90 ゴーレムくん大増産計画!?
ファーフニルのブレスは一瞬で滑走路と運河を作った。
「ご主人様―、褒めてー、我を褒めてほしいですわー」
「ええ、よくやってくれました」
ファーフニルがドラゴンの姿のまま、尻尾をパタパタさせて喜んでいた。
あのー、その尻尾のパタパタだけで地震が起きているんですが。
「やりますね、ファーフニルさん。これで騎竜戦艦が使えそうですよ」
私は女性の姿に戻ったファーフニルを連れて、騎竜戦艦の中に入った。
「テンタククルー、ワシこれを修理するのだ」
「パラケルススさん? 今一体何をやってるんですか?」
パラケルススは騎竜戦艦のパーツを取り外して、何やらよく分からない物を作っていた。
「ふっふっふー、コレはワシが作っているゴーレムくん一号なのだー。このゴーレムくん一号を使ってこの戦艦の修理をするのだー」
まあ周りに迷惑を撒き散らさないなら、好きにやってください。
「凄いのだー、このゴーレムくん一号が出来たら、次はそのゴーレムくん一号が材料を見つけてきてゴーレムくん二号を作るのだー」
「そうなんですね」
「そしてそのゴーレムくん二号に材料を見つけさせてきて今度はゴーレムくん二号がゴーレムくん三号を作るのだー」
ダメだ、このまま話させ続けるとゴーレムくん○○号の話までずっと同じ事を言い続けかねない。
「あの、パラケルススさん。その……ゴーレムくんは何号まで作るつもりなのですか?」
「今のとこまあ一万号までは考えてるのだ」
!!!
何だそれは!?
それってゴーレムくん軍団だけで一万もいるという事になるのか。
それよりもそれだけの材料をどこから確保するというのだ?
「あの、パラケルススさん……ゴーレムくんの材料が尽きたら、どうするつもりですか?」
「ふっふっふー、その時はこの騎竜戦艦で人間の国に殴りこんで、材料を根こそぎ奪うだけなのだー」
ダメだコイツ、早く何とかしないと。
今はまだ魔界と人間界で戦争をする時ではない。
それなのにこのポンコツ錬金術師のホムンクルスの暴走で戦争を始められたら、こちら側にどれだけの犠牲者が出るやら。
「却下です。せめてゴーレムくん十号までにしておいてください」
「えー、ひどいのだー。ワシのゴーレムくん一万体計画がー!」
今のうちに止めておいてよかった。
この狂人錬金術師をそのままにしておくと、大惨事が起きるところだった。
「とにかくこの騎竜戦艦は自由に使っていいですので、そこまでで我慢してください」
「ちぇっ、わかったのだ。それではゴーレムくん十号はこの騎竜戦艦にするのだー」
「え? パラケルススさん? 何を言っているのか意味が分からないのですが」
パラケルススは何を言っているのだ??
「この騎竜戦艦を、変形して超巨大なゴーレムになるように改造するのだー」
「貴女、今何言ってるかわかってるんですか??」
「もちろんなのだ! ワシの頭脳と技術があればよゆーで作れるのだー」
いや、余裕で作らないでください。
しかし、パラケルススはなにやら紙を広げて、謎の図を描いていた。
「ここをこうして……そこはこうなって」
パラケルススは研究に没頭していて、周りの言葉が聞こえないらしい。
「ファーフニルさん、エリザベータさん。一旦帰りましょうか」
「ご主人様、もし帰るなら我の背中にお乗りください。さあ、さあ」
ファーフニルが尻尾を振って私に背中に乗ってほしそうに催促してきた。
「わかりました、では庁舎までお願いしますよ」
「ご主人様、了解しました」
ファーフニルは猛スピードで空を飛び、あっという間に庁舎に到着した。
「そういえばお腹がすきましたね。食堂に行きますか」
食堂には仕事終了直前の時間だったにもかかわらず、凄い行列が出来ていた。
そしてかなりの時間待たされた私達は、食堂でA定食を食べた。
今日のA定食はカトブレパスのステーキだった。




