みんなで準備中!
初めてお伺いさせていただいたパウロニア家でのお茶会。意外なルートでのお悩み相談会になりましたが、とっても楽しませていただきました。まさかあそことあそこがそう繋がってたなんて……とにかくこれは旦那様に一言物申さないといけませんよね!(いい方向で)
「サーシス様!」
「ん〜? なにかな? 今日のお出かけの報告? 楽しかった?」
「はい! とっても楽しかったです——じゃなくて」
「おや? 楽しめなかったのかい?」
「いやいや、楽しかったですってば。それよりも、今日のお茶会、いろいろありがとうございました」
「なんのことかな〜?」
白々しくすっとぼける旦那様。すっかりバレバレなのにね。ふふっ。ま、いいけど。
「侯爵夫人やお嬢様方とたくさんお話しして、悩みが晴れました」
「それはよかった」
「ありがとうございました」
「ヴィーは何を言ってるのかな? 僕ハホントニ何モシテナイノニ〜」
もう! 棒読みですよ!!
「私の悩み事なんて、ほんと、自分で自分を追い込んでるだけなんだと自覚させられたお茶会でした」
「そっか」
お義父様にお義母様、お友達、はては知らない(失礼!)方にまで勇気付けてもらえる私は、なんて幸せなんでしょうか。
「これからはドーンと構えていこうと思います」
「そうそう、その意気だ」
なんて話しているところに。
「んしょ、んしょ」
コロコロコロコロ……自分の体よりも大きな乳母車を押したバイオレットが現れました。って、はあああ? 乳母車ぁ!?
「レティ? 何をしてるの?」
「それ、どこから出してきたの!?」
ちょっといきなりすぎて理解できない。唐突なバイオレットの登場に、旦那様と私がポカンとしていると、
「あかちゃんとおさんぽするれんしゅうでしゅ」
かわいいドヤ顔になるバイオレット。
「すみませ〜ん。お手入れしようとレティ様の乳母車を出してきたところを、どうしても押したいとおっしゃられるので——」
付いていたミモザが説明してくれました。なるほど、その乳母車はバイオレットが赤ちゃんの時に使っていたもので、乳母車を卒業してから、ずっと仕舞われたままになっていたもの。それを次の子の準備にと出してきたところを、バイオレットが奪取した、と。ふむふむ。でも、あまりに大きさが不釣り合いすぎて、もう、なんか、微笑ましすぎるでしょー!! 悶え死んじゃう〜! ……はっ! 取り乱してしまいました。突然のバカ親発揮、失礼いたしました。
「そっかそっか、レティはお姉ちゃんになる練習してたんだね」
「はい!」
もちろん旦那様もデレッデレです。満面の笑みでバイオレットの頭をくしゃっと撫でています。
「でもちょっとレティには大きいかな。それは赤ちゃんのためにおいといて、レティには可愛らしいサイズのものを作ってもらおうか」
「べりしゅに?」
「そう。お父様からお願いしておこう」
「わぁい!」
自分専用の乳母車を作ってもらえると知って、バイオレットは飛び跳ねています。
「そういうことだ。ミモザ、ベリスに伝えておいてくれないか?」
「かしこまりました」
「いつできるかな? あした? それでね、いっぱいれんしゅうします!」
「あ、明日はさすがに無理じゃないかな? お〜い、レティ〜?」
「はやくあかちゃんこないかなぁ。レティのくるまにのせて、おさんぽしたいでしゅ」
ウキウキして飛び跳ねるバイオレット。気持ちはわかるけど、小さな乳母車に赤ちゃんは乗らないと思う。
無事ネガティブも脱出したので、それからは心穏やかにその日を迎える準備に取り組めました。
新しく産まれてくる赤ちゃんのために、まずはお部屋から準備です。使ってない部屋はふんだんにありますから、選びほーだーい! ……ですが、お世話とか諸々のことがありますので、私たちの寝室近くにします。今はバイオレットの部屋が隣にあるんだけど、できれば変えたいなぁなんて思うんですよ。静かな環境で生活させてあげたいかなって。ここはベテランママさんでもあるダリアに相談してみましょう。
「レティの部屋を移動させた方がいいかなぁって思ってるんだけど……どうかな? ほら、夜中に赤ちゃんが泣いた時に起こされたらかわいそうだから」
「——確かに、そうでございますね」
ダリアは少し考えたあと、賛成してくれました。
「ただ——」
「ただ?」
「今のお部屋をお気に召しているレティ様が〝うん〟と言ってくださるかどうかが鍵でございます」
「あ〜。ナルホド」
ダリアの言う通り、今のバイオレットの部屋は、生まれてからずっとそこだということもあるし、なによりお気に入りのものたちで埋め尽くされているからなぁ。それらを引っ越すのは当然として、さらなる〝魅力的な何か〟を提示しなくちゃダメでしょうね。
「もっと広い部屋で、なおかつ、バイオレットの好きな色でお部屋を飾ってあげるとかでお願いしてみるの、どう思う?」
「それはよろしゅうございますね。うんとレティ様好みのお部屋にして差し上げてくださいませ」
「もちろんよ! そうと決まれば早速レティに聞いてみなくちゃ」
ネゴシエーター・ヴィーちゃん、腕の見せ所です!
