第75話 偶然不死王の軍勢とかち合うぞ!
ジョンを背負ってダッシュしていたら、ポンドールに向かう途中の村で火の手が上がっているではないか。
なんだなんだ。
「何が起こっているんだ!? 大変だ、助けなくちゃ!」
「ジョンはいちいち主人公のようなことを言うな」
『勇者曰く、この世界の主人公なのでしょう?』
「片っ端から寝取られちゃうタイプの主人公な……! 俺はこいつの不甲斐なさをひっくり返すために戦っているのだ!!」
「なんか世話を掛けているみたいで、本当に申し訳ない」
「いいってことよ」
そんな話をしながら、俺は火の手が上がる村に飛び込むのだった。
ついでで人助けは別に問題ないからな。
どれどれ?
火事が起きているのは……と思ったら、炎を吹き出す四つ足の岩石のような怪物がいるではないか。
で、そいつの周りに赤黒い鎧をまとった3mくらいある四本腕の全身鎧がいる。
むき出しになった肉体部分が骨になってるので、アンデッド……不死者の類だろう。
手にした四本の剣や槍や斧や槌で、村人を片っ端から殺しているのだ!
「や、やめてくれー!」「ひぎゃあー」「たす、助けて」「どうしてこんなことに」
『フン。五将軍がお一人、苛烈のインフェルドン様がお通りになるのだ。この村はちょうど進行上にある故、こうして燃やしてインフェルドン様の糧に変えてやろうというのだ』
村人たちの声に応じたのは、岩石モンスターの上に座っている赤いマントを纏った男だ。
髪の毛も衣装も、炎で出来ている。
魔族というやつだな。
「な……なんなんだ、あいつら……!!」
ジョンが驚愕に震えている。
「おう。不死王の軍勢だな。苛烈のインフェルドンは五将軍の一人で、活火山の化身だ。アホみたいなパワーを持つ、武人系の五将軍だぞ。で、あれはインフェルドンの腹心である……なんだっけ? まあいいか。助けに入るぞ!!」
「君、今一切躊躇せずに助けるモードに入ったね!?」
「それはそうだ。いいか? あの部下のやつは放置しておくと、一つだけだが胸糞NTRシーンがある! リョナ系のやつだ! 俺はリョナ系は許さん! 故に殺す!!」
俺はジョナサンを背負ったまま走った。
そして、村人に武器を武器を振り上げた骸骨戦士に向かう。
そいつは、まるで殺しを楽しんでいるようだった。
村人が避けられるギリギリ位の速度でゆっくりと武器を振り下ろし、ギリギリで避けられた先に武器を置いて、村人自らが刃に突っ込むように仕向ける!
なんたる悪趣味か!
いや、人の趣味にケチはつけまい。
だが、そうやって自分の趣味に耽溺していると、足をすくわれるぞ。
例えば……。
「ツアーッ!!」
俺が横からエントリーしたりとかな!!
『ウグワーッ!?』
骸骨戦士が吹っ飛んだ。
多分、物理無効だったり触れた相手にダメージを与える呪いだったりとか、鎧そのものも強かったりとかするのだろうが、何も関係ないね!!
人狼殺しでそういうペナルティを無視して、浸透勁で全部防御は抜くから!
空中に吹っ飛んだ骸骨戦士が、俺の蹴りのダメージで爆発四散した。
『なにっ!? なんだ!? 何が起こった!?』
赤いマントの男が驚愕してキョロキョロする。
俺は縮地でやつの眼の前に立つと、
「おいおい気をつけろよ! この村はたった今から戦場になったんだからな!」
と親切に宣言してやった。
『なっ!? ど、どこから現れた貴様!! 貴様がやったのか!? デーモンウォリアーを生身で!? どういう技を使った!? 人間の中で最も優れた戦士であろうと、刃が立たぬデーモンウォリアーを!!』
「いや、盛りすぎだろ。デーモンウォリアーだっけ? 蹴った感じ、あれせいぜい50レベルの雑魚敵だぞ? スキルを盛りに盛った俺からすると、スライムを蹴るのと変わらん……」
『なにぃーっ!? 人間風情が突然現れて、我らに宣戦布告とは片腹痛い……』
なんか言っているが、俺はジョンを地面に下ろすと、
「無理がない範囲でデーモンウォリアーをつっついてみろ。危なかったら俺が助けるからな。お前が頑張ることに意味が出てくるんだ」
「分かった! 村人たちを助けながら、僕も戦う!」
「いいぞいいぞ! 己の無力さを知り、それでも折れぬ男は好きだぞ!」
『貴様ーっ!! 私を無視するかーっ!! このサラマンデス様を!! 無礼者め、死ぬがいい!! かーっ!!』
サラマンデスが口をカッと開いて、そこからバカでかい火球を放つ!
