第46話 色っぽい場面だが何も起きないぞ!!
マリーナの部屋に呼ばれた俺なのだった。
以前はこっそりと軽気功で忍び込み、サキュバスを撃破したものだったが……。
「マリーナのところに行くの? あたしも連れていきなさいよ」
「お前淫紋刻もうとしたら崩拳で消し飛ばすからな」
「御主人様からもう淫紋はいいからって言われてるもの。それどころじゃないって」
不死王配下の将軍と戦ってるわけだもんなあ。
色恋にうつつを抜かす余裕はあるまい。
『私としてはアルシェも憎からず思うんですけどねー。数々の実りを産んでくれます』
「子どもができればそれでいいのか!? いや、いいんだよな、豊穣の女神だもんな」
『生まれてさえしまえば、そこから育つのは慈愛神の仕事ですからね。作物も実るまでが私の仕事で、収穫されるか野生動物に食い荒らされるかまでは感知しません』
「セレスがろくでもない神様に思えてきたぞ……。かなり自己責任主義じゃないか」
『神々も数がいますから、役割分担していかないと手持ち無沙汰になってしまうのですよ。私の信仰が衰えたので、慈愛神が私の領域まで踏み込んで権能を広げていて……。ああ~、忘れられてしまうことは悲しいことです』
ヨヨヨヨヨ、と嘘泣きまでするセレスなのだった。
なんて女神だ。
だが、この世界を救うために力を振り絞って俺を召喚したのは本当なので、世界を愛しているのは間違いない。
「よし、では後宮に入るぞ。たのもーう! マリーナに呼ばれて来たジョナサンだが」
「ジョナサン殿ですか!」
後宮入口を守っていた女性兵士が、俺の名乗りに目を丸くした。
「王国を解放した英雄……。よく見たらイケメン……。ハッ、どうぞお通りください!」
『勇者よ! 彼女ちょっと声を掛けたらすぐに実りを作れるモード行けますよ!』
「やめろ! 俺に誘惑させようとするんじゃない! どっちがサキュバスなんだ……」
「あんたさっきから肩の上の光とぺちゃくちゃ喋ってるけど、何それ?」
「豊穣神セレス」
「げえっ!!」
姿を消しているサキュバスのアルシェだが、今のうめき声は廊下に響き渡ったな。
不思議そうにこちらを見る女性兵士。
俺は咳払いして誤魔化した。
そして、消えているアルシェの頭に軽くチョップしておく。
「あいた! ごめんってば」
アルシェを連れた俺は、後宮の中を練り歩くのである。
行き交う警備の女性兵士たちと、にこやかに挨拶を交わす。
なんか湿度の高い視線を向けられて、ねっとりとした笑顔を浮かべられるんだけど。
この国を出る前と戻ってきたときで、別世界じゃないか。
ジョナサン、お前、大変な状況になってきてるぞ!
「ジョナサン様、私、いつでもOKですからね」
いらんいらん!!
「ジョナサン様、お情けをくださってもいいのですよ? 私、誰にもいいませんから」
知らん知らん!!
「あんた、あんだけ誘惑されてよく断れるわね! 自制心が鋼でできてるの?」
賢者モードなんだよ!
女性兵士たちも、叡智ゲームたるこの世界においては割とカワイイ。
モブにも手を出せる系ゲームの要素が、この世界に入り込んでいる可能性もある。
だが!
NTR要素が無くなったわけではないのだ!
俺は全ての誘惑を振り払い、マリーナの部屋の前に立った。
「マリーナ!」
「ジョナサン!? 今開けるわね!」
パタパタ足音がして、扉が開かれた。
そこには、寝間着姿のマリーナがいる。
良かった。
変に叡智な、このあとの展開を期待している風な服ではない。
というか俺が思うに、マリーナは淫紋を見られたくないのだろう。
だからボナペテーがそれを消すまでの間は、彼女との仲が進展することはあるまい。
「入って。侍女は外に出したから、私と二人きりよ。でも、エッチなことは禁止だから」
「ああ、分かった。俺もマリーナと話をしたかったんだ」
俺が不満そうではないので、マリーナはホッとしたようだ。
こういうところで身が固くて、しかし淫紋パワーでチョロイン化しているのでサラッと寝取られるんだよなあ!
だが、城にいればいつでも彼女を守ることができる。
「ジョナサンは王国を救うために冒険をしてきたのよね? その話を聞かせて欲しいわ」
「ああ、構わないとも。あれは冒険者の酒場で、俺が逆バニーになって魔道士ボナペテーと戦った時のことだが……」
「ちょっと待って。情報量が多すぎて何もわからなくなったわ」
「あんたそんな話からスタートするの、頭がおかしいんじゃないの!?」
アルシェが俺を後ろからペチペチ叩いた。
「今、何か聞こえた?」
「いや、何も?」
その後、真っ当に冒険の話をしたのだった。
間男マズールが次々に仕掛ける罠。
正面からそれらを粉砕する俺。
強くなる女の子たち。
なお、チエリとナルの話で、マリーナは露骨に「ふーん?」という態度になった。
妬いてる!!
ジョナサン、お前、マリーナ完全にこっちが好きだぞ!
今夜、夢の中であいつに教えてやろう。
そして一級冒険者グーテンとの戦いのシーンでマリーナは手に汗握り、クライマックスは時間凍結からレイク王国を救うシーン。
全て終わったあと、マリーナは「はあ~」と言いながら椅子の背もたれに体を預けた。
「すっごく興奮しちゃった。ジョナサン、凄い冒険を繰り広げてきたのね……。ありがとう、ジョナサン。本当はあなたに私の全部で労いたいんだけど、でも今はできない事情があるから……」
「気にしないでくれマリーナ。準備ができる時まで待っているから」
具体的には、不死王編が終わった所でやっと淫紋が消えるからな。
そうなってしまえば、賢者モードを貫通してくるマリーナの魅力に俺は耐えられまい。
自信を持って言える。
叡智なことをしてしまう!!
そこまで色々と考えておかねばな……。
ジョナサン(本物)をどうするかとか、他のサブヒロインたちとの兼ね合いとかな……。
こうして俺はマリーナとの夜を終え、自室へ戻るのだった。
「エッチしないじゃん! はー! つまんな! せっかく淫紋つけたんだから押し倒せば一発なのに!」
「一発決めるなら淫紋が無い時の方がいいんだよ! そう言う主義なの!!」
『なるほど! 勇者は実りをもたらす気があったのですね! 私はとても感心しました! 全力で応援しますからね!』
こんな状況の俺だが、次なる戦い……。
帝国との戦争編が近づいているのだった。
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