「レティ〜!」
自分の部屋にいるバイオレットは、お気に入りのおままごとセットでデイジーとお茶会を開いていました。ままごとと侮るなかれ、お菓子はカルタム特製の本物で、ミモザにマナーを教えてもらいながら二人でお茶を嗜んでいます。遊びの中にもさりげなくレッスン取り入れてるなんて、すごいな公爵家! ……というのはいつものことなのでおいといて。
「お茶会の途中、ごめんあそばせ! ねえ、レティのお部屋をもっと広くて可愛いお部屋にお引っ越ししたいんだけど、どうかしら?」
「かわいいおへや?」
「そう」
「レティのおもちゃは?」
「もちろん一緒にお引っ越しよ」
「う〜ん……いいでしゅよ」
少し考えた後、バイオレットはあっさりオッケーしてくれました。広いお部屋、好きな色の家具調度、もちろん喜んではくれましたが、どうしても一つだけ譲ってくれませんでした。
「あかちゃんのおとなりがいいでしゅ」
「え? おとなり?」
「はい!」
元気よく答えてくれてるけど、そもそも赤ちゃんが泣いた時対策での引っ越し提案なんだけどなあ。
「えーと、赤ちゃんは夜中に泣いちゃうから、レティの目を覚ましちゃうかもしれませんよ?」
「あかちゃんのおせわをしなくちゃいけないから、いいんでしゅ!」
「なるほど」
その意気込み、嫌いじゃない。
では早速、頼もしいお姉ちゃまのお部屋も準備に取り掛からねば。やることはまだまだありますよ。
「バイオレット専用の乳母車……は、ベリスにお願いしたからすぐに作ってくれると思うのね。それまでは離してくれないと思うから、お掃除と微調整は後回しにするとして——」
なんて言ってるうちに、おもちゃの乳母車が完成しました。お願いしたのは数日前だというのに、なんてスピード。もちろんデイジーとお揃いです。
「きゃー! かわいい〜! さっすがベリス!」
バイオレットに渡さないといけないっていうのに、私がはしゃいでしまいました。だって見事にバイオレットの乳母車のミニチュア版なんですもの。あ〜私が子供の頃にこういうの欲しかった〜……あっ、失礼、取り乱しました。細部もしっかり作り込まれていて、本当の赤ちゃんを乗せても大丈夫そう。
「レティのくるま〜!」
「デイジーの〜」
二人でキャッキャしながら、いろんなものを載せています。ぬいぐるみとか、自分の宝物とか。おっと、バイオレットがいつものクマ乗せてる……。それ木彫りだからやめておこうか?
「レティ、他のお人形さんとかぬいぐるみさんを乗せたら?」
「これがいいでしゅ」
「だってそれは重たいよ?」
「いいんでしゅ!」
「じゃあ、お母様がクマさんのぬいぐるみを作ってあげるから。ね?」
「ほんとでしゅか!?」
「ほんとほんと」
「これと同じのちゅくってくだしゃいね!」
「これと同じ!?」
「はい!」
「え……あ……うん、お母様、頑張るわ」
今日もありがとうございました(*^ー^*)




