第23話 盗賊ナルの深堀りエピソードだぞ!
さて、今まで死にアイテムだった、マリーナとの思い出の指輪を使ってみる。
これは名前こそロマンチックだが、使うたびにマリーナのNTRぶりというか、開発され度合いがわかるというろくでもないアイテムだ!
賢者モードじゃなかった時は大変お世話になりました。
今、時間凍結によって動けなくなっているマリーナはどうだろう?
指輪から俺に、イメージが流れ込んできた。
ウワーッ!!
全裸!!
淫紋は予想通り下腹部にあって光ってますねえ。
ほうほう、ありとあらゆる全ての開発度合いがゼロ。
いいことだいいことだ。
えっ?
この回数が増えてるところはご自分で?
ははー! 大変よろしい。
「ねえねえジョナサン! 何を虚空を見つめながらニヤニヤしてるのさ?」
後ろからナルに小突かれた。
「どうしたどうした」
「ボクたちがせっかく、依頼を一つ見事に片付けてさ。あと一つを上手いこと終えたら、ジョナサンもチエリも四級でしょ? ボクに並んじゃうなーって思ってたところだったのに、当のジョナサンがそんなこと、どうでも良さそうなんだもん」
どうでもいいんだぞ!
俺としては早急に冒険者の級を上げ、スキルポイントと経験点の割がいい依頼を受け、さらに重要な情報に触れておきたいだけだ!
全てのフラグが立っているモードとは言え、そこに至るまでにはある程度のレベルが必要だからな……。
最後にマリーナを確認しておく。
彼女は時間凍結された城内の、謁見の間にいた。
王の隣の椅子に腰掛け、その瞳は空を見ている。
何を考えていたのだろうか。
絶対助けてやるからな!!
ガオーッ!!と気合の声をあげたら、ナルがびっくりして飛び跳ねた。
「ジョナサンがさっきから奇行ばっかりする!!」
「気にしないでくれ。これからの冒険者人生を一瞬で頂点まで駆け上がるべく、気合を入れたんだ」
「そ、そう? それならいいけど。ほら、あっちでチエリが呼んでる!」
「おうおう」
そこにマズールの姿はない。
めでたい依頼成功だというのに、どこかに行ってしまったのだ。
「なんででしょうね?」
「どうしてかなあ」
不思議だろう不思議だろう。
こいつは裏で、悪さをする仲間と共謀してこちらを陥れようとしているのだ。
確か、ここで発生するイベントは、本来は最初の冒険でフラグが立っていると起こるはずだが……。
既にジョナサンがフラグを立てていると考えてよかろう。
ナルとチエリとともに祝杯をあげている俺。
甘いお酒などが出てきて、これを女子二人が飲んでぽわぽわになっている。
俺はあえてミルクである。
そこへ近づいてくる、いかつい男が二人。
俺は!
こいつらを知っている!!
「おいおい、冒険者なのにミルクなんか飲んでるのかよ! 女二人つれてるのに情けねえ男だなあ!」「坊やはママのおっぱいでも飲んでた方がいいんじゃねえか? おーい女の子たち、俺達が明日の朝までしっぽりと面倒をみてやるぜ!」
「来たなNTRイベントよ遺言は終わったようだなツアーッ!」
「ウグワーッ!」「ウグワーッ!!」
立ち上がりながらの連続崩拳!!
俺をコケにしてきた冒険者は腹を撃ち抜かれて色々撒き散らしながら螺旋を描いて吹き飛んで変な角度で落下して泡を吹いて失神!
「失礼な人たちだ。ミルクは体にいいんだぞ」
俺はジョナサンを演じつつ、倒れた男たちにそう告げた。
冒険者が集まる酒場、ヒエッヒエ。
人をいきなり馬鹿にするんだから、発勁で内側から破壊されるくらい覚悟していただきたい。
お前ら、まさか自分だけは大丈夫だと思ってたんじゃないかね?
「ほわわわわわ」
ナルが震えている!
