83 食う寝るところに住むところ 2
バーレンヘイム中央省庁庁舎食堂、専属料理長。
それがウー・マイに与えた役職だ。
「ふぇ? ワタシ料理出来るだけじゃなく住むところももらえるアルか!?」
「はい、その通りです。貴女は今後この国の公務員という形になります」
「姐さんよかったっすね!」
「ブブカさん、アナタも一応公務員という扱いになりますよ」
とりあえずこの二人は今後このバーレンヘイムに必須な人材だと言えるだろう。
それよりなにより、あの拷問みたいだったメシマズから解放される事が、私は何よりも嬉しかった。
この二人は特別待遇でもこの国に居場所を確保しよう。
「つきましては、住民課に行って宿舎の部屋を用意する形になります。午後はそちらに行ってもらえますでしょうか?」
「わかったアル」
ウー・マイは素直に従った。
そして私とエリザベータが住民課に行き、ウー・マイ達の手続きの用紙を用意した。
「はいはい、ウー・マイさん。種族は……人間ね、そこにある紙に名前を書いてくださいよ」
このバーレンヘイムには一応人間という種族もカテゴリー的に存在する。
それはペットだったり家畜だったり食用だったり魔族の扱いによっては色々だが、あくまでもそれは持ち主のいる場合だ。
今回は持ち主のいない人間、それなので一応保護者管理者は、執政官の私という事になった。
なおブブカは普通のどこにでもいるオークなので書類はすぐに用意できた。
「以上になります。これであなた方は正式にバーレンヘイムの住人となりました。今後は同じ仲間としてよろしくお願いします」
「わかったアル。触手のオッサンよろしくアル」
「あのー、私はオッサンではなく……『テンタクルス・ネジレジアス』と申しますが」
「わかったアル。てんたくるすのオッサン、よろしくアル」
そして宿舎の空き部屋の鍵を二人とも受け取った。
ウー・マイとブブカの二人は宿舎の空いた部屋にそれぞれが別々に住む事になった。
「姐さんー! 離れ離れになって寂しいっすー!!」
「ブブカ、仕事では一緒の場所アル」
「あ。そういえばそうだったっす」
とりあえず部屋の問題は二人分の備品を貸し与えという事で当分は済みそうだ。
そして定時が過ぎ、私達は宿舎に戻る時間になった。
「ワタシたち、てんたくるすのオッサンについて行けばいいアルか?」
「え、ええ。そうしてください」
オイオイ、オッサンはちょっと勘弁してくれよ。
私はウー・マイとブブカに宿舎のそれぞれの部屋を紹介した。
そしてようやく自分の部屋に戻り、ゆっくりしようとした。
「ふー、今日は疲れました」
「テンタクルスー、腹減ったのだ」
「妾も空腹なのである」
この居候共は……今私には金も食材もないってのに……。
「テンタクルスー、いるかー? また肉持ってきたぞー」
ここでリオーネまで登場である。
これはまたあの闇鍋の惨劇が起きかねない……。
「あら、テンタクルスさん。また今日もお盛んのようですね」
ここで食材を持ったオクタヴィアまで登場。
「ご主人様ー。もし食べる物が無いのでしたら我の尻尾食べませんかー? 何度でも生えてきますからー」
ファーフニルまで登場だ。
「てんたくるす様、いっしょにショーユを飲みませんか?」
トモエまで来た。
これはもう闇鍋確定だ……私は絶望を感じていた。
だが、今回はそれに更なる展開が待っていた。
「てんたくるすのオッサン、お礼に何か料理作りに来たアル」
「オレっちもいるっす」
! 今回は前回のような事にはならない、何故なら究極の料理人ウー・マイが来たのだ。
「ウー・マイさん。それでは料理してもらえますでしょうか」
「わかったアル。少し待ってるアルね」
助かった、これであの闇鍋の惨劇を繰り返さないで済みそうだ。
ウー・マイは今ある食材を全部調べ、素早く下準備を始めた。




