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85 極上の鍋パーティー

 ウー・マイの作った鍋はとても美味しそうだった。

 比喩ともいえるかもしれないが、それは光輝いていた。

 魔族に聖属性は致命的と言えるが、鍋が光り輝いているからと聖属性になったわけではあるまい。


「それではいただきましょうか」


 私達は鍋を食べ始めた。


「!! 美味い!」


 鍋は極上の味だった。

 例えようの無いくらい言葉にならない。

 そして本当に聖属性なのかというくらい、体に負担が大きかった。


「ワタシの鍋、伝説の厨具『灼熱火鍋』で作ってるアル。これ、体の悪い物全て浄化出来るアル」


 待て待て待て待て待て、それってマジで聖属性じゃないのか!?


 だが、私達は鍋を食べ続けた。


 エリザベータなんて、体が半分透明になりかけている。

 やはり聖属性ダメージを喰らっているのだろう。

 だがそれでもやめられないほどこの鍋は美味しかった。


 リオーネはライオンというよりも、可愛い猫みたいになっている。

 ファーフニルは普段の毒気が無く、真っ白になりかけている。

 オクタヴィアはやはり泣いている。

 そしてブブカはめちゃくちゃ汗をかいてスリムになっていた。

 トモエは何やら神髄に達したような表情になっている。


 これがウー・マイの料理の効果なのか!


 全員が一心不乱に鍋を食べ続けた。

 会話すらない、みんなが鍋に夢中だ。

 同じ食材を使いながら前の惨劇は一体何だったというのだ?


 だが今は考えるよりも鍋の事の方が頭にいっぱいだ。

 当然と言えば当然だが、其れだけ凄いスピードで全員が食べる物なので、食材が尽きてしまった。


 しかし、鍋を求める者達は皆がゾンビの様に目を光らせて鍋を求めている。


「もっと……もっと食わせるのじゃァー」


 エリザベータが体を半透明にしながら揺らめいていた。


「もっと、もっと寄こすのニャアー!!」


 リオーネが猫化していた。


「お代わりを、お代わりをもらえなければ……斬る」


 トモエがバーサーカー化していた。


「アンギャー! ギャアオオオオオオン!!」


 ファーフニルが竜になって炎を吐いていた。


「うぇえええ、美味しい、美味しいですぅぅぅ」


 オクタヴィアはまだ泣いていた。


 全員がお代わり欲しさに、野生化狂暴化している。

 しかしウー・マイは冷静な態度だった。


「っふっふっふ、そんな事もあるだろうと思っていたアル。なのでスープはまだまだ残ってるアルよ」


 あの、スープだけでこの連中が納得すると思えないのですが。


「てんたくるすのオッサン。触手をもらえるかアル?」

「え……触手ですか? まあ、いくらでも生えてきますんで」


 私は触手を伸ばした。


「アイヤー!」


 ウー・マイは触手を剣で斬り落とすと素早い手つきで切りそろえた。


「コレはそのままだと生臭いので皮をむくアル。この細いのはそのまま水洗いで塩でもみ込むアルね」


 ウー・マイは私の触手を種類分けしていた。


「ブブカ、ボーとしてないで手伝うアル」

「り、了解っす!!」


 ブブカは触手の皮むきや塩もみを手伝った。


「それでまた別茹でしたこの触手をスライスして……鍋に投入! 後は煮えるまで待つアル」


 全員の目が血走っている。

 早く食わせろといった態度なのだろう。

 そういう私もソワソワしたのが、止められない状態ではある。


「ヨシ、煮えたアル。もう食べれるアルよ」


 我慢していた連中が一気に鍋に押し寄せた。

 私は改めてこのウー・マイの怖さを全身で感じた。


 魔界最強クラスの連中を胃袋だけで支配できるなんて、今までどんな魅了の魔術の持ち主でもできなかった事を彼女は平気でやってのけているのだ。


 鍋に入れられた触手は……今まで食べた生臭かったり硬かったりで、とても食べられたようなものじゃない素材とはとても思えないほど、美味だった。


 そして、私の触手を食べた連中の身体にどんどん異変が起きていた。

 なんと……魔力が増大したり、身体のエネルギーが満ち溢れたり、どんどんレベルアップしているのだ。


 いったいこれは何だというのだ!?

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