第45話 久々だマリーナ!
時間凍結解除とともに、俺たちは城の前に降り立った。
そうすると、凍結から解かれた門番たちがへたり込んでいる。
「う、動ける……!? 今まで意識だけがあって、ずっと動けなかったのに……」
「時間凍結って意識が残ってるのか! 地獄だなあ」
「あんたは……騎士のジョナサンじゃないですか! もしかしてあなたがこの状況を終わらせてくれたんですか!?」
「まあそうなる……」
「こらあ一大事だ!」
門番の一人が立ち上がり、報告のために走っていった。
俺とチエリは堂々と、ナルは怖怖と、ヴェローナは超然として、サキュバスのアルシェはスーッと姿を消して城内を歩く。
「こらっ、アルシェ! やっぱり後ろめたいんじゃないか!」
「だってここ敵しかいないのよ!? 当たり前じゃなーい!! 御主人様の頼みじゃなけりゃ絶対に来ないわよ!」
マリーナに淫紋を刻んだアルシェは、王国にとって許しがたい敵だからな。
自業自得とも言えるが、魔道士ボナペテーと顔を合わせて話をして、こうしてアルシェもつけてもらった以上は他人とも言えない。
謁見の間までまっすぐ歩いていく。
「はわわわわ、ジョナサン~!? ここって王様がいるところでしょ? いいのー!?」
「いいのいいの。今日は無礼講みたいなもんだから」
慌てるナルをなだめつつ、突き進む。
そうしたらちょうど、門番が大汗をかきながら謁見の間から飛び出してきたところだった。
他の兵士たちも、俺を見てわあわあ言い始める。
「ジョナサンがやってくれたのか!」「あのジョナサンが!?」「時間凍結を解いてくれたのはジョナサンだったのか!」
「みんな無事で良かった! みんなの時間凍結を解く方法を探して世界を旅したんだ!」
「あっ、ジョナサンさんが猫を被りました!」
「きれいなジョナサンだ!」
「いつもの傍若無人な口調とは別人ですわね」
「こんなやつにもよそ行きの顔があんのねー」
元のジョナサンに擬態したんだ。
『ほんと、元の身体の持ち主とは別人もいいとこですよねえ。さあ勇者よ。兵士たちの歓迎を受けつつ、彼女の元へ向かうのです! み・の・り! み・の・り!』
実り実りうるさいよ!
兵士たちとハイタッチしながら謁見の間に入った俺を、国王が立ち上がって出迎えてくれた。
「おお、ジョナサンよ!! そなたが王国を救ってくれたのか! ありがとう、ジョナサン!」
「はっ! 御身が無事であることを見届け、私は今無上の喜びを感じております陛下!」
「ジョナサン!」
もう片方から、懐かしい声がした。
俺の中の賢者モードを貫き、むくむくと男的な部分を呼び起こす!
この声は……!
「ちょっと……ううん、とっても感心しちゃったわ。ジョナサン!」
パタパタ小走りでやって来たのは、ドレス姿のマリーナだ。
国王に「これはしたない!」とたしなめられている。
マリーナは俺を頭から爪先まで見て、うんうん頷いた。
「ジョナサン、体が大きくなったわね。なんていうか……とっても頼れる感じ……。セクシーになったと思う……」
「マリーナを救うために世界中を駆け回ったんだ。だから鍛えられたかも」
俺は表向き、ジョナサンらしい演技をしながら……。
内心はウワーッ!! カワイイーッ!! とのたうち回っている。
くっそー!
なんだこの女!?
こいつだけが俺の賢者モードを貫いてくるぞ!!
なお、俺の後ろでナルとチエリはカチンコチンに緊張している。
王族だからな!
マリーナは俺に顔を近づけると……。
「後で部屋に来なさい? もちろん……エッチな意味じゃないからね」
そう告げたのだった。
な、なんだってー!!
『ウワーーーーーーーッ』
俺の肩の上では、セレスが狂喜乱舞している。
やめなさい女神!
実りとは関係ないって言ってるでしょ!!
こうして、俺が連れてきた仲間たち……ナルとヴェローナには専用の客室が与えられた。
王国は時間凍結を解かれた事で、元の活気を取り戻しつつある。
その夜は流石に、解放を祝う宴を開くほどの元気はないようだったが。
復活した騎士たちともに夕食を摂った。
デクストン団長の顔も久々に見るなあ。
「ジョナサン! やってくれたそうじゃないか! 感謝する……!! それに……その姿を見ているだけで分かるぞ。お前は強くなったな」
「はい。それなりに強くなりました」
「謙遜だなジョナサン。さあ、コックが腕によりをかけて作ってくれたカツ丼だ! 存分に食べてくれ!」
俺はもう!
カツ丼に突っ込まないぞ!!
あっ!
付け合わせが豚汁で、ブタとブタが被ってるじゃないか!!
なお、女子たちも招かれて一緒に食事をしているのだ。
サキュバスは消えたままだが、彼女の場合は普通の食事ではなく人間の精気を吸うので、姿を消したまま騎士たちの間を練り歩いてはつまみ食いしているようだ。
直接的接触をしなくてもいけるんだな……。
なお、当然ながら俺が連れてきた女子たちは大人気である。
騎士たちはこぞって彼女たちの近くに座ろうとするのだが……。
「まあまあ皆さん、女の子たちが怖がりますから……。下心があるなら俺がいつでも相手になるぞ」
「うっ、ジョナサンが凄い迫力だ」「笑顔だが近寄ったら肩を砕かれる幻が見える」「こいつ、全身が凶器だ……!」
我が王国の騎士たちは優秀だな。
相手の強さを的確に読み取れるとは。
なお、チエリもナルもモテモテなのが嬉しいらしく、にやにやしながらカツ丼を食べているのだった。
ヴェローナは無表情ね。
他の騎士なんか虫くらいに思っているんだろう。
なお、彼女にデクストン団長の感想を聞いたのだが。
「底知れぬ圧を感じます。彼は私の正体に気づいていますわね。その上で泳がせていますわ」
「やはり恐ろしい男だったか」
そして俺は……招かれたマリーナの部屋に向かうのだった。
これは、叡智な展開があるのではないか?
賢者モードのはずの俺が、何やらドキドキして止まらぬではないか。
よせ、ジョナサンの肉体よ!
中途半端にヒロインと結ばれて幸福の絶頂に達したら、そこからは怒涛のNTRイベントだぞ!!
俺の戦いが、今始まろうとしている。
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