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英雄カメラマンのホロサイト  作者: 霜月美由梨
3章:思い偲ぶより思い出して笑って
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3-7

「よし、よくやった新人」

 銃を向けられたがミヤビを見てすぐに降ろされてそういわれた。

 正面に立っているのは五島とあまり年の変わらないだろう、バンダナを頭を巻いた男だった。

「五島さんの?」

「ああ。あのおっさんの下についているものだ。雅美ちゃんも大きくなってな? 今はチーフだっけか?」

「ええ。チイおじさん久しぶりね」

「よくここまで来た。五島にどやされていたあの頃が懐かしいぐらいだな」

 そういって笑っているチイとミヤビに、勇介はふっと肩の力を抜いていらない装備をしまっていく。

「オレはこのままここであなたたちと?」

「ああ。……大丈夫か? 訓練所じゃ見ない顔だったが」

「……それは、見て判断してください」

 まっすぐ見て男を見ると、面白い奴だな、とつぶやいて勇介の肩を叩いた。

「一人で遊撃に行って小隊潰して、よく見て判断してくださいっていうよ?」

 ミヤビの突っ込みに、勇介は顔をひきつらせてミヤビを見た。

「ミヤビさん……」

「ほんとのことじゃない?」

「マジか? なんだ、すごいんじゃん。じゃ、ユイの直属になる可能性が高いな」

「ええ。あたしの方もそれで調整しているわ。ユイとは仲がいいからね」

「ほう? あの一癖も二癖もあるような奴とか?」

「今回の新人にはかなり目をかけて育ててる。珍しいこともあったわよね」

 待機している車に歩いて移動してそんなことを話している。

 手短な人に話しかけようと目を合わせると親しげに首を傾げてくれた。

「ユイさんて、あんまり新人に寄り付かないんですか?」

「ああ、奴はな。つかず離れずってところだ。積極的にかかわろうとはしないよな。あいつ。気楽そうに見えて結構病んでるやつだから」

「え?」

「まあ、詳しいことは知らないがな。……イサムが死んでから結構落ち込んでたからな、そのせいかもしれない」

「イサムさんの?」

「ああ。お前、イサムの後に入ってきた奴の第一号だからな。それなりに上も神経質になっているんだろうな」

 だからミヤビとアタエ、五島、ユイの体制でお前を見ているんだろう、とつぶやいた彼に勇介は静かに納得した。

「確かに、ほかの隊員の方とあまりしゃべる機会がないっていうか、ちょっと精神的にやばくなったらすぐに五島さんの所に送られましたけど……」

「カフェでこき使われたんだろ」

「ええ」

 うなずいて勇介は、ふと、ミヤビの頭にちかちかと何かが当たっているのに気が付いた。

「……ユウ?」

 その可能性に思いつくのと五島の怒鳴り声がイヤホンから聞こえたのが同時だった。そして、迷わずに体は動いていた。

『敵襲!』

「ミヤビ!」

 とっさにミヤビにとびかかってほとんど押し倒すのと同じようにして倒して全員がミヤビを守るように陣形を組む。

「よくやった新人」

「何よ?」

「頭狙われていました。後ろから。あなたの顔がばれているということは……」

「ヨシが一緒にいるか」

 誰かが静かに呟いた瞬間、緊張が一気に走った。

「ミヤビさん、行きますよ?」

「ああ、そうしろ、お前と数人、ミヤビの護衛に」

「了解」

 ミヤビを起こして走って車に移動する。

「ミヤビは奥、新人とミツは表で迎撃。装備整えろ」

「了解」

 小気味良い応酬で勇介は装備を整え荷台の後ろの、入り口付近に張る。

「行くぞ」

 車が動き出して、勇介はアサルトライフルを構えはじめる。すぐに国軍の車が来る。

「車は二つある?」

「隠してある。何かあれば五島がなにか走らせるだろ」

「つーか、姐さんは奥でおとなしくしていてくださいよ?」

 フルオート射撃を見舞いながら勇介の向かいにいる男がいう。

「けっこうしぶといですね」

 ちらりと追っ手の運転手を見て勇介は舌打ちして、ふとボルトアクションのライフルがあることに気付いてにやりと笑った。

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