第49話 宣戦布告の使者は、帝国の第二皇子!!
俺が寝ていたら、夢の中にジョナサンがいたのだった。
「どうよ。元気?」
「なんだか君が運命に抗うというか、運命を押し戻しているのを見たら、うじうじしているのが馬鹿らしくなってきて……」
「そうだろうそうだろう。毎日大変だが、NTRを爆砕するのはやりがいがあっていいぞ。俺が動かなければ一瞬でNTRフラグが立つからな」
「君は凄いな……。僕も見習わなくちゃいけない」
そんな友情めいたやり取りをしていたら、夢の中だというのにマスクを被った上半身裸、下半身は派手なタイツのマッチョな男が近づいてくるではないか。
なんだなんだ。
『俺だーっ!!』
「げえっ、マスク・ド・オクタマ!!」
プロレスの神が夢の中にまで出張か。
だが好都合である。
「オクタマ、流石に教わった二つの技だけでは限界が出てきた。新しい技を教えてくれ!」
『ほう』
オクタマがじっと俺を見た。
そして頷く。
『次のステップへ進むための身体づくりはできているようだな。一回りデカくなっている』
「本来僕の体なのに、僕が知らない体格になってる……」
気にするな、ジョナサン(本物)!
『では、夢の中で伝授する。実践で使いつつ、己のものとしていくがいい! まずは体で食らって覚えろ! うおおお、エアプレーンスピン!!』
「ウグワーッ!!」
肩車の要領で担ぎ上げ、回転させてから投げ飛ばす!
ここからボディスラムのように叩きつけたりするのだが、実戦版はまさに飛行機のように投擲するのだ!
回転させられた相手は三半規管がワヤになるため、飛行能力があってもまともに飛べなくなる。
なるほど……!
恐るべき技だ!
しっかり食らって覚えたぞ。
『そして足4の字固めだ!』
「ウグワーッ!?」
どうやら、概念すらも絡め取る関節技の一つらしく。
相手に足の有無、足の本数、骨の有無、実体の有無、サイズの大小関係なく足4の字固めに持っていき、苦痛を与える技なのだ!
とんでもないな……。
大きさも無視するの?
地面を叩いて威力を向上させる方法も学んだ。
ジョナサン(本物)で実験したら、「ウグワーッ!」とのたうち苦しんでいたので効果は抜群だ!
『ではさらばだ我が弟子よ。お前の実力がまた上がった時、俺はやって来るだろう!』
マスク・ド・オクタマのでかい背中が遠ざかっていった。
眼の前には、技をかけられて白目をむいているジョナサン(本物)が転がっているばかり。
「よし、俺は強くなった!!」
そんな実感とともに、俺は目覚めたのだった。
すると、扉がドンドンドン! と激しく叩かれているではないか!
「ジョナサンさん! 大変! 大変ですよー!! 今日はオフだからってずっと寝てらっしゃいましたけど! その間に大変なことが起きてますよー!!」
「なんだなんだ」
俺は寝起きは大変いい方なので、スパッと起き上がって、扉に向かった。
チエリがいる。
「どうしたんだチエリ。まだ俺は夢の中でパワーアップした余韻に浸っていたいのだが」
「ジョナサンさんが何言ってるかわからないのはいつもどおりですけど! とにかく大変なんです! 来てください!」
「まだ寝間着で……」
「きゃーっ! パンツ一丁! は、は、早く何か着てください!!」
チエリが急かすからじゃないか。
『賢者モードと言いながら、朝は元気ではありませんか』
「ジョナサンの肉体の生理現象だな。実りは与えないぞ」
『ちえー。減るものじゃなし、少しくらいいいではありませんか』
隙を見せると、俺を叡智な展開に誘う豊穣の女神セレスなのだった。
彼女にごちゃごちゃ言われつつ、騎士としての訓練服に着替える。
ジョナサンはストイックな男だったらしく、訓練服と礼服くらいしか持っていないのだ。
まあ、訓練服は同じものを何着も持ってるんだが。
なお、俺がサイズアップしたので服は一式新しいのに替えてもらっているぞ。
「よし、案内してくれ」
「はい!」
途中、厨房の近くに寄って賄いの余りをもらう。
焦げたパンに肉や野菜の切れ端を挟んだやつだ。
味付けはシンプルな塩とビネガーとピクルス。
腹が減ってるから美味い美味い。
ミルクももらってグビグビ飲む。
あれっ!?
この世界に来てから初めて、ファンタジーらしい食事をしたぞ!?
そもそもこの世界、こんな無骨なパンが存在したのか……。
炊きたての白米ばかり食ってたからな。
飲み終わったミルクのマグカップをぶら下げたまま、チエリとともにやって来た謁見の間。
凄い人だかりだ。
城中の人間が集まってるんじゃないか?
見覚えのある背中を幾つか見つけた。
デクストン団長とダイオンだ。
「そう言えばナルは?」
「まだ寝ています」
「そっかー」
「その声はジョナサンじゃねえか! なんでマグカップ持ってるんだ?」
「おおジョナサン。いいところに来たな。厄介な話になってきたぞ」
この他にも騎士たちが集まって野次馬をしている。
「一体何があったって言うんですか?」
「帝国だ」
団長が怖い顔をした。
温厚な団長が怒っているな。
「帝国からの使者が、わざわざ宣戦布告をしに来たんだ」
「なるほどー」
「くそーっ、あのニヤけた野郎の面、今すぐぶっ飛ばしてやりたいぜ!!」
ダイオンが拳と拳を打ち合わせて唸っている。
やればいいではないか。
ここで使者を倒し、情報を吐かせたらこちらから進軍すればいい。
以前のレイク王国の戦力では難しかったが、今やこの国には、団長だけではない特別な戦力がいるからな。
俺とダイオンとヴェローナとサキュバスだ。
多分、一人が一軍に匹敵する。
やれると思うんだけどなあ。
だが、そこまで戦力が増大していることを団長もダイオンも知らないので、ごくごく常識的な判断をしてしまっているのだ。
では、そんな二人を苛つかせている使者とは誰か?
俺は興味を惹かれた。
謁見の間で、使者がやり取りをしているようだが……。
人が多くてちょっと見えないな。
「チエリ、ちょっと行ってくる」
「行ってくるって……ジョナサンさーん!?」
俺は二段ジャンプで天井まで飛び上がり、張り付いた。
軽気功を利用して、天井をサカサカ這いながら謁見の間に入る。
国王とマリーナが使者と向かい合っているな。
使者を護衛する帝国の兵士たちと、国王とマリーナを守る兵士たちが睨み合っている。
その使者というのは……。
「ということでぇ~! レイク王国の至宝マリーナ姫が、この僕のお嫁さんになるならぁ~! 侵略するのは勘弁してあげようって、そう言う話になっているのさ~!」
バカ王子っぽいやつがいる!!
マリーナをNTRするつもりだな!?
この野郎っ!!
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