第27話 戦え! 逆バニー男VSサキュバス! 夜の酒場の大決戦
ところで、このウェイター業務によって、ほんの少しだがスキルポイントが溜まっていた。
すべての行動は無駄にはならない。
そういう世界なのである。
俺はテーブルをサキュバスに向けて蹴り飛ばしながら、心のなかでShiftボタンとWボタンを押した。
ステータスオープンである。
ここで得たのは、一般スキルポイントという区分である。
これを、ウェイタースキルに割り振る。
『薙ぎ払い誘惑光線!』
「誠に申し訳ございません! 90度会釈!」
俺が礼をした上を薙ぎ払う光線!
『逃げるなぁっ!!』
「お客様こちらでございます!」
『うおおっ! 差し出した手の動きで私の爪をいなした!? こいつ、前に会った時よりもずっと強くなってる!』
片手に盆を持ち、ウェイター仕草に流水の型を組み合わせる。
そろそろサキュバスにも有効打を与えられるくらいには強くなっている俺だが、今回の目的はボナペテーに俺という男を覚えてもらうことである。
「ボナペテー! 時間凍結はお前に解くことはできない!! その魔導書の執筆者である、グーテンダークにでも頼むんだな!」
「なんじゃとお!? なぜお前がそれを知っている!! 何者だ、お前はっ!!」
サキュバスの連続攻撃を、俺はひたすらお盆と流水の型でいなす。
こいつ、怒ると攻撃が単調になるな!
ムキになって爪を振り回してくるから、実に避けやすい。
だから、俺は口先に集中できるというものだ。
「俺が何者なのかは今は語るべき時ではない……」
「語れよっ!!」
「そんなことより、あんたはグーテンダークと会うにはどうしたらいいかを考えるべきだ。地下帝国に住む不死者の王をどうやって呼び出す? 魔法か? 古代魔法王国時代の力をそのまま持っているグーテンダークに、現代の魔法は通じないと言われているぞ。力づくか? グーテンダークを守護する五人の将軍を切り抜けるのは並大抵じゃないぞ」
「どこまで……お前は、どこまで知っていると言うのだ!! このわしすら知らぬことを、どうして……!!」
『御主人様! こいつ、口からでまかせに決まっています! 心を乱されないでー!!』
「すごい戦いなんだけどさ」
「うん」
入口近くで、ナルとチエリが俺の戦いを見守っている。
さっき、マズールが入店しようとしてきて、サキュバスがふっ飛ばしたテーブルに当たって「ウグワーッ!!」と転がり出ていったな。
「ジョナサンの格好が気になって、話に集中できないよー」
「分かります~! ジョナサンさん、おしりの形きれいですよねえ」
「チエリ、男の人のおしり好きなの!?」
「お、おしりだけじゃありません!!」
『勇者よ、女子たちの熱視線が嬉しいですね。そろそろ一人くらい実りを与えては?』
「だめっ!! よし、これでボナペテーにグーテンダークを探るモチベーションを与えた。これで、五将軍はボナペテー対策でこの街に来なくなるんだ。じっくりとグーテンダークだけを相手にお話できるぞ」
『勇者よ、非情に面倒なことをやっているのですねえ。何があなたをそうも突き動かすのですか?』
「最終的には超越者を倒すためなんだから、セレスのお願い通りでしょ」
『それはそうなんですけどぉ。私としては英雄は色を好んで欲しいなあという思いもありましてー』
豊穣の女神めえ!
ここで、膠着状態だったサキュバスはボナペテーの命令を受け、撤退を開始した。
『くそっ、覚えてろ!! 御主人様しっかり! 見えてしまったぶらんとしたものはすぐ記憶から消して!』
「うーんうーん。グ、グーテンダークにどうにかして接触せねば……」
ボナペテーは魔法の力でゲートを作り出すと、サキュバスとともに消えて行ってしまった。
なんというかサキュバス、魔道士の娘みたいな甲斐甲斐しさでお世話してたな。
ちょっとヒロイン力を感じた俺なのだった。
なお、サキュバスのNTRイベントはグーテンダーク編に入ると五将軍の一人がその担当になるな。
随分先のことである……。
まだ、今の俺では五将軍には勝てないしな。
「ひぃー」
情けない悲鳴をあげながら、マスターがカウンターから這い出してきた。
「まさか悪魔が入り込んでいるなんて……。当分、夜のお楽しみイベントは自粛しまあす」
マスターの宣言に、おっさんたちは「な、なんだってー!」と衝撃を受けるのだった。
なお、半分以上のおっさんは奥さんに秘密で出てきてるので、ワーッと押し寄せてきた奥さん軍団に耳を引っ張られて家に連れて行かれていた。
「いてててて! ごめん! ごめんよかあちゃん!!」「この宿六はほんとろくなことをしないねー! あんた当分夜間外出禁止だよ!!」
尻に敷かれているな……。
『私としては完全に趣味としか思えないようなイベントでしたが、勇者にとって無駄なものなど何もないのですね……。感心してしまいました』
「そうだろうそうだろう。いや、ちょこちょこ原作に無い要素があるからな。男が逆バニー着る事自体が俺のアドリブだからな。この世界は原作のゲームから逸れて、独自のルートに入りつつある……」
セレスと二人、しみじみする俺なのだった。
そして、そんな俺達にチエリとナルが駆け寄ってくる。
「ジョナサンさーん!」
「ジョナサーン! カッコよかったよー!!」
二人で抱きついてくるのだった。
ハッハッハ、逆バニーが剥がれるから気をつけてね。
また好感度が上がってしまった予感がする……。
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