勿体ないオバケというのはですね、粗末にされた食べ物の怨霊で、夜な夜な枕元に立って『もったいない……もったいない……』って……(以下省略)。とにかく、もったいないことをしてはいけないのです!!」

「……はい」

私の『もったいないオバケ』の話に少々引き気味の旦那様ですが気にしません。

「わかっていただけましたか。では今後どうされますか?」

「そうですね。……この際貴女に合わせましょう。倒れられても心配で居ても立ってもいられなくなります。勿体ないオバケ云々はおいといて」

旦那様は顎に拳を当て、考えながら答えてくれました。お化けの話は残念ながら真に受けてはもらえませんでした。悔しいです! しかし贅沢な食事はやめてもらえるようです。

「ありがとうございます。では遠慮なくカルタムにそう伝えておきますね」

これでひとまず私の腸内テロは安泰です。

「わかりました。他には?」

「他には……今のところ特にありません。これもまた問題があればその都度相談させていただきます」

「わかりました」


ということで、今回の契約更改は無事(?)終了しました。




晩餐は私と旦那様は一緒に取りましたが、

「今宵は彼女さんとの別れを惜しんでください♪」

と、夜は丁重に別棟に送り出しました。


カレンデュラ様。このような出会いでなければ意外と仲良くなれたかもしれませんね。ロージアに来ることがあれば連絡くださいと伝えておかねばなりませんね!



今日もありがとうございました(*^-^*)

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