最終話 ネトラレブレイクは終わらない
やって来た、御降村。
何故か俺もセレスに付き合って浴衣姿なのだぞ……!
「本当に電車で来れてしまった。しかもここで降りる観光客がかなり多いぞ」
「私達同様、浴衣の人も多いようですね」
「ああ。すっかり観光地になっている……。本当に俺達が知っている御降村なのか? あっ、あまりにも見覚えのある御神体!! 俺達が知っている御降村だったわ」
降りてすぐ見えるのは、村を貫く広い道。
その先に、ミクダリ神社があり……。
上半分が砕けた卵の殻を思わせる、巨大な隕石が御神体として鎮座していた。
実施、あれを砕いたのが俺達なのだなあ。
「とうとうゲームの中から、現実に影響を与えてしまったではないか。ということはこの世界にもネトラレは満ちているということだな? 破壊せねばなるまい」
「勇者よ、勇者よ。今は怒りに燃える心をそっと胸の奥にしまう時です」
「最初に俺に語りかけてきた時とは真逆の事を言うなあ」
「ふふふ」
電車から降りた俺達の横を、若い高校生のカップルが駆け抜けていく。
カンカン帽に甚兵衛姿の男子と、それよりも少し背が高い緑の浴衣でメガネの女子だ。
女子が俺達の横を通り過ぎる時、「受け身なままじゃダメだ……。勇気出せ、祐天寺なつみ……!」とか呟くのが聞こえた。
なにっ、祐天寺!?
男子高校生が、ミクダリ神社の御神体について、宇宙から来た伝承があったりして…なんて話をしながら女子に振り返る。
女子高生はすぐに、彼の横に並んで歩いていってしまった。
ふーむ。
「遥の子孫ですね!」
「本当だなあ……。あれが昭和五十五年、今が令和八年だろう? 46年も経過してるんだ。あれは祐天寺遥の孫娘だな」
「あの後、彼らはどうなったのでしょうね? 実りが連なっていて、今もああやって連なりつつあるのが私は嬉しいですね」
「豊穣の女神だもんな」
「あら。私も女神としてだけではなく、関わった友人たちが幸福になることは嬉しいのですよ? それと勇者よ」
「なんだい」
「手を繋いで行きましょう。恋人同士というものは、この世界ではそうするのでしょう?」
「お、おう」
なんか改まってそう言われると照れくさいな!!
で、この手を繋いだカップルというのは夏祭りの場において、保護色のように目立たないのだ。
そりゃあもう、あちこちにたくさんいる。
「知ってる家はみんななくなっちまってるな」
「本当ですね。どれもこれも建て直されて……。きっと、駅に近くなったから村が栄えたのでしょうね」
当然ながら、俺達の顔を知る者などいない。
知っているのに知らない建物ばかりの通りを歩くというのは不思議な体験だった。
そして、ミクダリ神社。
たくさんの出店で賑わっている。
テキ屋は追放され、村人たちが運営する出店がたくさんだ。
俺とセレスはいか焼きなどを買い、もりもり食べながら御神体を目指した。
本殿の背後にそびえ立つ、砕けた隕石ことミクダリ様。
降臨者の抜け殻は、実にデカかった。
あれの中身は、俺がぶっ飛ばしたのだ。
「今じゃ御神体も空っぽだが、中身の降臨者も空っぽなやつだったからな。いままでぶっ倒してきたやつの中で一番スカスカだった」
「でも、強かったのですよ? あれを倒せるくらい、勇者は強くなったのです」
「こらこらあんまりくっつき過ぎるな。暑い暑い」
やたらとセレスのスキンシップが激しいな!?
いや、もっと深いスキンシップはしているんだが。
そんな事を考えていたら、向こうから黄色い浴衣の女が歩いてきた。
おや……?
見覚えがあるような……。
「見つけた、ジョジョー!」
「うげえ、黄瀬!! な、なぜここに! 世界線が違うだろうが!」
「言ったでしょー! 師匠がご褒美で、私の世界とジョジョの世界を繋いでくれるって!」
「聞いてない聞いてない」
「言った! 言った! 今夜はちゃんと約束を守ってもらうからねー!!」
「ぐわーっ、空いているほうの腕も取られた!」
俺に逃げ場なし!!
こうして夏祭りを、両手に花?という状態で歩き回った俺。
黄瀬を家に連れ帰ったところ、両親から「重婚はどうかと思う」「でも息子がモテて嬉しい」などと複雑な感想を言われ……。
「いやあ、見事に翔子と実りましたね! おめでとうございます!」
「セレスはなんで俺と黄瀬が叡智をして嬉しそうなんだよ。ずーっと横でガン見してたよな」
「豊穣の女神ですから」
「セレスちゃんに見られちゃった! あー、これで私の本懐も達成だー」
「……では、これでときめき学園の世界に帰っていただける……?」
「ちょこちょこ来るので高校卒業したら末永くよろしくお願いします」
「この世界は重婚禁止なの!!」
こうして、俺の日常生活が戻ってきた。
とんでもなく騒がしくはなっているのだが……。
『おうネトラレブレイカー! やっているな!! 新作の情報を持ってきてやったぞ!』
「窓から直接来るな、超越者! というかメールでいいだろうが。いや、それを口実に遊びに来たんだな」
『うむ、新作のネタ出しに詰まっておってな。お前をまた新たな世界で戦わせてインスピレーションを得たい』
「まあ、そこにNTRがあるならば戦いに赴くのはやぶさかではない」
『話が分かる男だ!』
「超越者、お茶を飲みます? お茶菓子は?」
『うむ、冷茶とせんべいを……。さて、ネトラレブレイカーよ。次なる世界だが……宇宙ステーションという閉鎖環境で一人の宇宙飛行士が裏切り、エイリアンと結託しながらNTRを繰り返していくというゲームでな……』
「なにぃーっ!!」
新たなNTRゲームのシチュエーション来たる!!
『本日未明に発売した。異世界に覇を唱えんとする新たなオーバーロードの出現だ。新たな戦場での活躍……期待しているぞネトラレブレイカー!』
「いいだろう。ではちょっと遊んで、使用もしてみてスッキリしたら行く……」
『うむ、遊ぶ時には俺様は席を外しておくからな。あまり使用しすぎてセレスをほったらかしにするなよ』
「妙な気遣いをするやつだな……」
こうして。
俺は新たなゲームをダウンロードする。
そして、NTRに満ちたゲーム世界へ飛び込むのである。
NTR許すまじ。
だが賢者モードでないうちは大好物。
「お茶を持ってきましたよ。勇者よ、ヴェローナが遊びに来ましたよ……って、あーっ、新しいゲームをしています!! これはいけません、ヴェローナ、勇者はしばらくベッドでは相手をしてくれないでしょう」
「来て早々、ろくでもない事になってますわね!?」
不甲斐なきNTRゲー主人公に怒りを燃やし。
ヒロインを追い詰めてNTRする間男に義憤を覚えつつ、もっとやれと応援する。
痴態が見られれば大いに歓喜し、使用し……。
ついに戦う準備は整った。
「勇者よ、行くのですね? 賢者モードなのですね?」
「うむ、NTR許すまじ!!」
「どの口が言っていますの?」
こうして俺達の新たなる戦いが始まる。
ネトラレブレイクは終わらないのだ。
~おわり~




