第32話 悪しきドラッグパーティーを撃破せよ!!
ゴキゲンな音楽が鳴り響き、魔薬でラリった男女が踊ったりいかがわしいことをしたり、さらにお薬を吸引したりする!
まさにこの光景は世紀末。
「うわっ、この辺りに漂っている煙はあまり吸っちゃダメです! キュア!」
チエリが俺達に、状態異常克服の魔法を掛けてくれた。
既に掛かってしまったバッドステータスを解除する魔法だが、先に掛けておくことで予防もできるのである。
これも、チエリの魔法医レベルを上げておいたおかげだ。
なお、周囲一帯のドラッグも中和されたので、ラリった人々が急にシラフになってキョトンとしている。
そこにあった魔薬の効果も無くなったみたいだな……。
「ありがとーチエリ! よし、ボク、高いところから偵察してくるよ! ジョナサン心配そうな顔しないで! 人がいないところを移動するから!」
「頼むぞ、人と接触してくれるなよ」
すぐにチョロっと落とされるんだからな。
信じて送り出すとはいかないまでも、心配しながらナルを送り出した。
さて、俺はチエリとともに地上を徘徊だ。
このイベント、ただお薬で気持ちよくなっている連中がいるだけなのではない。
本来なら、ここにチエリとナルも巻き込まれ、今後さらにNTRイベントに巻き込まれやすくなるお薬による淫乱効果を得てしまうわけだが……。
それはさっき防いだからな。
さらに、チエリのキュアで予防もしている。
今回は事件の解決だけに集中すればいい……。
「あっあっ、ここでもそこでもあそこでも! みんなエッチなことをしています……!」
「いかーん! チエリがむっつりなのを忘れていた!! チエリ、見ちゃいけません!! あっ、ナルもそういうの興味津々だった! おいナル! 叡智なものを見ちゃいけません!!」
『勇者がまるで保護者のような様相を呈してきましたねえ』
「NTRを破壊する以上、フラグ管理は重要だからな……」
目をつぶらせたチエリの手を引いて歩き、周囲に目を配り、耳を澄ませる。
「ねえあなた~。一緒に気持ちよくならな~い?」
「ツアーっ! 気絶させる空手チョップ!」
「ウグワーッ!!」
ほぼ全裸みたいな叡智なラリったお姉さんが誘惑してきたので、即座にチョップで気絶させたぞ。
具体的には顎をチョップで撃ち抜くことで脳震盪を起こさせるのだ!
首筋を殴って気絶させるやつは普通に死ぬからね。
「ジョナサンさんが女性にも容赦しません!!」
「俺の行動を邪魔するやつは男女正邪関係なく敵だからね!!」
さあ、目指す先には、壇上の司祭というかDJ。
彼のスクラッチは今や最高潮。
ノリノリのビートが鳴り響く!!
そこへ俺がエントリーだ!!
「ツアーっ!!」
壇を蹴り砕きながら昇り、置かれていた神像みたいなのをついででチョップして叩き割る!
「ワッツハプン!?」
DJ司祭が慌ててこちらを振り向いた。
だが、スクラッチは止まっていない。
「海水浴場の行方不明事件を調査に来た冒険者だ! そのスクラッチをやめろ!!」
「ノーノーノー!! これは我が神を呼び起こす聖なる儀式! 神を賛美する歌をお前も聞けーっ!!」
うおお!
シャカシャカとスクラッチが加速した!
一瞬足元がグラッと来る。
キュアが無ければ危なかった!!
「チエリ、ありがとう! キュアが効いてる!」
「ほんとですか!? どういたしまして! たーっ!!」
チエリはチエリで、俺の背後から近づくラリったお姉さんやお兄さんを片っ端から流水の型で投げ飛ばしているところだ。
格闘系ヒーラーとして才能が覚醒しつつあるな……。
格闘術4に上げておいてやるからな。
「あれっ!? 技のキレが一気に増しました!!」
驚くチエリ。
誘惑を仕掛けられない限り、ラリった連中相手に君は無敵だぞ。
後顧の憂いが無くなった俺は、DJ司祭めがけて跳躍した。
「オアアアーッ!!」
咆哮とともに放たれるドロップキック!
「なんとぉーっ!?」
DJ司祭はこちらに手をかざし、光のバリアみたいなものを張った。
紫の光で大変毒々しい。
邪神って感じがする。
「そう思ってこのドロップキックには浸透勁を乗せて……あるっ!!」
「ウグワーッ!?」
DJ司祭がデッキ……もとい祭壇とレコード……もとい教典とともに吹っ飛んだ。
「ば、馬鹿なーっ!! フォースフィールドが破られた!? あっあっ! 祭壇が! 教典が!!」
砕け散ってしまったようだなあ!
だが流石にタフな司祭だ。
かなり高レベルな敵であることがうかがえる。
今の俺は未熟なので、浸透勁に発勁の効果を乗せられない。
発勁ではやつのバリアを抜けない。
ではどうするか?
「ファルコンスラッシュ!!」
斬撃を飛ばすのだ!
これに浸透勁を乗せておけば、防げないしダメージは斬撃!
相手は死ぬ!
「ウグワーッ!!」
案の定防ごうとした司祭が、バリアを貫かれてザクッと斬られた。
「こ、こうなれば我が生命を供物として……神よ、御身をこの地に……!!」
「させないよーっ!!」
上からむちっとした女子が飛び降りてきた!
そして、手にした異形の何かで司祭の頭をべちーん!と叩く。
「ウグワーッ!!」
詠唱を完了する前に、DJ司祭は死亡!
異形の何かも、ばらばらになってしまった。
「ナル! ベストタイミングだったぞ!」
「うん! これはーって思って、大ジャンプしてこっちまで跳んできたの! あー、本物の神像が壊れちゃった」
「本物の神像!?」
司祭にとどめを刺した異形の何か。
それは、カッパのミイラみたいな神像だった。
乾燥させた異形の生き物を組み合わせて作った、両面宿儺とかみたいな邪悪な御本尊だったらしい。
だが、これもバラバラだ。
司祭が流していた洗脳ソング……もとい、明らかに邪神みたいなのを寿ぐ讃美歌も途絶え。
そこにはただただラリった人々だけが残されたのだった。
あとは兵士に任せるとしよう。
黒幕っぽいのは、多分倒したのだから……!!
『邪なる神は、人間を堕落させるのが仕事の神です。超越者にやられて力を失いつつあったのですが、魔薬を用いて復権を狙ったのでしょう。ちょっとこの洒落にならない状況で復権すると、本格的にこの世界が超越者に負けるので、ここで叩いたのは正しいですね!』
「あ、お知り合いだった?」
復活されるとヤバいところだったか。
いや、でもセレスくらい弱っているなら脅威にもならなかったか?
とりあえず、NTRフラグをへし折ることに全力な現在。
邪神なぞに構ってはいられないのだった。
なお……。
マズールらしき人影が、こそこそと逃げ去る様子を俺は目撃したのだった。
あいつ、魔薬を持ち去ったなあ?
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