が、俺は既に反応しているのである。
「震脚!! スキル任せのぉ……バックナックル!!」
半回転しながらの裏拳である!
震脚で足元の岩石モンスターが『ウグワーッ!?』と頭の一部を砕かれ、その反動で得た気の力で回転すると……裏拳の勢いで猛烈な風が巻き起こる!
火球が一発で粉々に散らされた。
『なにぃっ!?』
既に俺の目はジョンを追っているぞ!
「みんな、逃げろー! 逃げるんだー!! おいお前! 僕が相手だ! たあーっ!!」
カキンカキンカキン!
ジョンが必死にショートソードを振り回すが、当然のようにデーモンウォリアーには通じないのだ。
嘲笑うように、デーモンウォリアーは得物を振り上げ……。
「嘲笑う隙があったらさっさと決めればいいのに余裕ぶっこいてたからお前は死ぬんだよドロップキーック!!」
『ウグワーッ!?』
諸々乗っかったキックを食らって、デーモンウォーリアーが弓反りになって吹っ飛んでいった。
「遠当てツアーッ!」
『ウグワーッ!?』
空中で遠当てチョップを喰らい、真っ二つになって爆発するデーモンウォリアー。
「よくやったなジョン! 今の調子だ! 積極的に戦いに加わるほど、お前に経験点がドバドバ流れこむからな! こりゃあ入れ食いだぞお!!」
『一般的には死地のような状況ですが、勇者はいつもどおりほくほくしていますね』
「分かった! 僕を君を信じて戦ってみる! 例えこの剣が通用しなくても……!」
いいぞいいぞ!
積極的に関与するほど経験点は増すからな!
俺はサラマンデスの炎攻撃を震脚裏拳で捌きつつ、ジョンにつつかせたデーモンウォリアーを次々刈り取っていく。
「ツアッツアッツアッツアッツアーッ! お前はみじん切りだーっ!」
『ウグワワワーッ!!』
連続モンゴリアンチョップを食らったデーモンウォリアーが粉微塵になる!
『やめろ! やめろーっ!! 不死王様の選りすぐりの兵士を、そんな野菜でも切るように次々に打ち倒すのはやめろーっ!!』
「おら! 最後の一匹だ! こら逃げるな! 足4の字!!」
『ウグワーッ!!』
転んだデーモンウォリアーに、俺は技を解いてから組み付く!
「ツアーッ!! エアプレーンスピン! 死ねえ!!」
ガーンと岩石モンスターに叩きつけたのだ!
岩石モンスターの片足がぶっ壊れる!
デーモンウォリアーは文字通り粉砕!
『ウグワーッ!!』『ウグワーッ!!』
『いかーん!! インフェルドン様からお預かりした戦力をこれ以上減らすわけには……! おのれ人間!! 名を名乗れ!! 貴様は、絶対に殺す! このサラマンデスが絶対に殺してやるからなあ!!』
「うむ、俺の名が伝わって、名指しで攻めてくる方が経験点が稼ぎやすいもんな。俺はジョナサンだ。これからポンドールに行くので、戦力を整えたら追いかけてきてくれ! 待ってるからな!」
『ば、馬鹿にしおってー!! おのれっ! おのれーっ!!』
サラマンデスはむちゃくちゃ悔しそうにしながら、岩石モンスターを駆って敗走したのだった。
ここであいつを倒すと、俺の名前が五将軍側に伝わらないからな……。
「はあ……撤退してくれた……!」
へなへなとへたり込むジョナサンなのだった。
頑張ったな!
この後のレベルアップ、とんでもないことになってるから楽しみだな!
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