第74話 ジョンを鍛えるには実戦だな!
ジョンに訓練をつけてやるのである。
既に城に戻っていたデクストンがこの様子を見に来た。
「私が稽古をつけていたジョナサンが、弟子を取るようになったか。確かにお前の急成長は素晴らしいものだった。既に王国では私の次に強い騎士になったと言っていいだろう。……騎士……? 騎士かなあ」
騎士だよ!
剣術スキルは完全になくなったけどな!
俺は持っていた剣すらジョンに与え、振るわせている。
冒険者編に出てきた間男、マズールの使っていた剣。
なかなかの業物で、これまでちょっとだけ活躍してきた。
俺が見るところ、剣の正確さと鋭さを上げる魔法が掛かっているぞ。
マズールの剣あらため、ロングソード+1と名付ける。
「団長、ジョンの動きを見てどうです?」
「剣をかじった様子はあるが、まだまだだな。体が出来ていないのに技を使おうとしているから、剣に振り回されている」
「やはり……」
「身体づくりから始めるべきだろう。基礎トレーニングをさせた方がいい」
さすが騎士団長である。
常識的にはそうなんだよな。
だが、これは現実ではなくゲームの効果が発揮されるファンタジーである!!
「実戦だな……」
デクストンが去ったあと、俺はそう決意した。
「実戦……!? 君が戦っているような状況に、僕が挑むのか……!? この体は、君が乗り移る前の僕よりも幼いし、力だって弱い……。それが本当に、実戦で……!?」
「パーティで実戦に当たると、経験点が同時に入ってくるんだ。爆発的成長が期待できる! 行くぞ行くぞ。そろそろ影で、不死王の軍勢が動き出している頃だ」
「本当かい!? そんな話、誰もしてなかったと思うけど」
ゲームだとそうなのだ!!
戦争編が終わって、そこでエンディングを迎えていない場合、不死王編が始まるからな。
不死王編が終わるといよいよ、最終章の超越者編だぞ。
……いや、だがまさかこの世界、DLCは入ってないよな……。
異世界NTRパルメディアは、ダウンロードコンテンツ(DLC)で新シナリオがある。
戦闘はそこそこで、新たなNTRイベントが追加されたパックだ。
これを導入することで世界は広がるが、NTRされるヒロインやシチュエーションも増えてしまうという弱点がだな……。
まあいい!
『おや勇者よ、旅立ちですか? 今回は仲間を連れて行かないのですね』
「チエリはガイヴァンに駐在しているし、ナルはポンドールに戻ってる。ヴェローナは一旦不死王のもとに帰り、アルシェはボナペテーのとこだろ?」
『なるほど、男性だけなら寝取られる心配もありませんね。では私は、実体も出せるようになったことですしほうぼうで布教をするとしましょう。時に勇者よ』
「なんだい?」
『新しい女性が出てくる可能性はありませんか?』
「……ある」
不死王編で、通常モード最後のヒロインが追加される。
魔法使いで、叡智な服装をしたカイという強気系ヒロインだ。
赤毛で、真っ赤なローブを纏った派手な感じだぞ。
『ほほーん! 興味が出てきました!』
セレスが実体化し、十歳くらいの女の子の姿になった。
「うわーっ、なにもないところから女の子が!!」
「女神セレスだ。お前も声を聞いてるだろ」
「き、聞いてはいるけどさ。セレス様、もうそんな大きな姿で実体化できるようになったんですか?」
『ええ。全ては勇者の活躍によって、信仰が集まってきたためです』
なんか聖なるオーラ的なのをキラキラ見せているセレス。
おいジョン、何を祈ってるんだ。
女神が調子に乗るだろ!
そしてどうやら実体化はまだまだ長時間できないらしく、
『ちっ、時間切れですか。もっと信仰を集めないといけませんね』
「今舌打ちした?」
『してませーん! そう聞こえたとしたらきっとキスの音です! エアキッス!』
「苦しい言い訳だ……」
こうして俺たちはまた旅立つことになった。
今回は、傍から見るとあてのない旅だ。
「旅立つ必要はあるの? 王国は平和になったというのに」
残念そうなマリーナに、俺は告げる。
「王国だけが平和であっても、世界はいつ戦乱が起きるともわからない。俺はその芽を摘むために旅立つんだ」
「ジョナサン……! あなたは真の英雄だわ……!」
マリーナと国王がなんか感動している。
実は俺が元の世界に戻ったあと、全部を押し付けるためにジョンを強化する旅なんだけどな。
そして、どう動こうがすぐに新たなヒロイン、カイが出てくることだろう。
憎たらしい運命力だ。
俺はジョンを伴い、旅に出た。
この男、まだ4レベルになったばかりなので、基本的な技すら使えない。
基礎練はダメだ!
素振りもダメだ!
ジョンが多少戦えるようになるには何年も掛かってしまう!
思えば、原作のジョナサンも強くなるのはマリーナがNTRされて、そこから本来の騎士見習いとしてのルートを外れてからだった。
同じように、強さを手に入れるには人生の順風満帆なルートを外れねばならない!
「ってことで、不死王関連の洒落にならないイベントが起きてるところを探るぞ。どこに行くと思う? バイフンのところだ」
「全部喋ったし……!」
「そこでナルを回収していく。よく考えたら、情報収集とかに彼女の力が必要だからな」
「わ、分かった。君の好きにしていい」
まあ、問題はジョンが移動能力を持っていないので……。
「えっ!? 僕を背負うのかい!? 何を……うわああああああああああああ!!」
縮地ダーッシュ!!
人間の限界を遥かに超えた速度で、俺はジョンを背負ったまま、冒険者の町ポンドールを目指すのだった!
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