第91話 インフェルドン来る!!
「おいおい、やったなおいー! どうだ。自信がついたか……?」
「い、いや、自信なんてそんな……」
「お前は調子に乗るくらいでいいんだぞー。いやー、ジョンがねえ。ついにねえ!」
『勇者がまるで、兄弟の成長を寿ぐが如く喜んでいますが!』
「そりゃあもう、俺がゲームで操作していたのはこのジョナサンなんだ。こいつが弱々しい時から、ひたすらNTRされつつ戦い続け、成長していくのを見守り、様々なルートを駆け抜けたんだ。そいつがついに! 一皮むけたんだぞ! こんな嬉しいことがあるか! こいつはもう一人の俺なのだ!」
『ははーん、ゲームとやらが神の視点で本物のジョナサンを操作するものなら、確かに己の手を離れてジョンが大人になったことは喜ばしいですよねえ』
「うむ、そういうことだ。いやあ、今日の朝食は美味いぞ」
「なんでジョナサンのテンションがすっごく高いの……!?」
カイはドン引きなのだった。
というか、カイもカイでいつのまにジョンとそんなに仲を縮めていったのか。
王宮で朝食をいただく俺達。
朝飯は精進料理なんだな。
周囲がファンタジーなのに、精進料理……!!
米に野菜の天麩羅に、豆腐に納豆、そして漬物と野菜の味噌汁……。
美味い。
ご飯のお代わりが自由だし、野菜の天麩羅も多めに用意されているから追加できるのも嬉しい。
だが!!
太陽神を信仰する王国の、中心である王宮の食事が和風の精進料理とは!!
「またジョナサンが難しい顔してご飯食べてる! 美味しくない?」
ナルが覗き込んできた。
「美味い。美味いんだが、俺の中にあるファンタジー脳が常に抵抗を示すのだ……」
「ふうーん? そうなんだ。ところで~。カイも決めた所で、ボクもジョナサンともっと進んだ関係になりたいな~なんて」
「ぐぐぐぐ」
いかーん!
ジョンが一歩成長したことで、俺もまた新たな窮地に陥ったのではないか。
『んもー。勇者も意地を張らず、ちょっと女子と実るくらいいいではありませんか。あ、でも賢者モードとやらなので物理的に不可能なのですよね』
「そうなのだ。超越者をぶっ倒し、元の世界に戻らねば解けまい」
『だったら私にいい考えがあります!』
「嫌な予感がするぞ……」
『勇者を好きな女子を全員、勇者の世界に連れて行っちゃいましょう! そうだ、それがいいですね!』
「う、う、うわーっ」
「ジョナサンがこの世の終わりみたいな声を出しましたわね。珍しい……」
「ボクとしては、ジョナサンの世界? なんかそこに行けばいい感じにできるなら行くぞー!」
お、俺に逃げ場なし!!!!!
さて、食後は不死王の軍勢への対策会議である。
インフェルドンは近隣の村や街を破壊しながら進軍している。
神聖王国では、あらかじめ周辺地域の住民を避難させていたようだ。
そのために人的被害は少ない。
「だが、食料の問題がある。神聖王国はそこまで多くの人間を食べさせていけるほどの備蓄が存在しない。それに対して、不死王の軍勢は不死者。食事をすることなく永遠に戦い続けることができる」
神聖騎士団の偉い人っぽいのがそんな事を言った。
確かにな。
神聖王国側には、食料備蓄が尽きるまでにどうにかせねばならない、というタイムリミットがある。
実は裏側で大神官が意思決定の邪魔をしていたらしく、それが排除された今はサクサクと作戦会議が進んでいく。
神聖騎士団に祝福を授け、迎え撃つ方針のようだ。
「よし、では俺がまず切り込んでインフェルドンを潰そう」
俺からナイスな提案だ!!
これを聞いて、周囲の連中が唖然とした。
「お、お待ち下さい聖人様! インフェルドンと言えば敵軍の中枢! いきなりそれを叩くなど言うことが容易にできるとは……! もっと敵を包囲しながら戦力を削っていかねば……」
「いや! ダメもとで突っ込んでみよう! ダメなら退却する! 俺達には機動力があるからな!!」
「な、なるほど……!! 聖人様がそう仰られるならば、確かに挑戦する価値はあるかも……」
ここでネイアが俺に小声で聞いてくる。
「何を生き急いでおるのじゃ?」
「焦ってるんだよ! このままダラダラやってたらヒロインが増えて大変なことになる。俺はこういうシチュエーションに詳しいんだ。だからなにか起きる前に早回しでこの戦いを終わらせるんだよ! さっさと超越者を仕留めないといけないんだから!」
「神をも超えると言われるあやつを、さっさと……!? 底知れぬ漢じゃのう。ますます興味がわいてきたわい」
いかーん!!
このエルフ、俺の世界までついてくるつもりではあるまいな!?
あまりにも色々な事が起きすぎて、俺は混乱しているぞ!!
くそーっ、さっさと敵の只中に飛び込んで戦うほうが楽だ!!
「ということで! 敵を撹乱してくるぞ! おいナル、ヴェローナ、ジョン、ついて来い!」
俺は立ち上がった。
会議において、インフェルドンの軍勢の位置は共有されている。
人類に対して圧倒的強者である魔人たちは、身を隠す必要がないためだ。
だが、インフェルドンはただの力押しの将軍ではない。
その証拠に、間者を神聖王国に忍ばせ、この国の動きを妨害していたからな。
どうでもいいが、間者と間男は一文字違いではないか!!
ムカムカしてきたぞ。
「ちょっと待ってよ! カイも行くし! ねえ師匠!」
「うむ。平時ならば無茶な戦いであろうが、不思議とジョナサンがいれば勝てる気がしてくるのう。神聖王国の皆よ。この戦は、誰も見たことがないものになるぞ?」
なんか彼らに期待させるような事を言ってる!!
俺は別になにか考えて行動してるわけではないからな?
むしろ身内からの、責任取ってくれみたいな圧力から逃避するために戦うのだ……!!
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