第65話 返事が来たぞ!!
花畑を世話する人々におずおずと話しかけ、仲間に入れてもらい、一緒に花の世話をするヴェローナ。
……という大変心温まる光景をニコニコしながら眺めていたら、こっちに気付いたヴェローナに大変怒られたのだった。
いやあ、ヒロインたちの思わぬ顔が見えて、俺は大変うれしい。
「花は特別ですわ。だって、そこにあるだけで価値がありますもの。美しく咲いていることそのものが、花という存在なのです」
「ほほーん」
「んもーっ!! ジョナサンに見られたのは最大の失敗でしたわねー!」
「ヴェローナさん、まだお手入れしていくかい?」
「あ、はい! やらせていただきますわ!」
いそいそと花畑に戻っていくヴェローナなのだった。
乙女だー。
『勇者よ、私は彼女を見くびっていたようです。今、あなたとともにいる女性たちの中で、ヴェローナとナルが最も実りを与えやすい状態にありますよ』
「な、なんだってー!!」
『なお、次点でシルヴァです』
「ちっくしょう!! ヒロインに加えられちまってやがる!!」
だが、シルヴァという立場上、彼女と夜をともにできる男は極めて限られている。
帝国と相対しているなら、そういう偉い男が来ることは少ないだろう。
ひとまず安全と言えよう。
いや、お仕事として夜を過ごすならそれはNTRではないのではないか……?
「だが、シルヴァが実りを与えやすいというのはどういう意味で?」
『彼女は勇者の戦いぶりを全て見ていたのです。そして強い男に惚れたというわけですね。んもー、女の敵ですねえ勇者よ!』
「ぐうう、嬉しくない」
『強情を張らずに実りを与えてしまえばいいのですよ……楽になってしまいましょう』
「悪魔の囁きがあ!」
『失敬な! 私は女神です!』
むきーっと実体化した三頭身くらいのセレスが、俺の頭にくっついてポカポカ叩いてきた。
うわーっ、もうそこまで実体化できるように!
だが、常に俺に誘惑を与えてくる様は悪魔そのものなのだよなあ。
その後、またナルに発見されて付きまとわれるなどした。
「ジョナサーン! ジョナサンったらー!」
「頭にセレス、腕にナルがぶら下がっている……! 荷物を抱えたままチエリを見に行こう」
色街まで来ると、お仕事前のお姉様がたに、チエリが護身術を教えているではないか。
「腕力では勝てませんから、基本は逃げるんです。でもそれも難しいときは間合いをこう近づけてですね、こう、ポカポカと顔を狙って」
初心者向けチェーンパンチ講座だ!
だが、初心者のパンチなど通用しない。
相手が間近で顔面狙いの攻撃を、思わず防ごうと顔の前に手をかざさせるのが狙いなのだ。
本命は、ステップしている足!
これであわよくば金的を狙う。
足を蹴り上げるのではなく、ステップして高く上げている膝が当たるのを期待する、当たればラッキー大逆転くらいのものなんだと。
なお、チエリはこれを狙って行える……。
恐ろしい。
すっかり魔法医から格闘家になりつつあるな……。
まあ、俺同様に自認は格闘家ではないのだろうが。
彼女も俺に気づき、嬉しそうに手を振ってきた。
「うんうん、じゃあ俺も稽古をつけてやろう……」
「あらいい男!」「やっぱりジョナサン様は違うわねー」「今夜あたしとどう?」「あたしが一夜をともにするのよー!」
あーっ!
俺を取り合ってお姉様方がわいわいと賑やかになり始めた!
チエリが後ろでぴょんぴょん飛び跳ねている。
圧倒されてしまったなあ。
だが、そんなお姉様方が突如、ザーッとモーセの十戒のごとく二手に別れた。
道ができ、底を歩いてくるのはシルヴァだ。
やはり彼女、色街でも飛び抜けた美貌だと思う。
「ジョナサン様。帝国からの返答がきやんした」
「あ、もう? 早かったなあ」
シルヴァに案内されて、街の入口に向かう。
するとそこには、馬に乗った騎士がいた。
普段着でやって来た俺を見て、騎士が目を細める。
「貴公が反逆者どもを統率する首魁、ジョナサンか?」
「解放軍のリーダーの友達をやっているぞ。ジョナサンです」
騎士は俺を睨みつけると……。
「停戦交渉の返答はこれだ! はあーっ!!」
剣を抜き打ちで放った!
「そう来ると思ったツアーッ!!」
チョップで迎え撃つ!
俺の称号、破城が発動!
無生物へのダメージが強化され……一方的に剣が叩き割られた。
「なっ、なにぃーっ!! 我が剣がたかが手刀に!!」
黒槍の使徒の槍すら砕いた俺のチョップだぞ。
たかが業物程度のなまくらではどうにもできまい。
「やる気だな? 受けて立つぞ!」
「ちぃーっ!!」
騎士は慌てて馬を走らせた。
「モンカー皇子は、反逆者どもを引き込んだ裏切り者、ザイキーンを討つと宣言された! 逆賊どもめ! じきにお前たちの最期が来るぞ!!」
「あー、そういう理屈で攻めることにしたのね!!」
最期に分かりやすい説明をありがとう。
そしてさようなら!!
俺は縮地で騎士に追いつくと、その場で飛び上がってドロップキック!
「ウグワーッ!!」
全力疾走する馬上から、騎士が叩き落された。
ゴロンゴロン転がっていく。
「じゃあ馬はもらうね。そしてとどめだツアーっ!」
遠当て!
転がっていく騎士にぶち当てたら、ピチューンと砕けた。
「ウグワーッ!!」
「帝国からの伝言はもらったからな。そしていきなり切りつけてきた相手を生かして帰すほど俺はお人好しではないのだ」
帰還帰還!
そうしたら、真横に一瞬風が吹き……。
いつの間にかナルが並走していた。
「ジョナサンどうしたの!? また戦争が起きちゃう感じ?」
「そんな感じだ。ナル、頼みがある。デクストン団長を呼んできてくれ」
「えっ、じゃあ本格的な戦争になっちゃう!? 分かった……!」
ナルは頷くと、また走り出した。
その姿が消える。
視認できないほどの速度で走ったわけである。
技巧神に鍛えられた運動スキルの極致と言えよう。
縮地とはまた違う超高速移動、あまりの速度に、空間をステップしながら移動する……。
「天狗の抜け穴か。運動って極まると神通力になるんだな……」
『技巧神イサルデの技ですよあれ。人間ができるんですねえ……』
俺とセレスは、呆れ半分、感心半分なのだった。
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