92 魔神バッカスと触手
最近日々が楽しい。
以前では考えられなかった事だ。
相変わらずポンコツ連中には振り回され、胃が痛いのは続いているが、食事が美味しいのでまだどうにか我慢できる。
ウー・マイは庁舎での昼食だけではなく、最近は全員が集まってるタイミングで朝食を用意してくれている。
一日二回美味しいものが食べれているので、体調はとてもいい感じだ。
そして私は今日の仕事に取り組んだ。
「さて、パラケルススさんの騎竜戦艦がどうなっているのか様子を見てきます」
「ご自由にどうぞ」
私は翼を広げて騎竜戦艦のある湖まで飛ぼうとした……その時!
ゴウンゴウンゴウン……。
「何じゃありゃぁー!」
空から巨大な騎竜戦艦らしい物体が庁舎の中庭に着陸した。
「テテンタルルスー」
この声は、もう言うまでもない。
「パラケルススさん、これはいったい何ですか??」
「フッフッフー、これぞワシの大発明。ゴーレムくん十号こと、『スーパーウルトラグレートデリシャスワンダフルときめきハイパーミラクルアームストロングゴッドキングラグジュアリースペシャルダイナマイトジャイアントスペクトル風雲疾風怒濤電光石火諸行無常色即是空弱肉強食アポカリプスアカシックジェネシスマシーンフォートレスくん』なのだー!!」
長い……ただひたすら長い。
そして意味が全くない。
「あの、その名前もう一度言えるんですか?」
「もちろんなのだ!」
「これは『スーパーウルトラグレートデリシャスワンダフルときめきハイパーミラクルアームストロングゴッドキングラグジュアリースペシャルダイナマイトジャイアントスペクトル風雲疾風怒濤電光石火諸行無常色即是空弱肉強食アポカリプスアカシックジェネシスマシーンフォートレスくん』なのだー!!」
あの……その長い名前をきちんといえるのに、なぜ私の名前は毎回間違えるんでしょうか?
「で、そのゴーレムくん十号がなぜドラゴンに引っ張られるずに空を飛んでいるのでしょうか?」
「それはワシの天才的錬金術のなせる業なのだー! 人造オリハルコンによる永久内燃機関をゴーレムくんに取り付けたのだー」
「それは……何なのでしょうか?」
「ワシの作った人造オリハルコンをゴーレムくん軍団に働かせて雷を撃たせることで浮遊力を作っているのだー!」
凄いのかもしれないが、私には理解のできない技術だ。
確かにこのパラケルススは、アホだが天才なのかもしれない。
「これってどこでも飛ぶことができるんですか?」
「もちろんなのだ!」
「ではそれで出かけましょう」
「ゲンタクルスー。どこに行くのだー??」
◇
私は魔神バッカスの住処に到着した。
「バッカスさんー。いますかー?」
「あ゛ー? おどれらだれじゃい」
奥からひげで毛むくじゃらの大男が姿を現した。
どうやらこれが魔神バッカスらしい。
「あなたの酒代を今後費用からカットすることになりました」
「なあああああんんだってええええええ!!!」
バッカスは顔を真っ赤にして、憤慨していた。
「おどれ、それを言うってことは、ここがどんなメチャクチャになってもええっちゅうんやな!?」
バッカスは酒樽をぶん回しながら威嚇してきた。
魔神バッカスのレベルは80近い。
これは四天王に相当する強さだ。
しかしここでバッカスにひるむわけにはいかない。
私は瓶に入ったゲンキニナールグレートXを飲み干した。
これで一時的だが、魔神バッカスと同等の強さは取り戻せる。
「いい加減にしてください。あなたは堕ちた神と聞きますが。やってる事はただの酒飲みニートではありませんか!」
「おどれ……マジでぶっころしたる!!」
「触手よ伸びろ!!」
私の触手はバッカスの全身をがんじがらめにした。
「ぬおお、動けん! これを離さんかい! この卑怯もんがぁー!!」
「あなたが話を聞こうとしないからですよ」
「オイに何をきけっていうんじゃい!」
流石の魔神バッカスも全盛期の私の前には手足が出せなかったらしい。
「実は提案したいことがあるんですよ」




