第79話 バイフン、情報をくれ!
カッフェルをぶちのめした後、俺は冒険者ギルドに宣言した。
「不死王との戦いは俺が担当しよう。いい経験値稼ぎだからな。それに成長株な俺の弟子もいる。二人に任せておけ!」
「あ、ああ! 任せてくれ!」
俺がぽんと肩を叩いたら、ジョンもいい感じで決めてくれた。
いいじゃないか、いいじゃないか!
最初はハッタリで行って器を広げて、後から中身を詰めていくことで爆発的成長ってのはできるもんだ。
途中で現れた、狼獣人のギルドマスターと握手などして、相変わらず獣人ってギルマス以外見ないよなあ……と思いつつ盗賊ギルドへ向かうことにした。
「ジョナサンはどうしてギルマスと握手してる間、ずっと不思議そうな顔してたのさ?」
「それはな、カイ。俺がギルマス以外に獣人を見たことがないからだ」
「そお? ちょこちょこいるよ、獣人のひと。カイはそんな珍しくないと思うけどなー」
だとしたら、俺の動線上に獣人が住んでないだけかもしれない。
例えば武器屋とか防具屋に獣人がいるとか。
うん、俺は身一つを武器と防具にするので、絶対に通わないもんな。
そのようなことを考えながら、盗賊ギルドにやって来た。
ここの入口は、ダウンタウンの酒場の形をしているんだよな。
なお、酒場周辺にたむろしていたガラの悪そうな連中がぎろっと俺を見た。
「なんだぁ、てめえ!?」
おっ、立ち上がってこっちに来るぞ!
俺も向こうに向かっていった。
大体二倍の速度でだ!!
「えっ!? お、おい! お前! 速い! 速いって! おいー!!」
どーんと胸板をぶつけると、ガラの悪いのが吹っ飛んだ。
「ウグワーッ!?」「あっ、シゲがやられた!」「てめえ!! 俺達を盗賊ギルドの構成員と知っての……」「あっ」
一人、俺の顔を覚えているやつがいたようだ。
ガラの悪いのの一人が、サーッと青ざめる。
「こ、こ、こいつ、人狼殺し……!! 一人で城の門をぶち破って破城と呼ばれ、帝国の侵略戦争を知略によって終わらせたっていう戦う智将……」「えっ!?」「ええっ!?」
他の盗賊たちも真っ青になった。
そして、みんな跪くと、
「楯突いてほんと申し訳ありませんでしたー!! 殺さないでください!!」と叫ぶのである。
「ああ。みんな俺の顔を知らなかっただけだもんな? 大丈夫だぞ。俺は一度目の失敗は許すんだ。安心してくれ……」
「ははははははい」「二度目は……」「ばか消されるってことだよ」「ギヒェー」
この様子を、カイが呆然と見ていた。
「ジョナサン、君って大物だったんだねえ……」
「目的に向かって邁進してるだけなんだが、たまたまそれが英雄への道と重なってるだけだ」
そういうゲームシナリオだからな!
『勇者よ。とっくにそのシナリオとやらからは大きく外れているのでは?』
「そうかも知れない」
なんとなーく、俺も思ってたことだ。
ちなみにこのガラが悪い連中、今では全員まとめてもジョンにすら勝てないだろう。
絡んだのが俺で良かったな。
不死王の軍勢だったら即死だったぞ。
こうして彼らに案内させ、ギルドの奥に向かう。
酒場を守っているバーテンのおっさんは、俺を見るなり無言でギルドへの扉を開いた。
「頼むぜ智将さん、暴れないでくれよ……! あんた一人で、ポンドールのギルドが壊滅しちまう」
「凄く大げさに見積もられている……!」
称号ってのは恐ろしいものだな。
まあ、これを得られるように活躍すると、必然的にレベルが上ってしまうわけだが。
ギルドに俺が入ってくると、ざわざわしていた屋内が一瞬で静まり返った。
入口近くにいかつい連中が待機していたのだが、全員が真っ青になって冷や汗をかきながら俺を見ている。
なんだなんだ。
「驚いた。バイフンから聞いていたのとは大違いじゃねえか。化け物だな」
失敬な事を言うやつがいるなーと思ったら、人民服を纏った初老の男だった。
人民服!?
この世界、中華ファンタジーだったりする!?
「ジョナサーン!」
懐かしい声がして、バタバタ走ってくる足音が聞こえる。
頭上から。
なんと天井を走ってやって来た彼女が、俺に飛びついてきた。
「うおーっ、ナルじゃないか! 元気してたか?」
「してたよー! うほほ、ジョナサンのムキムキ、懐かしいー。また体格良くなった? あれ? ジョンもなんか大きくなった?」
「ど、どうも」
ジョンが軽く会釈した。
「どうしたのジョナサン? あれ? 横に新しい女の人がいる……。ねえ君、ジョナサンはね、ぜーんぜん相手してくれないからね! 強敵だぞー」
「えっ!? カイは別にそんな気ないんだけど……」
ちなみにナルは圧倒的に腕を上げたので、盗賊ギルドの運動訓練における教官になったそうだ。
まあ、身体能力だけならギルドでトップだろうからな。
そしてナルに聞いて知ったのだが、人民服の男は暗殺の長だったらしい。
浸透勁を使えるらしき男だ。
今度手合わせ願いたいな。
俺はプロレス封印して立ち会ってもいいから。
俺の熱視線を受けて、暗殺の長が半笑いになりながら後退していった。
「勘弁してくれ。俺は人間専門なんだ。化け物相手にするつもりはない」
「化け物とは失敬な」
「いやいや、お前さん、まだ人間の域にいるつもりなのか?」
おっと、また久々なのが出てきた。
情報の長バイフンだ。
相変わらず間男みを感じるイケメンだな。
だが、スカした感じのこいつ、よく考えたら原作にもNTRイベントなかったんだよな。
この美形、もしかしてフレーバーに過ぎないのか……?
「俺に関してなんかシツレイなこと考えてるのは分かったぞ」
「さすが情報の長は勘が鋭い。そして俺を人間じゃないと言ったということは……もう情報が掴めてる? ついさっきやってきたことなのに」
「ああ。午前の間に、あんたが不死王の軍勢と戦い、魔人兵を壊滅させたという情報は入手してある」
どうやって情報収集してるんだこの男。
バイフンの言葉に、耳をそばだてていた盗賊ギルドの連中が一斉に青ざめた。
サーッと俺から距離を取る。
「化け物じゃねえか」「おばけだ」「触れたら消し飛ぶぞ」
失敬な!
なお、そんな俺を前にしてバイフンはいつもどおり。
「そして俺は、あんたに有益な情報を提供する用意がある。ただし……この情報は高い」
「なるほどー。また何かやってくれと言うのか?」
「そうだ。一級冒険者グーテン。あの素顔の知れぬ男が、不死王の五将軍と接触していたという情報が入っている。こいつを確かめてくれ」
おおおっ!
いきなり核心を突く依頼じゃないか!!
グーテンは不死王そのものだからな。
彼が五将軍と繋がっているのを証明することは難しくないが、それはグーテンダークにとっての冒険者暮らしという娯楽を終わらせる意味がある。
さて……どうしたものか。
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