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英雄カメラマンのホロサイト  作者: 霜月美由梨
3章:思い偲ぶより思い出して笑って
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3-3

 ノイズが流れ始めた無線機を一時待機状態にして、勇介はミヤビを振り返る。

「ユイさんが言っていた地下道の地図ってありますか?」

「え? と、……これかな? ずいぶん昔の設計図だけど。……そうね、多分これ、初期の設計図だわ。三十年ぐらい前のだもん」

「……このレジスタンスはどれぐらいの歴史が?」

 茶色く焼けた紙を慎重に広げながら勇介はざっと紙を見る。

 本部の建物の図面が描かれている紙の下にトレースペーパーに写し取ったままの図面が書いてある。

「これですね。まるで迷路ですね。……地図ありますか?」

「地図? って、ユイここ使う気満々だったのね」

 あきれながらすぐに見つけ出したミヤビに勇介は笑った。

「ミヤビさんが知らないならほかの人はあんまり知らないのかもしれませんね」

「そうね。……でもヨシが」

「そういえばヨシさんはどうしたんですか? 指揮権がミヤビさんに移ったってことは……?」

「いや、そうじゃない」

 ミヤビの声音が落ちた。地図を持つ手が震えはじめる。

 その変化に首を傾げて勇介は静かに見つめる。

「……これは、だれにも秘密にしていて」

「……はい」

 うなずいて勇介は表情を引き締める。ミヤビはそっとため息をついて目を閉じた。

「今回の襲撃にて発覚した裏切り者はヨシなのよ。あれが寝返ったから本部の位置が特定されて、人員が薄くなった時を狙われたのよ。ユイが外に出て。でも、ユイは一応諜報犯の主任だから、怪しいとは思っていたのよね。だからあんな感じの設置して……」

「時間稼ぎにはなったかって言ってましたね。実際そうだったのでは?」

「そうね。だから撤退準備がスムーズに行われているのか。でも……」

「あとでにしましょう。とりあえず、地図と照らし合わせてどれぐらいで出られるか、前もって五島さんに……」

「ユイが知ってるってことは五島の頭にはこの図面そのまんまが入っているはずよ。あの人図面とか一発で覚える人だから。これの縮尺が書いてないからあれだけど、多分、これは……250スケールかしら?」

「建物ですからね。ユイさんのことだから重なるような地図持ってきてるんでしょうね。本部の位置はどこです?」

 ミヤビが地図を広げて図面を重ねる。ちょうど出口に何かしらの建物が立っていた。

「出口はよっつ。行き止まりが多数。……回収に手間がかかるが見つかりにくい山中にしましょうか。山中なら遊撃も簡単だ」

 ミヤビがやっていたように秘匿回線を開いて五島を呼び出す。

「よくわかったわね」

「ミヤビさんがやってましたから」

 笑って図面をおさらいする。そしてすらすらと勇介が答えて満足そうな五島が機嫌よく無線を切ったのだった。

「ほんと、あなた何者?」

「ただ者ですよ」

 笑いながら勇介は装備を身に着けていく。とはいってもあまりかさばらないようなものを選ぶ。

「銃火器はさすがにかさばらないと言ってられないか。アサルトライフルと、フラッシュバン、パイナップルたらふく詰め込んで、弾も持っておくか」

「……」

「ミヤビさんはRPGでも背負いますか? 弾なら俺が持ちます」

「いいの?」

「ええ。水につかることもないでしょうし。外で何か戦闘になったとき使えますし」

 それも見越したようにRPGが置いてある。それを手に取ってミヤビに渡して弾薬が入ったリュックのようなものを背負う。

「大丈夫? 自分で持つよ?」

「いや、多分長距離歩くんで体力を食いますから。大丈夫ですよ? 一応訓練でこれより重い装備で駆け足登山とかしてましたから」

「え?」

「ですからこれぐらい大丈夫です。さ、そろそろポイントに着きましたね」

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