第5話 新しい繫がり
「ああ~~~!! 負けちゃったかあ~~」
VRグラスに浮かび上がったYou Lose! の文字を見て、モフリンは天を仰いだ。
「申し訳ありませんモフリン様………」
リザルトが終了しスマホに戻ってきたナギが消沈した様子で頭を下げる。
「ううん、気にしなくていいよ。今回は向こうが上えええ~~~~~?!」
ナギを慰めようとしたモフリンの声が甲高く伸びた。
それもそのはず、ナギのイケメンフェイスには青たんができ、間の抜けた巨大なたんこぶまで頭に作っていたのだ。
今回が初めてではなかったが、何度見ても衝撃の映像である。
ナギも自分のありさまが分かっているようで「くっ! 無念………」とがっくりと膝をつく。
「ああ! ごめんごめん! 久しぶりだからびっくりしちゃってさあ! 大丈夫大丈夫そんなの8時間たてば治るんだから」
「8時間もこの醜態をモフリン様に見せることになるとは………」
ずーんとナギの背後に書き文字が見えるようだ。
「あれ? さらに落ち込んじゃった?!」
モフリンは慌てるがもはや後の祭りである。
一方。
「はっはっは! やっぱりあたしが勝ったわね!」
ハルは絶好調である。
近未来風プロテクターを着けた胸をこれでもかというほど張り、ふんぞり返っている。
なんだったらこのままイナバウアーをかましそうなふんぞり返り具合であった。
そんなハルに苦笑しつつ新は彼女をほめてやる。
「ああ、今回はマジでよかったと思うぞ。動きキレキレだったし」
「でしょ?!」
ハルは興奮した様子で顔を紅潮させている。
ここでも表情モーション追加の効果が見られた。
前よりずっと表情豊かで、ハルは生き生きして見える。
「ARATAさんとハルちゃん強いっすねえ~」
勝利の喜びに浸る二人にモフリンが声をかけてくる。
「いや、最初のスライディングが上手く入ったからだよ。最初そっちから攻められてたらどうなってたか分からないよ」
「どうなっててもあたしが勝ったけどね!!」
「………ハルちょっと黙ってようか」
「なんでよおお~~」
ハルの不満を無視してひとまずSOHを終了しスマホをしまう。
傷に塩を塗り込むような真似はやめたまえ。
「うはは! ハルちゃんと新さん面白いね! 良いコンビだよ!」
モフリンは気を悪くした風もなくそんなことを言ってくる。
「そうかあ~?」
新は顔をしかめて語尾上がり。
「あはは! 良いコンビだって! なんか言いたいことをちゃんと言い合ってる感じがする」
「まあ本契約するまでいろいろあったしな。そっちこそ仲良さそうに見えるよ?」
「それはもう! ねえナギ?」
「もったいなきお言葉ですモフリン様」
「あはは! 固いよナギ~」
モフリンは笑いながらツンツンとスマホの画面を突いている。
ほんとにコンビ関係は良好なようだ。
「よし!」
公園に突然SAIの声が響いた。
見れば金髪グラサンの青年はスマホを手に持ち、もう片方の手でガッツポーズをしている。
どうやらアイカとのフルバトルに勝利したようだ。
アイカは変わらぬクールフェイスだったが口をへの字にしていた。悔しいらしい。
「ありゃ。SAIさんも勝ったんですか。じゃあ負けたの私だけじゃないですか~」
SNSなら語尾に(涙)とでもついていそうな表情でアルパカが嘆く。
モフリンの友人ミナミははにかんだ顔でモフリンにVサインをして見せていた。
モフリンは二カッと笑ってVサインを返している。
そんなやり取りをしながら、ぞろぞろとバトルを終えた面々が新とモフリンのところに集まってきた。
「今日のところは2対1でARATAさんチームの勝ちだね! おめでとうございます!」
モフリンがパチパチと手を叩きながら祝福してくる。
「お、おう。ありがとうございます。というかARATAチームでも無いし、チームの勝率を競ってもいなかったと思うんだが………」
「勝利したARATAチームには可愛いJK三人のSOHアドレスを贈呈します! いつでも連絡してね!」
「それ対戦したら普通に繋がるやつだろ。おおげさなやつめ」
「そんなこと言って嬉しいくせに~!」
モフリンがウリウリと新の脇のあたりを肘でつついてくる。
馴れ馴れしいやつであった。
しかしそれが嫌悪感につながらない。
むしろ新は苦笑しながらも彼女に好感を持っていた。
見ればアルパカや、SAIですらも苦笑気味ではあるが笑顔を受かべている。
それはやはり彼女の明るい性格とあけすけな態度がもたらすものだろう。
「おっと! そろそろモフリン帰らないと! 今日は夕ご飯手伝う日なんだよね」
スマホの時刻を見ていたモフリンがいかんいかんと帰り支度を始める。
「あ、じゃあ私も帰ります」
「私も」
アイカとミナミもそれに同道することにしたようで、三人はそろって頭を下げた。
「今日はありがとう! また今度遊ぼうね!」
代表してモフリンが新の手を握りぶんぶんと振り回してからさっと後腐れなく背を向けて駆けていく。
「わっ! ちょっと待ってモフリン!」
「ヤバイ。足早い」
ミナミとアイカもあわてて後をついていった。
「「「………………」」」
三人がいなくなると途端に緑風公園は静かになった。
「………なんていうか嵐みたいだったな」
「そうだな。ふう………、疲れた」
人と話すのが苦手なSAIは疲労困憊といった様子だ。
「でも良い子たちでしたね! 新しい指導者の皆さんと繋がれて良かったです」
アルパカはほくほく顔だ。
それもそのはずSOHは人とのつながりが強さに直接関わるゲームなのだ。
それにあの三人とまた一緒にゲームできること自体が新には嬉しいことだった。
「また対戦するのが楽しみだ」
新しいイベント、新しい対戦相手。
新のSOHはこれからますます楽しくなりそうだった。
繋がりっていいですよね(〃'∇'〃)
というわけで今回は戦闘後のあれこれやゲーム仲間が増えるお話でした
私自身は結構一人遊びが好きなタイプで天性のボッチ気質なんですが、ツイッターなどで他のなろう作家さんや、絵描きさんとお話することはとても楽しいです
やっぱり趣味が同じだからですかね
こういうお話を書く時はそんなことを思い出しながら書いています
新たちもこれが良き繫がりになると良いですねd(*^v^*)b