「か、かっこいいぃ~」
酔っ払ったチエリはなんかふにゃふにゃだ。
今まではストレートにジョナサンを褒めることあんまりなかったなあ。
さて、今吹っ飛ばした二人が、フラグのきっかけになる奴らなのだが。
彼らと乱闘することになったジョナサンがボロボロになったりして、その間にさっとやってきたマズールが二人を連れて行ってしまうのだ。
残念だったな!!
男たち二人は当分の間床とキッスしたままだぜ!
「あのー、床にゴミを捨てられると困りますぅ~」
ここで声を掛けてきたのは、酒場の看板娘。
なるほど、確かに営業妨害である。
「あっ、これはすみません。今から掃除しますね」
俺は殊勝な態度でそう告げると、倒れた男の一人を掴んで放り投げ……。
「オアアーッ!!」
裂帛の気合とともにドロップキック!
男はあまりの衝撃に一瞬で覚醒し、「ウグワーッ!!」と叫びながら店の外までぶっ飛んでいった。
今まさに入ってこようとしていたマズールに激突し、二人まとめて「ウグワーッ!!」とぶっ飛ぶ。
もう一人もドロップキックで蹴り出した。
よし、これでドロップキックの運用試験は十分だろう。
威力、角度、感触。
掴んだ。
まだ発勁を乗せないで、軽く当ててあの威力だ。
俺の戦いの主砲になりうるスキルと言えよう。
『やりましたね勇者よ! 確実にあなたが強くなっているのを感じます。お城にいた頃は、いつまで掛かることかとハラハラしていましたが……。だんだん勢いがついてきましたね!』
「ああ。俺はきちんと計画を立てて成長しているんだ……。RTA感覚で思わず取得しちゃったやつはこうやっていい感じに活かす……」
「うーん、むにゃむにゃ……。もう食べられません……」
「あっ、チエリが酔っ払って寝ている。なるほど……これはお持ち帰りされやすい……。危険だ」
「ねえジョナサン」
ナルがじーっと俺を見ている。
「キミってさ、何人いるの?」
「何人とは?」
「礼儀正しいっぽい言い方するかと思ったら、いつも他の男の人を油断なく見張ってるし。あっ! って思うタイミングで、いきなりすごい声あげながら攻撃したと思ったら、誰かが吹き飛んでるし」
奇行が過ぎたか!
だが!
反省するつもりはない。
フラグは発生する前にへし折る。
そのためならば、恥などかき捨てなのだ。
「ねえジョナサン、キミはチエリを守る人?」
「そうだね」
「あのさ、ボクのことも守ってくれたり……するのかなーって思って。あはは、冒険者なのに守ってほしいなんて言うの、おかしいよね」
「ナルは戦闘系の伸び地が低く、自衛も危ういタイプのスキルツリーだ。自由自在にスキルを取れる俺がナルを守るのは理に適っているぞ。よし、守ろう」
「やっぱりダメだよね……。あはは……って、いいの!? えっ!? 何言ったかわかんないけどいいの!?」
「元からそのつもりだ。冒険者編が終わるまでNTRフラグを破壊すれば、ナルを守りきれる。いけるいける」
「ありがとうジョナサン! ボクさー、盗賊の父さんから男みたいに育てられてさあ、ずっと盗賊の英才教育だーって教えられて、そしたら父さんは途中で捕まって処刑されちゃってさあ」
知ってる。
サブヒロインの背景事情は全て理解しているぞ。
「一人で生きていかなきゃって思ってたところで、ジョナサンに会えたのは運命なのかなあ」
なんかそんな事を言いながら、眠そうにするのだ。
「僕は二人は運べないから、宿まで一旦移動しよう。ナル、立てるかい? 立てないならば一旦発勁でアルコールを吐かせて動けるようにするぞ」
「ひぇっ! 一瞬だけヤバい方のジョナサンが出てきたよね!? 立てる! 立てます!」
「よし!」
俺はチエリを背負うと、宿に向かうことにするのだった。
『勇者よ、私にもフラグというものが分かってきましたよ! これはあなたに対する恋のフラグが立ったのですね!』
「何を言っているんだセレスは……」
『ええ!? こっちのフラグは分からない!? 勇者よ、あなたのアンテナの感度はどうなっているのですか!?』
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