第34話 やっぱりサブヒロイン扱いだった!
ヴェローナを仲間に加え、都市国家ポンドールのどこかに潜んでいるというマズールを探す。
「二級と言えば、冒険者ではそれなりの立場なのでしょう? なぜそれをなげうって魔薬などに手を出すのかしら」
自身も二級冒険者であるヴェローナ。
だというのに、自分の地位をさほど重要ではないように語るのだ。
まあ、彼女は不死王の側近であり、あくまで不死王の護衛という形で冒険者に扮しているのだから当然と言えば当然。
「俺にNTRフラグを全てへし折られ、自暴自棄になったのです。というか本来はもう少し先に発生する分岐イベントなんですが、俺がやつのプライドを破壊したので早まったようで」
「なるほど、グーテンダーク様……いや、グーテンさんの仰る通りでしたわね。端々の専門用語は分かりませんが、あなたが運命を捻じ曲げたというのは本当のようですわ」
むむっ!
理解の方向が違う。
不死王グーテンダーク、まさかNTRを理解しているのか?
ファンタジー世界の住人だというのに?
まあ、今はそんなことを気にしていても仕方なかろう。
俺としては、ヴェローナが守護らねばならぬ存在かどうかが気になるのだ。
「情報収集と言えば~」
「言えばー?」
ナルが勿体ぶったので、チエリが首を傾げる。
仲良しさんめ。
「盗賊ギルドだよねー! ボクがシーフだから、顔が利くよ! ……まあ、一人で行くとお尻触られたり胸を揉まれたりするから苦手なんだけど……」
NTRほどではないが、セクハラの巣窟であったか。
「今はジョナサンがいるから平気だよね!」
「そうです! 無敵のジョナサンさんがいますから平気です!」
「ほう……?」
女子二人のキラキラした視線と、それを見たヴェローナの興味深そうなクールな視線が……!
「まあ任せたまえ」
俺はそう答えておいたのだった。
盗賊ギルドは、ポンドールの下町にある、とある酒場だ。
見た目はいつも客が少ない、どうしてやっていけてるのか不思議な店なのだが……。
「やっほ、おじさん」
「おう、ナルか! 相変わらずいい体しやがって……。はあー、お前に盗賊の才能がなければ、娼館でトップ娼婦になれただろうに……」
「やだよ! ならないよ! 今日はね、情報を買いに来たんだよね。通してー」
「お前なあ……。一応、形だけでも符丁とかそういうのあるだろ。あー、もう、後ろに仲間連れてきてるんじゃねえか」
呆れ顔の酒場のマスター。
彼がギルド入口を管理する番人なのだ。
強いぞ。
「あっ、そいつ、人狼殺しのジョナサンか!? おっと、そうなりゃ話は別だ!」
マスターがシャキッと背筋を伸ばした。
「通んな。他の女どもはここに残れ……と言いたいが……。まあ、女ばかり二人で残ったら危ないからな」
ヒッヒッヒ、といやらしく笑うマスターなのだった。
チエリは震え上がったが、ヴェローナはスンッとしている。
人知を超えた強さを持つリビングドールだからな……!
むしろ危ないのは盗賊ギルドの方である。
だが!
俺が心配するのは!
ヴェローナがNTR対象なのではないか? ということなのである!
「一緒に行けるならありがたい。そうしてもらえるかい?」
「おうよ。ちゃんと見張ってるんだぞ人狼殺し」
しかし、俺が人狼を殺した話はどこで伝わったんだ……?
盗賊ギルドの情報網、とんでもないな……。
と思ったら。
「ボクがみんなに言いふらしたんだよ! ジョナサンってすっごいんだよーって! そしたら幹部の人たちが目の色を変えて! 『素手で人狼を仕留められるわけがねえだろ!?』って! でも暗殺の長が『素手も極めれば人狼や不死者を倒せるものだ』って言ってたから」
おっ、浸透勁を使えるっぽいのが盗賊ギルドにいるぞ!
というわけで、通してもらったのだった。
酒場の裏口を抜けると、一旦外に出る。
破れかけの幌や、折れ曲がった柱で覆われた通路。
隙間から空が見える。
だが、この通路は周囲を建造物に囲まれているため、絶対に外から侵入ができないようになっているのだ。
ってことで、奥に進むと……。
そこは大きな酒場のようになっていた。
あちこちに半個室があり、秘密の会話や商談はそこで行う。
大半の構成員は、酒場で情報を交換したり仕事の融通をしたり。
あるいはギャンブルに興じてたりする。
やけに出来の良いトランプがある世界だな……!
それプラスチック製だよね?
