第87話 リバーサイド神聖王国入り!
魔導ワゴンがガーッと走っていくと、門番たちが「ウワーッ」と悲鳴をあげた。
必死に、来るな来るなと両手を振り回している。
ついには神聖騎士っぽいのがガッシャンガッシャンやって来て、守りを固めようとした所で……。
魔導ワゴンはドリフトしながら停止した。
俺達が降りてくる。
「旅の魔人殺しなのだが入国しても?」
俺が問うと、門番も神聖騎士もポカーンとするのだった。
そうそう!!
俺に新しい称号が増えた。
というか、人狼殺しがランクアップして魔人殺しになった。
「魔人殺しとは、魔なる者どもを屠り続けてきた聖なる戦士が神より賜る名だぞ。騙るならば死を持って償うことになる!」
神聖騎士がぷりぷり怒りながら告げる。
その後、神官がバタバタやって来た。
「えっ!? 魔人殺しを名乗る不審者!? こんなムキムキでブレストプレートしか身に着けていない手ぶらの男が魔人殺しのはずが……。神よ、大いなる奇跡をここに顕し給え……! 神名看破!」
俺に何か魔法が掛けられた。
抵抗は容易いが、ここはのんびりとしておこう。
攻撃的だったら粉砕すればいいだけだからな。
すぐに結果が出たようで、神官は虚空を見つめて目をパチパチさせた。
何度も見返してる。
ちょっとしてから、
「ヒェーッ!!」と叫んで腰を抜かした。
「ど、どうされた神官殿!! まさかこの男が何かを……」
「い、い、いや! 違う! この、この男は! この男は! 正真正銘、本物の魔人殺しだ!! 聖人であらせられるぞーっ! ははーっ!!」
俺にひれ伏す神官!
これを見て、神聖騎士も慌てて膝を突いた。
「こ、これはとんだご無礼を……」
門番たちまでペコペコするではないか。
どういうことだ?
「これはじゃな。リバーサイド神聖王国において、王族は神を祀る祭祀も兼ねているのじゃ。それが最高位じゃが、そんな王族に次ぐ特別な扱いを受ける者がいる。それが聖人なのじゃよ」
「流石にネイア詳しい。年の功か」
「わしよりもこの王国は齢を重ねておらぬからのう」
「思ったよりもあっさり入れてしまった……。ジョナサン、君という男は底知れないな……」
ジョンが感心しているが、別に狙ってやったことではない。
たまたま成り行き任せで間男どもを叩き潰し続けていたら、この称号が身についただけなのだ。
魔人殺し、人狼殺しの時間延長バージョンで、ダメージボーナスも増えている。
これは強いぞ。
しかも神官が神の名のもとに俺の称号の正当性を証明した。
俺と仲間たちは、国賓扱いで招かれることになったのだった。
「ほえー! 真っ白な町だあ」
「確か神聖王国って、太陽の神バルガイヤーを信仰してるんだよ。だから日差しに照らされて輝くように、表通りの家々は白く塗るんだってさ」
「カイ物知りー!!」
「そこはお師匠様譲りだからね」
「あちこち、結界が存在していて厄介ですわね……」
魔人そのものであるヴェローナにとっては、ちょっと居心地が悪いか。
「わたくしは王城へ向かうのはやめておきますわ。宿を取って待っていることにしますわね」
ここで彼女とは別行動……。
むむむっ、神聖王国とは言え、いつ間男がヴェローナを襲うとも分からん。
俺は神官に頼み、女性信者たちが集まる場所に彼女を置いてもらうことにした。
「彼女は宗教上の理由で、バルガイヤーの最高神殿である王城に入ることができない」
「なるほど! 承知いたしました聖人よ」
俺がさらさらと流れるようにウソを吐くのと、聖人という地位が後押しし、神官は信用してくれた。
織物などをしている信者女性たちの工房に、ヴェローナをいさせてくれるそうだ。
持つべきものは称号だなあ。
こうして俺たちは王城へ通される……前にだ。
なんか城の近くにある妙なところに送り込まれた。
一見するとだだっ広い、兵士たちの訓練場のような。
神官がキョロキョロしている。
「おや……? 大神官様の言いつけ通り、聖人様をここにお連れしたのだが……」
「ご苦労!」
声が掛かる。
なにもないかと思われた訓練場の先から、透明なベールが剥がれるようにしてそいつらは現れた。
完全武装の神聖騎士団だ。
その先頭に、つるりとした頭の大柄な男がいる。
「今朝方、神よりお告げがあった! 聖人を騙る不届き者が現れるとな! そして私はお前に目をつけていたのだ! 偽の聖人を国に招き入れ、何を企んでおった!!」
「大神官様!? 何を仰っておられるのですか! 我が神聖魔法で、このお方は間違いなく聖人であることが明らかに……」
「完全に洗脳されたようだな! もういい! 神に背いた貴様に与える罰は、死だ! 炎の奇跡よ!!」
大神官が手にした手投げ矢が、燃え上がる。
これが猛烈な勢いで神官に投げつけられ……。
俺が縮地でダッシュする速度よりも遅いのだが?
矢は俺の胸板に当たり、ポトッと落ちた。
神官が「ヒィーッ」と叫んでいるが、無事である。
ジョンが彼を避難させた。
「なるほど。ここにいたか、インフェルドンの手下め」
「言うに事欠いて、私を魔人の手下呼ばわりか! 聖人を騙っただけでなく、私に疑いを掛けるとはな! どれだけ罪を重ねれば気が済むのか……」
「問答無用! ツアーッ!!」
「えっ!?」
大神官がなんか喋っている間に、俺は縮地でダッシュ!
なんか奴と俺の間に結界めいたものが張られていたのだが、駆け寄りざまのチョップで破壊!
パリーンと割れる結界!
返すチョップで大神官を打撃!
「ウグワーッ!?」
上空へ吹っ飛ぶ大神官!
「だ、大神官様ーっ!!」「大神官様がふっとばされた!」「何が起こった!?」「ニセ聖人がが目の前に!?」
「騎士団も騙されやがって! このバカモンがー!!」
「ウグワーッ!!」
俺が騎士の一人にビンタすると、兜がひしゃげてぶっ飛び、騎士もキリモミ状に回転しながら飛んでいった。
「な、なにをするーっ!!」
「何をするはこっちのセリフだ! いいか! 今俺は人間に当たれば粉々に叩き潰す威力を込めてチョップを放った! だが吹っ飛んだ大神官を見ろ! 原型をとどめている! あれは人間ではない」
「ええ……!?」「殴って死んだら人間、死ななかったら魔人みたいな理屈言ってるぞこの人」「いや、だが我らが神の尋問も大体こんな感じ……」
魔人は妙に頑丈だから、ダメージを与えると分かるらしい。
むくりと起き上がる大神官。
ビンタした神聖騎士は失神して起き上がってこない。
「見ろ。明らかに強力な攻撃を食らってもピンピンしている大神官が人間だと思うか? 魔人だろ! 行くぞ魔人!! ここで仕留めてやろう!!」
「な、何がなんだか分からんが、お前が危険過ぎることだけは分かったよ!! させるかーっ!!」
俺と、大神官(暫定的魔人)とのバトルが始まる!
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