第52話 磨き上げろ、新技!
岩山に展開していた帝国軍部隊は、大打撃を受けて撤退したらしい。
戦略になる前に戦術で潰す作戦、まずは成功である。
だが、ラグーン帝国はでかい。
とにかくでかい。
しかも征服した土地の人間を徴兵して戦力にし、さらに侵略を進めてこようとする。
ある場所では、同じ国の人間同士が殺し合ったりさせられたらしいぞ。
はー、クソ野郎国家じゃないか!
「これ、向こうの部隊を潰してても埒が明かんな。帝国の人間じゃなくて、征服された国の人間かも知れないらしい」
「えーっ! あ、あまりにもひどすぎます!! ゆ、許せません!!」
温厚なチエリが正義の怒りを燃やしている!
でも本当にひどい話ではある。
そして戦争を生業にする国家としては、大変頭の良いやり方なのだろう。
つまり!
部隊に紛れている帝国の人間を狙って仕留めねばならない!
「標的が分かれば、私が一撃で仕留めてみせますわよ。もっとも、ただの人間の部隊など相手にもなりませんけれど」
リビングドールであるヴェローナには、サキュバスのアルシェ同様に普通の武器が通じにくかったりするもんな。
だが、それでは帝国の尖兵となった他国の人が傷つくばかりである!
「どうするか! ここはコネを使うべきなんじゃないか」
「ジョナサンが凄く頭の良さそうなこと言ってる……」
「何気にこいつ、頭がキレるわよ。特にあんたたちの身を守ることに関しては、不死王を超越するくらいの策謀を巡らせるでしょ?」
「失敬な。グーテン様はジョナサンに負けていませんわよ!!」
「言葉のあやじゃない。むきになってー! ってかヴェローナ、あんた不死王とジョナサンどっちが好きなのよー」
「そういうのじゃありませんわよ!! 殺しますわよー!!」
「うわーっ! あんたのはシャレになんないから銃を向けるんじゃないわよーっ!!」
「怪我したら回復してあげますからねー」
女子たちが賑やかである。
岩山を下山中とはとても思えない。
『それで勇者よ、何をするつもりなのですか?』
「盗賊ギルドに貸しを返してもらうんだ。俺達が帝国の間諜を全滅させて、彼らは一切犠牲を出さずにいられたわけだからな……」
『よく覚えていますねえー。でも、ポンドールの街は遠いのでしょう? 戦争中にそこまで移動ができますか?』
「俺だけなら縮地で行けるが……女子を城に置いていくと不思議な力が働いてNTRフラグが立つ」
『断言しましたね。ヴェローナもアルシェも強いから大丈夫ではありませんか?』
「不思議な力が働いて、実力があるのにNTRされるんだよ! だから全員連れ回さないといけないの! そうだな。ちょっと相手の本隊に大打撃を与えて、混乱させた上でデクストン団長に許可をもらおう」
『本隊に大打撃を与えられるなら、策を弄する必要は無いのでは……?』
「今日のセレスはやたら冷静に突っ込んでくるなあ」
岩山を降りきったので、一旦城に戻りつつ説明する。
「ぶっちゃけ、俺とヴェローナとアルシェがいれば、相手の数が多かろうと高レベルのキャラがいない限りは絶対に勝てるのね。後詰めでチエリがいればダメージすら回復できるし、不意打ちはナルが先に気付くから防げるし」
『勝てるではありませんかー』
「勝てるけど、倒す相手は征服された土地の国民なわけよ。自国にいたら、実りをバンバン生み出してるはずだった人たちだぞ」
『あーっ! なるほど! 実りのもとを無為に散らすのはとてももったいないです!!』
分かってくれたか!
ということで。
壊滅的打撃というのは、支配した国の連中を生存させ、戦わせている帝国人を皆殺しにする事を言うのである!!
だが、帝国も伊達に広い範囲を征服してはいない。
幾つか部隊を潰した所で、さらにどんどん他国の兵士を使って軍隊を作り出すことだろう。
これでは、帝国がダメージを受けないのでよろしくない。
向こうはいつまでも戦争ができる。
それに対して、レイク王国は自国の民で軍を構成せねばならないので疲弊していくのだ!
道すがら俺の考えを話したら、ナルとチエリがポカーンとした。
「はえー、凄く考えてるんだあ」
「ジョナサンさん、知略も得意なの本当にすごいですー」
それほどでもない。
何せ、この異世界NTRパルメディア。
タクティクスパートがあるのだ!
抜きゲーに余計なものを追加するんじゃない!!
お陰で、この戦争がどう進んでも後味が悪くなるというのを知ってしまっている俺である。
ならば、根幹から原作ストーリーの戦争をぶち壊してやろうではないか。
ヴェローナが仲間になったことだし、ナルにスポッターをしてもらい、帝国人の偉そうなやつだけを狙撃する。
これだ。
この作戦、最重要なポジションにいるのはナルである。
俺とアルシェが前線で兵士を足止めしているうちに、作戦を終える。
これだ。
これで行こう。
城の前を素通りし、視認できるほどの場所に陣を敷き、明らかに喧嘩を売っている帝国軍にずかずか近づく俺。
「なんだなんだ」「一人でずんずん歩いてくるぞ!」「あいつ正気か!?」「おい止まれ止まれ!」「死ぬぞ!」
「ツアーッ!」
縮地でいきなり接敵ざま、被征服者な兵士を手加減チョップ!
「ウグワーッ!」
兵士はぶっ倒れた!
失神しているが、これは強烈な打撃を受けて脳震盪とか起こしたのだろう。
俺が本気なら真っ二つだから、これは素晴らしく手加減しているのだ。
「ななな、なんだーっ!?」「一人で大暴れしてるぞ!!」「しょ、正気かーっ!?」「おいやめろやめろ!」「死ぬぞーっ!!」
大騒ぎになる!
俺を取り囲むように兵士が集まってくるのだが……。
その一部が突然へなへなと腰砕けになった。
アルシェに精気を抜かれたのだ。
「あー、そんなに悪くない精気だわねこれ。ちょっとストックしとこ……。後でちびちび味わわなくちゃ」
こうして暴れ始めた、俺とアルシェ。
途中でサキュバスの姿も現したので、敵軍は大騒ぎになった。
後ろに隠れていた帝国の将軍が顔を出す。
まんまとおびき出されたな!
作戦開始だ!
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