第64話 お前は人質だ!
ザイキーンを人質とし、帝国と停戦交渉をすることにした。
「いい考えだね! 帝国だってきっといつまでも戦争はしたくないでしょ」
ナルは楽観的だが、対するシルヴァは「そう上手く行くとは思いやしませんね」と悲観的だ。
「その心は?」
「ラグーン帝国には三名の皇子がおるのでありんす。故に、ザイキーン皇子の失敗は即ち、他の二皇子にとっての皇位継承が近づくことを意味するんでありんすよ」
「ははあ、なるほど。ということはザイキーンの様子を知らせると、暗殺とかが来る可能性もあると」
「ええ。むしろ他の二皇子がプロパガンダを行い、帝国の戦意を高めてこのガイヴァンをザイキーンもろとも……」
爆発するような手つきをするシルヴァなのだった。
なるほどなあ。
ここで俺、ハッとする。
「シルヴァ! なんで新しいヒロインみたいな顔をしてここにいるんだ! ヒロイン認定されたらヤバいだろ! 帰ってもらいたい!」
「ジョナサン様、いけずでありんすねえ……」
ちょっと不服そうな顔をしつつ、シルヴァは去っていったのだった。
うーむ、今のパーティメンバーには無い、大人の色気がある……。
こいつはヤバいぞ。
『いい実りを作り出せる体をしていましたねー! 勇者が恐ろしい速度でガイヴァンを解放していなければ、第二皇子の実りを得ていたでしょうねえ』
「なにーっ!! 早すぎた結果、俺はそっち方面のチャンスを掴んでしまったと言うのかー!!」
ショックを受ける俺!
だが、シルヴァがサブヒロインに昇格する場合、他のサブヒロインとは違って安心できるポイントがある。
彼女はガイヴァンの顔役にして、色街の花魁みたいなポジションだ。
傾国、傾城の女というわけだな。
彼女に言い寄ったザイキーンはつれなくされたことで、男のプライドを傷つけられてガイヴァン占領に踏み切った。
つまり、国に見合うほどの価値がある女だとされている。
これは……。
「帝国の二皇子を釣れるのではないか」
『勇者よ、良からぬことを企んでいますね!? それは実りには繋がらないので、大人しくシルヴァに実りを与えればいいのです!』
「ノーノー! そう言う関係になるとNTRは発展するの! 断じてノー!!」
「まーたジョナサンがセレス様と言い合ってる。ほんと仲良しだなあ」
別に仲良しではない!
いや、一心同体ではある。
とりあえず、変な企みは辞めて、一旦ザイキーンというカードを使って帝国と交渉してみようということになった。
手紙をしたため、牢獄に行ってザイキーンの髪を切って貼り付けて……。
「ぼ、僕を外に出せえ!! このザイキーン様を閉じ込めておくなんて、後になったらひどいことになるぞ!!」
牢獄の中でギャンギャン吠えるザイキーンである。
今までさんざん好き勝手やってくれたくせになあ。
「お前を使って、帝国に停戦交渉をしてみるのだ。これで応じれば良し。応じなければザイキーン、お前は用無しになる……」
俺がニタリと笑うと、皇子は真っ青になった。
「そ、そ、そんなことをしても無駄だあ! ラグーン帝国は止まらないぞ! 僕一人を捕らえた所で意味はない! いや、身代金は取れると思うぞ! その金を受け取った後、帝国にすり潰されるがいい! ひゃははははは!」
「まあまあ、やってみないと分からないから。そいうことで、しばらく牢獄暮らしをお楽しみください」
「こ、後悔するぞー!! いいか! コウセイン兄上やモンカーに知られたら、僕の命を狙ってくるだけで、お前らの身が危なくなるんだからなー!!」
おっ、やっぱりか!
ザイキーン的には、大々的に自分をカードに使われると命が危なくなるのだ。
だが、これは帝国の動揺を誘うこともできるだろう。
俺は手紙を大量に用意し、色々なルートを使って帝国に流した。
なお、ザイキーンの髪の毛付きの手紙はアルシェに託し、直接帝国に届けてもらうことにしたのだった。
「いいかアルシェ、NTRされてはならんぞ」
「何いってんの!?」
むちゃくちゃ呆れられたが、これで注意を喚起できたことであろう。
俺は女の子たちとガイヴァン観光を楽しみつつ、アルシェの帰還を待つことにした。
ナルを連れて、色街を歩く。
おっ、なんかチエリが色っぽいお姉様に囲まれて、ちやほやされているぞ!!
「チエリ姐さん! あの技を教えておくれよ!」「あいつはホントに横暴なやつでねえ……。デカブツをチエリ姐さんがボッコボコにした時!」「胸がスーッとしたー!」「あんまり気分が良くてイッちゃうかと思った!」
「あひー、姐さんはやめてくださいぃ~!」
チエリを姐さん呼び!?
「だってチエリ凄かったもんねえ! いつの間にあんなに強くなったんだろう。ヴェローナもびっくりしてたよ!」
「うむ、ちょっと夢の中でな……」
「夢の中あ? それって、ジョナサンがいつの間にかめちゃめちゃ強くなってるのと同じような感じ?」
同じシステムだぞ。
俺もチエリも格闘スキルを持っているからな。
ヴェローナはヴェローナで、薬師たちの集まりに参加して、様々な薬の説明を受けている。
「人間たちが作り出す薬は、グーテン様も興味を持っておいでですの。それに……チエリが戦っている間、少しでも癒やしの手段を持つ者がいたほうがいいでしょう?」
「ほほー!」
真剣な表情で説明を聞くヴェローナなのだ。
今まで見たことのない彼女の姿だなあ。
俺たちのに仲間意識を持ってくれたということではないか。
「ジョナサンがニヤニヤしてる!」
「人の変化というのを感じる……。チョロインではあるが、やっぱりフレンドリーになってくれると嬉しいもんな」
「えー! ボクはずーっとジョナサンにフレンドリーなのに。セレス様だって、いつでもボクに寝室に来ていいよって言ってるし……」
「いけません!!」
なんてことを言うんだ女神!
だが、ナルはこの機会に俺との仲を近づけようとしているらしく……。
アルシェが帰ってくるまでの間、トイレまで付きまとわれることになったのだった!
大きいのをする時に鍵開けして入ってくるんじゃありません!
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