第26話 バニーガールで叡智な接客? 良かろう、俺もバニーになってやろう!!
俺達が世話になっている酒場のマスターだが、基本的に叡智を愛する男であることは変わらない。
夜にはチエリとナルを酒場に行かせていないが、それはこの場所が叡智なサービスを行うお店に変化するためだ。
とは言っても直接的なものではない。
露出度の高いバニーガールとか逆バニー的な格好をさせた女の子に、ウェイトレスをさせるのだ。
男どもは触ったり揉んだりして楽しむらしい。
ふむふむ……。
そこにチエリとナルを誘っただと?
マズールの入れ知恵があったとは言え、その考えを後悔しなければいいな!
「うわーっ! ほとんど布がないじゃん! こんなの裸みたいなもんだよー!」
「わ、わ、スルッと落ちちゃいそうです! こんな格好で接客なんかできないですよー」
案の定、泣き言を言う声が聞こえてくる。
更衣室でチエリとナルが支給されたのは、ナルが逆バニーでチエリがバニーだったらしい。
ほうほう……。
「話は聞かせてもらった!」
ここで俺、登場!
更衣室のロッカーの中であらかじめ着替えておいたのさ!!
「ジョナサンさん!?」
「ジョナサン、なんでここに!? そ、それにその姿はー!!」
「ふっふっふ。二人だけを恥ずかしい目に遭わせはしない。この俺がやって来たからには、男どもの宴を地獄に変えてやろう!!」
さて、このようなアホなイベント、賢者モードの俺としては断ってしまえばいいのだが、実はこのアホイベントはアホに見えて重要な伏線が隠されているのだ。
それは……店の隅の席にいるローブの男!
あれは叡智なエネルギーを採取に訪れた、魔道士ボナペテーなのである!
あの野郎がマリーナに淫紋を刻まなければ、ことは始まらなかったわけだな。
異世界NTRパルメディアの発端と言っていい人物である。
なお、ボナペテーが淫紋イベントを起こさなければ、誰も超越者に対抗できぬままパルメディアは征服されてしまうことになる。
そう考えると、ジョナサンを英雄にするきっかけを作った男とも言えよう。
今回はボナペテーと接触するのが一番の目的……いやいや、NTR爆砕が一番だろう!
「本日は冒険者ギルドから、とびきりキュートな二人がウェイトレスを買って出てくれましたよ!」
マスターの声がする。
盛り上がる男たち。
「ど、どうしよう……!」
「行くしかないですよね!」
「うむ! 俺が守るから安心するがいい。行くぞ!!」
俺はずんずんと大地を踏みしめ、登場した!
今、夜の酒場の盛り上がりは最高潮!!
から地の底まで急降下した!!
「おえええええええ!?」「なんで男がいるのおおおおおお!!」「男の逆バニー見たいくないんだけどーっ!!」
「ふはははは! 遠慮するな! 俺が存分にサービスをしてやろう……。そして女子たちにセクハラしようという動きがあれば……」
後からおずおず現れたチエリとナルに、そろっと手を伸ばしたおっさんがいる。
俺は常時ダッシュを生かしたスライド移動でおっさんとの間に入り込んだ。
「俺の鍛えられた大殿筋を揉むがいい!」
「ぐわあああああああ」
おっさんが椅子から転げ落ちて悶絶する。
俺の尻を揉んだ手をピクピク痙攣させているではないか。
失礼な。
まるで毒に触ったかのような反応ではないか。
「ま、マスターどういうことだ!?」「話が違うぞ……!」
「い、いやあー、私もこれはちょっと聞いてない状態でして……。お、おいジョナサンくん! どうなってるんだ! なんで君がいるんだ!」
「俺からのサービスですよ、遠慮なく!! さあマスター! 今夜も元気よく営業して行きましょう!! お集まりの皆さんは、俺の肉体美を愛でながら酒を飲むがよかろう」
鍛え続けてきたことで、華奢だったジョナサンがなかなかのムキムキになってきたところだ。
そこに降って湧いたバニーイベント。
存分に見せつけるしか無い。
結局、興奮を俺のバニー姿でぶち壊されたおっさんたちは、俺が給仕にくると戦々恐々とし、チエリやナルが来るとホッとして笑顔になるのだった。
うんうん、ソフトになったな。
「マスター! こちら、ウーロンハイひとつ、レモンサワー一つ、ハイボールひとつでーす!」
「マスター! こっちはビール! 生三丁ー!!」
ファンタジー世界らしからぬ、居酒屋のような注文風景だな。
おっさんたちは女の子に触りたいが、そうすると俺が高速スライドして割り込んできて、結局俺の体に触ることになる。
これが恐ろしくて、手を伸ばせない状態になっているのだった。
『奥深いイベントです。ですが女性の数が足りませんから、健全な実りには繋がりませんねえ』
「セレスがこういうのもOKという辺りで俺は大いに驚くのだが」
『豊穣の形は様々です。ですが、なるべく女性が多いほうがいいでしょう! 一人の女性は基本的に、一人の赤ちゃんしか産めませんからね』
「終始そう言う話しかしない女神だ……。おっと、ボナペテーにも声を掛けてこねば」
予想していたのとは全く違った展開になり、呆然とするフードの男、ボナペテー。
俺が彼の席にのっしのっしと近づくと、サッと身構えた。
「別に取って食ったりはしないぜ、魔道士ボナペテー!!」
「な、なにぃっ!? 貴様、どうしてわしの名を……!!」
フードの中は見通せず、闇の中で一対の光だけが目として輝いている。
「時間凍結したレイク王国を、もとに戻す手段を探しているんだろう? 護衛であのサキュバスも来てるか?」
「こ、この男は危険過ぎる!! アルシェ! やってしまえーっ!!」
『隙ありーっ! 誘惑拡散ビーム!!』
「ツアーッ!! テーブルシールド!!」
サキュバス、出現ざまの周囲にばらまく誘惑ビーム!
前回の戦いから学習しているな!
俺は高速でバック転しながら、テーブルの一つをひっくり返してシールドにした。
そこに座っていたおっさんたちは、一瞬びっくりしたが、その直後に誘惑拡散ビームやられてへなへなになる。
「ああ~。至上の快楽なんじゃ~」「サキュバス様に精気を捧げるんじゃ~」
『あんたたちみたいな美味しくなさそうなのいらないわよ!! けっ!』
サキュバスはおっさんたちを蹴飛ばし「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」俺に向き直る。
『ここで会ったが百年目よ、謎の格闘家! 私の誘惑を回避しきったお前を、どうやって落としてやろうか七日七晩考えたのよ! ……で、再会したお前がなんでそんなひっどい格好してるのー!?』
「俺がたまたま逆バニーになった時に再戦の機会が訪れるとは……持っているな、サキュバス! お前は今回目当てではないが、ボナペテーに俺という存在を刻み込むためにここで勝負してやろう!」
『やめろー! 足を振り上げて身構えるな! 御主人様に見えちゃう! こぼれる!』
「ウワーッ!! なんでこんなひどいものを見ねばならんのじゃー!!」
悲鳴を上げるボナペテー。
酒場は、突然のサキュバス出現に阿鼻叫喚。
そんなカオスの中で、サキュバスとの再戦がスタートするのだった。
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