第69話 挟撃! モンカー皇子死す!!
さて、正面からは、ダイオン率いる騎士団+解放軍がウワーッと攻めて来る。
ド派手にデクストン団長が決めたので、みんな士気が高い。
「ええい、何をしている!! かの都市にいるザイキーンは虜囚になった王族の面汚し! いやいや、虜囚どころか、奴らと通じて帝国の玉座を狙っているに違いない!! この男を排除することで俺は皇帝へとさらに一歩近づけるというのに!!」
俺達が回った殿からは、わあわあと喚き立てる男の姿が見える。
帝国軍はガイヴァンを包囲しながら攻めるつもりだったのか、横に長く広がりつつあるなあ。
この片翼を、突っ込んできたデクストン団長が粉砕したわけだ。
そして今、この軍隊を率いるラグーン帝国第三皇子、モンカーの後頭部がここから見える。
なんで戦場で御輿に乗ってるんだあいつ。
「偉そうに見えるからかなあ? あと、あいつで間違いないよ! バイフンさんの情報で、モンカーの人となりとか口調とか全部分かってるから!」
「ナル、優秀~! じゃあ、一気に攻めるか」
そういうことになった。
俺たちの弱点として、範囲攻撃がない。
肉弾戦とか物理戦闘特化だからな。
なので、大規模な混乱を起こせないのが弱点と言えよう。
「ええ、ですから私がガイヴァンで新しい弾丸を仕入れましたわ」
「そう言えばヴェローナから報告を受けていたような……。花を摘んでいたのはこれを作るためだったとか?」
「はい。着弾と同時に大きな音と光を放ち、悪臭をばらまく衝撃弾。威力は一般的な弾と同じですけれどね。混乱をもたらせれば、あなたが活動しやすくなるのでしょう? 行きますわよ」
軍隊後方から、ヴェローナが狙いを定める。
モンカー皇子を撃てれば話が早いが、あれは恐らく厳重な防御の魔法によって守られていることだろう。
だからその近くを狙って……。
狙撃!
モンカーのすぐ横にいた兵士の頭がパアーンと爆ぜ、同時にスパパパパパパパーン!!と破裂音が響き渡る!
さらに兵士の金属鎧に反応して火花が飛び散り、さらにさらに刺激臭が立ち込める!
「ウグワーッ!!」「なんだこれウグワーッ!」「くせえーっ!」「殿下ご無事でくせえーっ!!」
「お前今俺のことを臭いと言ったのか!? ウグワーッなんだこの臭いーッ!?」
一発で大混乱だ!
殿から皇子までの辺りが完全に停止したぞ。
『ふーむ、次なるヒロインは魔法使いがほしいですね』
「やめろセレス、これ以上増やそうとするんじゃない……!! 行くぞっ!!」
俺は縮地で加速した。
アルシェが飛翔しながら続く。
ヴェローナはひたすら狙撃で援護。
チエリはほどほどの距離まで移動しつつ、状況に応じて回復魔法っと。
あちこちで、ヴェローナの炸裂弾が騒ぎを巻き起こしている。
前方から解放軍、側面から騎士団長と精鋭たち、後方から俺たち!
帝国軍は大混乱だ!
数ばかり多いから、前と後ろと横がつっかえると、勝手にドミノ倒しになったり動けなくなったり。
「ツアーッ! ツアーッ! ツアーッ!」
「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」
皇子への道を邪魔する騎士をチョップで排除しつつ、突き進む!
そして到達!
俺がチョップを浴びせかけると、魔法の結界が実体化してこれを防いだ!
モンカー皇子周辺は、やはり魔法によって守られている。
「な、なんだ貴様!? 後ろから現れたのか!?」
「いかにも。全ては俺の策だ。モンカー皇子よ、稀代の大軍師たるこの俺、ジョナサンの策略に嵌まった気分はどうだ?」
「ば、馬鹿なーっ!? なぜ軍師が最前線に!? だがその軍師とやらが我らの只中にいるならば好都合! やれ! やってしまえ!」
「はっ! 覚悟ーウグワーッ!」
真横から飛んできたアルシェが、飛び蹴りで騎士の一人を蹴っ飛ばしていった。
サキュバスのパワーは人間のそれを凌駕するので、騎士は紙くずみたいに吹っ飛んで遠くでバウンドして動かなくなる。
さらに他の騎士も、ヴェローナの狙撃で炸裂弾を喰らい、死なないまでも衝撃と光と臭いで動けなくなる。
「うわっ、本当に臭いな!! ヴェローナもう撃つなー! 俺が臭くてかなわんから!!」
「あー、あれダメね。あの人形女、目はいいけど耳はそこまでよくないから、こっちの声は聞こえてないわ。バンバン撃ってくるわよ」
「くそー、さっさと決着つけなきゃだめかあ」
味方の援護射撃で、こっちが臭い的にピンチだ。
「ということで首をもらうぞモンカー!」
「な、何を……! 俺は最強の結界によって守られ……」
「浸透勁ツアーッ!!」
「ウグワーッ!?」
モンカー、俺の浸透勁崩拳を震脚付きで真っ向から食らって、結界の中で破裂!!
死!!
「うわーっ!! 殿下がやられたー!!」
「も、もうだめだーっ!!」
周囲の騎士たちが精神的ショックからか、へなへなと崩れ落ちる。
これに気づいた兵士たちが振り返り、状況を確認し、呆然と立ち尽くす。
ざわめきとどよめきが、戦場に広がっていく。
守る主を失った魔法の結界は消えていき、俺は地面におちていたモンカー皇子の冠を持ち上げた。
血に濡れた冠をかざしながら……。
あっ、ここは高さが足りないな。
「ちょっとアルシェ、俺を抱えて飛んで」
「えーっ!? なんであたしがそんなことしなきゃなんないのよー!! チエリと違ってあんた重そうだからいやなんだけど!」
「頼む! 頼むって! 直接の行為じゃないならちょっと精気吸わせてやるから! 上からモンカー死んだぞって見せつけたほうが戦争すぐ終わるから!」
「ほんと? ほんとに精気くれるの? そっかー。じゃあまあ、いっかあ」
俺の襟首を掴んだアルシェが、「ふんぬー!」と飛び上がる。
襟を掴まれてたら、運ばれていく猫のような状態になってしまうではないか。
俺はぶらーんとぶら下げられながら、血塗られたモンカー皇子の冠をあちこちに見せつけつつ戦場を飛び回るのだった。
うーん、決まらないなあ……。
なお、この軍隊はモンカー皇子派閥である。
その長であるモンカーが死んだ以上、彼らは戦う意味もモチベーションもない。
あちこちで指揮をしていた騎士たちはへなへなと崩れ落ち、あっという間に戦いは終わりを告げたのだった。
後世に、ガイヴァンの半日戦争と呼ばれることになる、歴史上稀に見る帝国の負け戦がこれである!
多分!
そう言い伝えられるんじゃないかな!
「俺も軍師として名を馳せるかなあ」
『軍師は浸透勁で結界越しに皇子を血の袋に変えたりしないんじゃないですかね?』
もっともなツッコミをしてくるセレスなのだった。
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




