25 とりあえず住居の確保
次の日私は寝不足のままベッドから起き上がった。
「んー、テンタクルス、おはよっ!」
「ああああ貴女は服を着てください!」
「なんだよー、オレ寝る時は裸がポリシーなのにー」
リオーネは裸族なのか? それとも先住民族か? とにかく彼女には恥じらいという物が欠片も存在していないようだ。
「とにかくさっさと服を着てくださいっ!!」
「わかったよー」
リオーネは渋々服を着替えた。
そして準備のできた私達は庁舎に向かった。
◇
庁舎にはまばらにポツポツと人が集まっていた。
どうやら時間通りに登庁する者は少ないようだ。
食堂も朝はやっていないようだ、開くのは昼からになるのでそれに合わせて魔獣車がその日の食材を運んでくるようだ。
私は魔獣車の中身を透視してみた、これは私の持つスキルだ。
魔獣車は氷の魔法でコーティングされており、食材の輸送はそれで行う事が出来る。
中身を確認してみたところ、肉九割に野菜が一割だった。
これを見れば野菜がクソ高いのも仕方が無いとわかる。
魔獣車は食堂の裏手に入っていった。
「じゃあオレも仕事があるからここでな、じゃあまたな、今晩も泊めてやるからな」
「い……いや、遠慮しておく」
これ以上リオーネと夜一緒に居たら命がいくつあっても足りない。
彼女は無自覚に私を苦しめる事になるのだ。
「さて、今日中に私の部屋を確保しなくては」
私は執政室に向かった、ここなら住民台帳もあるはずだ。
つまりは私の住民台帳をここで登録すれば庁舎の寮に私の部屋を確保出来るというわけだ。
もし最悪の場合は軍務書類から軍の寮に入る方法も考えられる。
その為にも今日は住民課の書類整理を終わらせなくては。
◇
「触手よ、部屋いっぱいに張り巡らせよ!」
「それ、気持ち悪いんでやめてほしいんですが……!」
オクタヴィアはこの私の触手にトラウマがあるので見るのも嫌なようだ。
私は触手を張り巡らせて一旦軍務書類を全部一か所にまとめた。
「よし、これで先に住民課の書類整理が先に出来るな」
「その書類ここにあるだけじゃないんですが……」
住民台帳等はここにあるだけではなくどうやら開かずの倉庫に大半があるらしい。
しかし住民課は全く仕事をせず賭けカードゲームばかりしていた。
どうやら仕事が無いというよりは申請に来るのがいないので仕事にならないと言った方が正解のようだ。
実際私の見つけた住民台帳のデータを見ると、庁舎の宿舎には空き部屋がかなりの数があった。
オクタヴィアの名前もその中にあったので彼女も宿舎住まいのようだ。
リオーネの名前はこの中にはなかったので彼女は自分自身で部屋を借りたのだろう。
そして私は空き部屋の中で良さそうな部屋を探し、私の名前を記入した。
「えっと……名前は『テンタクルス・ネジレジアス』職業は……バーレンヘイム執政官と」
これでどうにか私の住める場所は確保できたわけだ。
後程住民課に行って宿舎の鍵を受け取ってこよう。
◆
私は庁舎の住民課を訪ねた。
「私はテンタクルスだ。宿舎の鍵を受け取りたい」
「おー? お前昨日のカードゲーム邪魔した兄ちゃんじゃねーかよ」
「私は新たにこのバーレンヘイムの執政官に就任したテンタクルスだ。お前達の上官になる」
普通だとこれで上官が就任したと聞けば全員カードゲームをやめて挨拶くらいはするものだ。
しかしこの連中は課長も含めてカードゲームの方を優先していた。
「あーわかったわかった、あと1ゲーム終わるまで待ってろよ」
なんだこれは? 仕事をしようというつもりがまるでないのか!?
これでクレームが出ないのが不思議なくらいだ、いや、仕事自体が無いからクレームをつけられる事自体がないのか……。
私はその後6ゲーム程終わるまで待たされ、その後ようやく自分の部屋の鍵を受け取った。
この連中は仕事に対する意欲が全く存在しないのか。
私は午前中に鍵を受け取りに来たのに結局受け取れた時間は既に昼近くまでなっていた。




