4‐15
「今、いろいろあってな。ヴィアといろいろやろうかって話が持ち上がってそれについて詰めてる状態で」
「……文化的と攻撃的を合わせるんですか?」
「ゆくゆくは。五島が極秘裏にクロートーの求人をとっていたらしくてな、隊員の補充に関しては考えなくてよさそうなんだ」
「極秘裏に求人?」
「本当は、隊員が私的な隊を持つのは禁止して、それも、謀反にも等しいぐらいの位置づけにしているんだが、状況が状況だし、五島のやったことだからな。咎められもしない。後は東のバカ連中を押さえられればいろいろ動き出すことができる」
「つまり、内乱で足止めを食らってる状態ですね?」
「そうなんだ。奴らに関しては俺らも負い目があるからと思って放置していたのが悪かった。しわ寄せがお前に来るかもしれない」
「……その時はその時で弟だって言いますよ。ああいう血統厨にも似たような頑固どもには一番効くでしょ」
「まあな。最後の切り札にするんだぞ」
「ええ」
うなずいた勇介は部屋に入ってベッドが二つあることに気付いて首を傾げた。
「ああそれ俺が使うの。部屋数少ないから相部屋が基本になったんだ。そっち使いな」
そういってベッドに腰掛けたユイにならって腰掛けると下に硬い感触。
「……」
思わずジト目を送るとユイはいつものように笑った。
「いいだろ? どうせ暇だし。俺も前みたいに本部に入り浸ることはできなくなりそうだから実質お前一人部屋になる」
「え?」
「南に部隊を持っているわけだ。動き出すことを考えて起動していかなければならない。東の仮配属が終わったらお前は俺の真下についてもらうからな。覚悟しとけ」
その言葉に空恐ろしいものを感じながらも勇介は小さく笑って頷いた。
「まあ、これの世話になることはないと思いますけど」
「ぜってえ無理だろ。つか、それって大丈夫か? 不能とか言うなよ?」
「さすがにそんなんじゃないですよ。健全です」
「DTでもないんだろ?」
「幼馴染に付き合って。どうせ一生DTだろうからとお恵みをもらった形ですけど」
「うわ……」
となぜかユイに自分の性経験を詳しく語る羽目になったがユイは楽しそうにそれを聞いていた。
「お前ぐらいの時一番病んでたけどやることはやってたぞ? 俺は」
「なんで、かなぁ? 自分でも不思議なんですよね。アタエさんに飯食ってるからじゃねえかって言われたんですけど……」
「飯?」
「性欲と食欲が表裏一体で、俺は食欲で満たされてるんじゃないかってヨウさんがくわしくいってくれましたけど」
「ほう? ああ、確かに、飯は食ってなかったな」
「というか、そんなに俺似てるんですか? ユイさんの当時に」
みんなから言われるんだけどとつぶやくとユイは苦笑して肩をすくめた。
「俺より危ない顔はしてないんだがな。オヤジ連中が言うんだろ? あぶなかっしいっていうんだろうか?」
「危なっかしい?」
「ああ。……俺も、それは思っているが。なんかさ、お前、何かやりそうで」
「なにかって何ですか?」
「あー、いや、友人殺し、とか親殺しとか? 恋人はいないんだろ?」
「そりゃ、この性活見てもらえばわかると思いますけど?」
「だったら俺よりひどいことにはならないだろうけど。な。……そういや、あの逃走劇に交戦した陸軍少佐、友人だったらしいな?」
その言葉にピクリと顔をひきつらせた勇介にユイはわざとらしくため息をついた。
「そういうのがあぶなかっしいっていうんだ。前も言っただろ? やったら後悔して動けなくなるから控えろって。一命はとりとめて、腕もくっつけてもらったらしい。だが、本職に復帰できるかわからん。そう報告が上がった」
「……それが妥当ですね」
「それで戦わずに済む、と思ったら大間違いだぞ。恨まれる可能性も考えろ。バカ。やりすぎだ」
「……」
説教するような口調のユイに思わず苦笑いを返した勇介は鼻の頭を掻いた。
「意識してなかったんだろうが、その意識しないでそこまでやることがあぶなかっしいんだ。セーブができてないんだろ? 要は」
「……そういうことになりますね。あの時も頭ほとんど真っ白で……」
そういえばそういうことが多い、と思い返してみる。このレジスタンスに入るきっかけになったあの出来事も、今回のことも、さっきのミヤビを襲おうとした連中を蹴散らした時も。
「そう、ですね」
「ちょっとは自覚しろよ。一隊の長になるんだからな。まあ、東の連中だから切り捨てても構わないが」
「そんなこと言ったらやりますよ?」
「別にいいよ。使えねえ連中の集まりをお前のおもちゃによこすって五島が言ったんだから。それでお前がどれだけ動けて、奴らが使えないか。それを見ようっていうことなんだからな」
「……」
その言葉に複雑そうな顔をした勇介はため息をついて肩をすくめた。
「まあ、最善を尽くします」
「それでいい。参考までに教えておくが、俺が一隊をもらって一番やばかったときは、敵味方見境なくやりかけたから気をつけろよ」
「……」
ふとレイが後ろに立った時を思い出して目を線にした勇介に、ユイはため息をついた。そして、仕上げと言わんばかりにポンと頭に手をやったユイは、じゃ、と言い残して部屋を出ていった。