「お! 可愛い姉ちゃんたちだなあ!」
声がしたと思ったら、ヴェローナの尻をぺろんと撫でる手が!
「んっ……」
ヴェローナが声を漏らした。
反応しきれなかったようだ。
相手はそれなりのレベルの盗賊だからな。
そしてここで俺は理解した。
これは……最初は無表情だけど、イベントが進むごとに開発されて可愛く反応するようになっていく系サブヒロインだ!!
いかーん!!
NTR対象ではないかーっ!!
「その手を離すがいい。盗賊として仕事をしていたければな」
俺が割とはっきりした声で尻なで盗賊に告げると、その男はフンッと鼻で笑った。
「おいおいお前、ここがどこだか分かってるのか? ここは盗賊ギルドで、そこで暴れたとあれば大変だぞ。おっと、ちょっと触ったら俺の手が折れるかもしれねえなあ! あー! いてえー! 考えただけでいてえー! こりゃあ、お前から詫び賃をもらわねえと話がつかない……」
「ツアーッ!!!」
お望み通り手首をチョップで打撃!
粉砕骨折!
「ウグワーッ!! う、う、腕が折れたーっ! アギャァーッ!!」
盗賊がぶっ倒れて、泡を吹きながらのたうち回る。
「詫び賃にもう片腕も粉々にしてやろう」
「ヒギィーッ」
周りの盗賊がみんな立ち上がり、殺気立つ。
「て、てめえ何者だ!?」「盗賊ギルドで荒事を起こすとは正気か!?」
「俺が前もって、盗賊としての仕事を続けたいなら尻を撫でるなと告げただろうが。そこに舐めた口を利いたということは、腕はいらんという意味に決まっている」
「そんな馬鹿な……!」「無茶苦茶だ!」「お前、ここから生きて帰れねえぞ……!」
「ふむ……。ただの打撃であってもなかなか……」
ヴェローナは正確に、俺の戦闘力を認識したようだ。
盗賊ギルドを敵に回しても、こちらにはヴェローナがいるのだ。
数分で彼らを全滅させて、さらにお釣りがくる。
ナルとチエリが、はわわわわ、となっているが心配はいらないぞ。
「おうお前ら、やめろやめろ! 座れ! そいつは人狼殺しだ! 人狼殺しの女に手を出したなら、腕の一本や二本砕かれても文句は言えねえだろうが!」
「人狼殺し……!?」「じ、実在したのかよ人狼殺し!」「よく見たらナルもいるじゃねえか!」「じゃああの男が、ナルの言ってた人狼殺し……!?」
ギルドの構成員たちが、ゾッとした顔になった。
で、みんな座って、立っているのは構成員に声を掛けた男が一人。
強面な外見をイメージしてたんだが、そこにいたのは優男だった。
ちょっとおしゃれな平服に、サングラスをしていて腰にはナイフ一本。
ウェーブがかった髪を両分けにしている。
「オレはバイフン。情報の長だ。ここには聞きたい話があって来たんだろう? 座れよ。そして聞きたいことを言え、人狼殺し」
俺は半個室に招かれた。
その中では、周囲の音が消える。
消音の魔法が使われているのだ。
「何が知りたい?」
「魔薬を持ち逃げした元冒険者、マズールの行方だ」
バイフンは無言で指を三本立てた。
俺は言い値をドサッと払う。
「交渉もしないのか?」
「時間が勿体ない。それに、俺の目的は既に済んだからな」
ヴェローナがサブヒロインだと確認できた!
あと、バイフン、お前絶対に間男だろ!!
サブヒロインに近づくなよ!
殺すぞ!!
「ちょっと彼かっこいですね」とかチエリがナルにぼそぼそ言ってるの聞こえてるからな!
ええい、鎮まれチョロインたちよ!
「いいだろう。面白い男だ。元二級冒険者マズールは、もともとラグーン帝国の間諜と繋がっている男だ。魔薬を帝国に横流しし、高跳びするつもりだろうよ」
そうだったの!?
原作では明かされない設定じゃん。
全ては帝国が悪かったのか!
だが、俺は「なるほどな」とあたかも知っているみたいな仕草をする。
ここで慌てたらカッコ悪いからな……。
「やつを追うなら、帝国の間諜と戦うことになる。なんてタイミングだ。奴らがポンドール撤退前に集まるタイミングだぞ。一網打尽にでもするつもりか?」
「そうだ」
俺は断言した。
それって神がかりなタイミングじゃないか!
よしやろう!
すぐやろう!
ここで間諜を壊滅させておけば、レイク王国が復活した時、よりマリーナを守りやすくなるからな!
お読みいただきありがとうございます。
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