第63話 ガイヴァンの解放!
使徒が主要な兵士たちをぶっ殺してしまったので、ガイヴァンの情勢は一気に変わった。
偉そうにしていた兵士たちが、次々にやられていく!
ガイヴァンの民たちが武器を持って立ち上がったのだ!
「ええい! 退け! 退けー!! 貴様らの如き有象無象が幾ら集まっても無駄だあ!!」
うおー!
3mくらいある巨漢将軍!
でかすぎて総督府に入れなかったから外にいたらしいな。
お陰で助かったようだが。
「させませーん! 柔拳の神様、私にご加護を~!」
その将軍の前に立ちふさがるチエリ!
「んん~~? なんだお前は~? 小さい女め! 俺はもっと色々でかい女が好み……」
「えいやー!」
チエリが一瞬で巨漢将軍の間合いに入り込んだ!
夢で練習してたチェーンパンチだな。
ポコポコポコっと打撃が当たり、最初は笑っていた巨漢将軍。
周囲もハラハラして見守っていたが、チェーンパンチ一秒目の五発が終わったあたりで、巨漢将軍が一歩下がった。
「あれっ!?」
チエリのチェーンパンチには、全てショックの魔法が乗っている。
このショックも、魔法医スキルの上昇に合わせて極めて強くなっている。
つまりー。
「えいややややややー!」
ステップでどんどん前進しながら、巨体の将軍を押し込んでいくチエリ!
「ウグワッ! ウグワウグワウグワウグワッ、ちょ、ちょっと待ってウグワーッ!!」
腹から全身に回るショックに、将軍が膝を折った。
そうしたらお大事様がちょうどチエリの膝の届く高さに。
彼女がステップを踏むと、膝がコーン! と当たった!
「ウグワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」
巨漢将軍の目がぐるりと裏返り……。
倒れかけたところにチェーンパンチの連打が浴びせかけられ、巨漢はボッコボコになってぶっ倒れた。
白目をむいて痙攣しているではないか。
「やりましたあー!」
チエリのガッツポーズに、色街のお姉さんたちがウワーッと大盛り上がりした。
小柄な可愛い子が、いけすかない巨漢の帝国人をぶちのめしたんだから当然であろう。
帝国兵たちはこれを見てすっかり腰が退けてしまい、ひいひい言いながら逃げ出した。
ガイヴァンから飛び出て、帝国を目指すんだろう。
着の身着のまま頑張って逃げていただきたい。
俺は去るものは追わないぞ、間男以外はな。
こうしてガイヴァンは完全に解放された。
なんと、俺達が入国してから三時間程度の出来事だ!
「自分は仲間を呼んで来ます。プロマスの兵士を百人ばかり派遣できれば、ガイヴァンの守りも固められるでしょう」
解放軍リーダーはそう告げると、馬に乗って去っていった。
今回の解放劇を見て、ガイヴァン側でも「うちらもやれるんじゃね?」みたいな機運が高まってきている。
チエリの活躍が利いたなー。
そして夜。
俺達を歓待するパーティが始まった。
「茶碗蒸しでえす」
花街のお姉さんがだしてくれたお料理を見て、俺は腰を抜かすところだった。
器が和風の陶器だし、中身がちょっと緩めのきちんとした茶碗蒸しだし!!
ま、ま、まさかこの都市国家、イメージは日本の色街とかなのか……!?
そんな事を考えながら、俺は正統な茶碗蒸しの食べ方を実行する。
ぐるぐるかき回して、ずぞぞーっと全部飲むのだ。
うまーい。
これはとてもいい茶碗蒸し。
出てくる料理は、明らかに懐石である!
うーん、ファンタジー世界の町並みなのに、食事風景だけが高級和風料理店!!
黒豆煮、ハモの焼いたやつ、鯖寿司、賀茂なすの田楽、山椒の葉の佃煮などが……。
待て待て待て待て!!
京料理じゃんか!!
いや、実に美味いんだけどさ。
この世界、食に余裕がある地域の食べ物は実に美味しい。
まさに本場の美味さだったり、和食チェーン店の分かりやすいガッツリとした美味しさだったりするのだ。
ガイヴァンのそれは、本場高級店の味わいである。
「ううっ、ぼ、ボクにはこの美味しさは難しい……! 確かに美味しいけどさ、こう、ボクはもっとガツガツいけるのが……」
「マナーとかあるんですよね。先生の所で教わっておいて良かったー。ナル、私が教えてあげるので……」
「人間の作る料理もレベルが高いですわね……! 五将軍のギガケルプ様のお料理に匹敵しますわ」
「あたし、人間の精気でいいんだけどたまには気分転換で食事もすんのよね。んー、なかなかンマイんじゃない?」
わいわいと賑やかなパーティだが、いかんせん料理が京料理なんで、落ち着いた盛り上がりだ!
酒も出たが日本酒だ!
「解放者ジョナサンと、お仲間の方々! よろしいでありんすか?」
なんか雅な声が掛かった。
なんだなんだ。
そこには、豪華に着飾って真っ白な肩を剥き出しにした感じの女性が立っていた。
花魁だ!
結い上げた髪の色は黒。
そこに色とりどりのかんざしとかがあしらわれていて、大変見栄えがする。
「あちきはガイヴァンの一党を率いております、シルヴァと申すものでありんす。この度は、あちきたちを助けてくださりありがとうございました」
膝をつき、俺達に礼をするシルヴァ。
つまり、ガイヴァンの指導者に当たるお人らしい。
話を聞いてみたら、ザイキーン皇子がシルヴァに惚れ込み、落とそうとしたがけんもほろろに振られ、怒り狂ってガイヴァンを侵略したとか。
しょうもねえ!
で、総督府に囚われてザイキーン王子の愛人にさせられていたところに、色々あって解放軍が到着!
俺達が大暴れしてガイヴァン解放!
となったようなのだった。
「そうかそうか。無事で良かった。ところで君はヒロインではないよな?」
「何を仰っておいでで?」
きょとんとするシルヴァ。
ヒロインが増えられては困るだけだよ!!
『いいではありませんか、いいではありませんか。実りが増えますよ。私は今、勇者の賢者モードとやらを解除する方法を探っているのです。これができれば勇者は実りをばらまき放題ですね』
「おい馬鹿セレスやめろ」
この女神、とんでもないことを企んでやがった!
「ジョナサン様、誰かと話してらっしゃりますか?」
「ああいや。そう言えばザイキーン皇子は?」
「牢獄に入れていますわ。ジョナサン様のご命令があらば、このしょうもない男の首を飛ばす役割はあちきが……」
「いやいやいや」
俺は考える。
「ザイキーン皇子を人質にして、停戦交渉をしよう」
男ジョナサン、ツアーッだけが能ではないのである。
数々の戦略ゲームで慣らした後方腕組み軍師でもある。
そもそも戦争編は帝国が手を引いてくれれば完結するので、サクッと終わらせる方向を目指すのだ。
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