第70話 戦争は終わりだ!
ザイキーンに、モンカーの冠を持たせて帝国まで送ってやったのだった!
「ひいーっ! お、お前たち、本当にモンカーを殺したのか!? そんな、そんなことをして帝国が黙っているわけが……」
「帝国の抱えてる使徒は四人まで、俺達と戦って死んだ。そして武闘派の第三皇子も死んだなあ。帝国はあれかな? 自国の英雄と皇子が一人もいなくなるまで戦争を続けるつもりだったりする?」
「うぐううう」
唸るザイキーンなのだ。
「なんで……なんでこんなことになってしまったんだあああああ!! 小国をプチッと潰すはずだったのに! 帝国は半分の戦力と親族を失い、最大戦力の父上直属騎士まで四名失ったなんてえ! ただでさえ病で床に臥せっていた父上が、ショックで死んでしまう!」
「ペラペラ喋る男だなー」
俺は感心してしまった。
本日は仲間たちと一緒に、帝国の入口まで来ているのだ。
心を折られた兵士たちも一緒だね。
こいつらを転がしておいても、無駄飯を食うばかりで邪魔だからな。
モンカーに付き従った騎士たちは夢破れ、もはや出世の目はない。
その部下の兵士たちも何も美味しい目を見られず、完全に目が死んでいる。
これからの帝国は大変だなあ!
「では、俺はこれで! 達者でなザイキーン!」
ジョナサン一行はクールに去るぜ。
「驚きましたわね。敗残兵は自暴自棄になったり、略奪を行ったりするものでしょう? そんなこともなく大人しく本国に帰っていくなんて……。殺された皇子の敵討ちをするものはいませんでしたの?」
「結局、モンカーについてきていた連中は、みんな自分の利益のことしか考えてなかったんだろう。腹が座ってるやつは、今頃第一皇子にどうやってすり寄るか考えてるぞ。それにザイキーンはもう終わりだ。死んだ弟の冠を持って帰ってきたんだぞ。居場所なんてないだろう」
「そこまで読んでいましたのね……! 恐ろしい男……!」
いや、たまたまそうなっただけなんだけど……!
俺は盤面の上での戦闘はゲームでたくさん経験してきたが、交渉能力は全部アドリブだぞ!
カッとなって喋っているに過ぎない。
今回の戦争は本当に、たまたま上手く行ってよかった。
ほぼ全部、力によるゴリ押しだった。
やはり力。
力は全てを解決する。
帝国の入り口辺りまで、片道3日掛かった。
いやあ人間の歩みに合わせると遅い遅い。
帰りは一時間半なのにな!
縮地とかダッシュとか飛行を組み合わせて物凄い速さで帰ってきたぞ。
案の定、ガイヴァンに到着したら戦勝会は終わっており、解放軍はプロマスへ帰った後だった。
「旦那さん、お帰りなんし」
「あっ、留守中色々ありがとうなシルヴァ」
「いいえぇ。ガイヴァンはあちきの国でありんすから。それで、しばらくこちらでゆっくりと?」
「ああ。ちょっと休憩してから本国に帰る……」
「あら。ずっといてくださってもいいのに」
ずっといたら絆されて実っちゃうだろ!
とりあえず、ずっと戦争だ戦争だと走り回っていたうちのパーティの仲間たち。
みんなゆっくりと休んでもらうことにしたのだった。
「よーし、自堕落に過ごすぞ! 思えば、この世界に来てからずっと生き急いでいた。我ながら死ぬ気かと思うくらい休まずに戦い続けていたな……」
『私もそれがいいと思います。彼女たち全員と実りを作っていくためには、時間なんかいくらあっても足りませんからね!』
「作らないからね!?」
なお、ナルが俺を狙っている模様。
こいつ、盗賊スキルと運動スキルが高くなりすぎて、あらゆる場所に潜入し、俺に気づかれずに背後を取ってくるレベルになってるんだよな。
恐ろしい女だ。
戦闘力だけが無くて本当に良かった。
ナルを警戒しながら、街を練り歩く。
ガイヴァンの街の女たちに見つかっても、きゃあきゃあ騒がれるのでよろしくない。
俺はどこにいても、セレスの言う実りに追われることになるのだ……!
なお、現在は護衛としてチエリを連れている。
「チエリはカッとなって俺を襲ったりしないから安心だものな……」
「は、はい! そうですね。ソウデスネー」
どうして棒読みに?
『チエリ、私は応援しますよ。今ならプロレス技を使わせなければあなたでもいい勝負ができますから』
おのれ女神、敵だったか!!
というやり取りをしつつ、通りかかった街角。
倒れているやつがいるのである。
「おや? なんだこいつは」
「いけない! 行き倒れです!」
見た目は、鎧を身に着けた少年。
衰弱しきっているらしく、裏通りの壁と壁の間に背をつけて、俯いている。
チエリが彼に駆け寄り、呼吸を調べた。
「辛うじて息はしてますけど……危ない状態かも知れません……! ジョナサンさん!」
「おう! 久々に魔法医チエリの出陣だな!」
俺は行き倒れていた少年を担いで、シルヴァに用意してもらった宿舎に向かった。
大変広い、ロイヤルスイートルームを使わせてもらっているのだ。
そこに少年を寝かせる。
「よく見ると、鎧に帝国の紋章があるな。軍に参加してた少年兵か……いや、それなりに位が高そうだから、騎士見習いかも知れない。帰りそびれたかー」
「水を飲ませます! 外傷は……ないみたい」
チエリがテキパキと、少年の鎧を外していく。
もしや実は女子だったとか……。
『残念、男です!!』
「セレス、こういうところは便利だなあ。的中率100%の男女見分け」
『実りがありませんからね』
「おっ、なんか現実世界だと物議を醸しだしそうな事言ってるぞ、この女神」
『ちなみにその少年、戦争で意識を飛ばされたのか、魂が死んでいますよ。勿体ないですねえ。若い体なのに……。たくさんの実りをもたらしそうなのに』
「そこまで分かるの? じゃあ魂が無くなった体ってどうなるんだよ」
『それはもう、肉体が回復しても意識を取り戻すことはありません。新しい魂でも吹き込まない限りは……』
「ハハハ、そんなホイホイと新しい霊がその辺りに転がっているはずが……」
俺とセレス、ここでハッとする!!
「いたわ」
『いましたね』
実体化したセレスが俺の手の上にストンと飛び降りた。
彼女が指差すのは、俺の心臓。
そう。
そこにいるんだよな。
本物ジョナサンの魂が。
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