第71話 誕生! ニュージョナサン(本物)!
今こそ!
使い魔スキルを使う時!
なんとこのスキルだが、使用回数制限がある。
一回しか使えないんだな。
で、使い魔が死ぬとまた使えるようになる。
俺はこのスキルを用いて、魂の無くなった少年兵の肉体に……。
「ジョナサン(本物)の魂よ、肉体に宿れ! ツアーッ!!」
少年の頭を握り、裂帛の気合を込めた!
するとだ……。
『ああーっ! ぼ、僕の意識が引っ張られていく~!!』
俺の中にいた本物ジョナサンが、外に引きずり出されるではないか。
そしてスポンっと少年兵の肉体に収まった。
一瞬だけ間があり……。
今までずっと無反応だった少年兵が激しく咳き込んだ。
「ううっ! の、喉が……乾いて……!」
「お水です!!」
チエリがすかさず水を差し出した。
これを受け取り、少年兵が少しずつ飲んでいく。
「どうだ? 落ち着いた?」
「落ち着いた……」
ちょっと低めの、女性声優が少年声だしてるみたいな声色だ。
これはファンがつきそう。
「僕の体が自由に動く……。ずっと君の目を通して見ているだけだったのに……」
「おう。今まで魂のままの状態だったからな。どう? この周回で肉体を得た感想は」
「君が僕の体に宿るまでは、僕はその体に入ってたんだけどな」
そんなやり取りをしているのを、チエリが不思議そうに眺めているのだ。
「あのう……使い魔……なんですか? まるでお二人共、長い付き合いの友達みたいな……?」
「ま、似たようなもんだ」
ずっと俺の中にいたわけだからな。
そしてようやく、ジョナサンと俺が分かれた。
少年兵の肉体は腹が減っていたようで、差し出されたぶぶ漬けをサラサラと掻き込んでいる。
「正直、もっと食べたいくらいなんだけど……」
「いけません!」
チエリが眉を逆立てた。
「凄く空腹になってるときに、一気に食べたら死んじゃいますよ! 少しずつ増やしていきましょう。今回はそのお茶漬けと、それからお味噌汁で我慢してください!」
さすが魔法医、凄い説得力だ……。
しかし、ぶぶ漬けとナスの味噌汁なあ……。
途中、チエリは少年兵の治療の計画を立てるとかで外に出ていってしまった。
すっかり一流の魔法医の風格を漂わせている。
「凄いな。僕の戦ってきた世界では、チエリは一度もあんな顔を見せてくれなかった。やっぱり、君に導かれたから彼女は自分の道を見つけられたんだろうか」
「もともと才能があったんだろうが、NTRされたからダメになっただけだろうな……! あらゆるNTRは俺が叩き潰してきたからな。ジョナサンが見たことのない世界になっているのは当然だろう」
「ああ、うん。君は凄いな……。僕にはとてもできない……」
「気弱になるんじゃない!! いいか? 俺がこの世界を救った後!! ヒロインたちはどうなると思う? マリーナを筆頭にヒロイン全員、本来の主人公であるお前が引き受ける必要があるんだ! 俺は元の世界に戻ってNTRゲームを漁るからな……」
『勇者よ、本物の女体がいくらでも味わい放題なのにゲームとやらを優先するのですか!?』
「そうだ……」
『おかしいですよ勇者ー!! 何晴れやかな顔してるんですかー!! それは私が正さねばなりませーん!』
「ほっとけよー! 俺の趣味なんだからよー!!」
肩の上に出現したセレスがポカポカ叩いてくるのを、俺は片手でパシパシ受け止めるのだ。
ジョナサンはこれを見て、思わず吹き出したようだった。
「いや……なんというか、君は凄いなあ。セレス様とは僕も初めて会うけど、それでも女神とそんなに仲がいいなんて。僕は君こそが彼女たちとともに生きるべきだと思う……」
「お断りするぅ!!」
「なんで!?」
「こっちの世界にいたら叡智なゲームができないからだ……!! 俺は! こんなリアルで油を売っている余裕なんかないんだ! 日々、新進気鋭の同人作家たちが叡智なゲームを作って売り出している。俺は寿命を迎えるまでの間に、どれだけ遊べるだろうか? 一歩も立ち止まっている暇などなあい!!」
そんな満ち足りた生活に戻るため、今、俺は超越者との戦いに身を投じているのだ。
そう、全ては元の世界に帰るため!!
マリーナだけ、ちょっと相対していると自制心がグラッと来るが……。
彼女相手にはこのジョナサン(本物)を立てて防ぐとしよう。
「いつまでも僕をジョナサンと呼んでいたら不便じゃないかい? 君が今の世界ではジョナサンだろ?」
「言われてみれば……。どうする?」
「僕を別の名前呼ぶのがいいんじゃないだろうか。その……こっちの世界では、君が主役だから。好きにして欲しい」
「すぐに自罰的になるの良くないぞ! よし、じゃああんたはジョンだ。俺はジョナサンで、そしてジョン」
「ジョン。僕はジョン……。分かった。これなら呼ばれても、なんとなく反応できそうだし、いいと思う。それでジョナサン、僕をどうするつもりだ?」
「うむ、そのことなんだが……」
俺はステータスを確認してみる。
俺の中にあった剣術スキルが空っぽになっていた。
全て、使い魔スキルとともにジョンの中に流れ込んだようだ。
「ジョン、お前は俺がこれまで鍛えてきた剣術スキルを会得している。肉体のレベルが足りないから使いこなせないと思うが、俺たちの旅に同行し、鍛えられることで力を発揮できるようになるだろう」
「なんだって!? だ、だけど、この肉体からは大したパワーを感じない……。いや、疲れ果ててるからというのもあるだろうけど」
「だから、レベルだな。そいつのクラスは……」
ジョンは既に俺のパーティに加えられている。
クラスは兵士。
レベルは1だ。
初陣だったのだろう。
だが、とんでもない負け戦になり、ズタボロになってガイヴァンの街の片隅に転がる羽目になった。
持っている固有のスキルは一切なし。
ぶっちゃけ、モブの肉体だ。
だが、アクティブ化されているスキルが存在しないだけで、現在は使用不能な剣術スキルが幾つも灰色の文字で表記されている。
「君は……僕を鍛えようというのか」
「そういうこった。ここからは不死王編だ。帝国が停戦の呼びかけをしてきて、大陸を覆っていた戦乱が終わる。そこでついに、世界の裏側で暗躍していた不死王の軍勢が現れるってわけだ」
「不死王……!! あ、あんな化け物どもと、君は戦おうというのか!?」
「お前さんも戦うんだよ。安心しろ。めちゃくちゃ鍛えてやるからな!」
「う、うわ~っ」
ジョンが震え上がるのだった。
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