第221話 その名は!
降臨者が浮かび上がった。
砕けた隕石から離れると、ゆっくりと俺達の頭上へ。
飛んだままか!
「構わんぞ。わしがお前ら全員を飛ばせることができるからな。なんなら、投げ技で叩きつけられる地面も用意してやる。じゃが、わしはその制御で手一杯じゃ。戦いはお主らがやれ!」
「構わねえ! ありがてえぜ! ちっくしょう、こんな状況じゃなきゃこんないい女、抱いてるのに」
ダイオンはこう言う状況でも性欲モリモリで大変頼もしい。
弱い頃は間男として極めて恐ろしい存在だったが。
やはり、力は大事だと分かるな!
視点そのものが変わる。
「なるほど……。人ならざる存在との戦いか。校長も恐ろしい相手だったが、アレはそれ以上なのだろう? 俺も鍛え直したが、どこまで通用するか。やってみるさ!」
「はっ、自信なさそうじゃねえか優男! てめえはやれる奴だ。少なくとも足手まといにならねえと俺の嗅覚が告げてる」
「ダイオンいいこと言うなあ」
俺は感心しながら、男二人とともにふわりと舞い上がるのだ。
場所は、境内上空に作られた戦場。
降臨者は降りてくる気がなかったのに、強制的に着地させられてしまった状況だ。
『ぬううううううん』
難しい顔をしながら腕組みをする降臨者。
そいつ目掛けて、魔弾が連続で炸裂する。
だが、降臨者を包む銀の帯が猛烈な勢いで回転してこれを弾いてしまうのだ。
『まああああああ』
「こいつ喋んないのか」
「喋ったら神秘性が落ちるということもあるんですよ」
最後にやって来たセレスが解説してくれる。
ずらり、横並びになった俺達四人。
くたびれたスラックスにスニーカー、ランニングシャツ姿の中条を乗っ取っている俺。
チェインメールアーマーにガントレット、グリーブ、ヘッドギアまで装備したダイオン。
崩した学生服に、磨き上げられた革靴の花京院。
この神社のバイト用であろう巫女服の黄瀬……に乗り移ったセレス。
「ちょっとセレスちゃん、私、流石に自信ないんだけど!」
「いけますいけます。翔子の体、よく動きますもん! 私に身を委ねてくれればいいんですよー」
「いやーん優しくしてねー」
おお、ちょっと百合の気配を感じる発言だ。
降臨者を前に余裕ではないか。
『むおおーっ』
無視されたのが腹に据えかねたのか、降臨者がまた虚無を撃ち出してきた。
こいつは恐らく、進行上にあるものを削り取り消滅させる攻撃なんだろう。
今までのボスの中で、一番それっぽい。
だが、虚無は殴って壊せることが判明してしまったからな!
「ツアーッ! 受け止めた虚無を地面にボディスラム!」
砕け散る虚無!
『むお! おおおーっ!!』
「なんか降臨者が抗議してきてる」
「虚無を砕かれたからありえないだろって言ってるみたいです」
「セレス、奴の言葉が!?」
「女神ですから」
えっへんと胸を張る彼女。
「それじゃあ……ぶっ倒すとしますかあ!!」
「ああ。さっさと終わらせて帰るぞ!!」
ダイオンと花京院が走る!
「おーらぁっ!!」
跳躍とともに回転するダイオン。
刃の竜巻になって、降臨者へと飛び込んでいく。
降臨者はこれを迎撃すべく、虚無を連打してくるのだが……。
それは大剣によって切り裂かれる!
恐らくこの虚無攻撃、ある程度以上のレベルがあると無力化できるというやつだな。
そしてこの場にいる全員がその条件を満たしている。
まあ、ある意味能力がカンストしている連中なのだ。
さらに飛び込んだ花京院は、木刀で回転する帯を打ち据える。
帯に亀裂が走った。
『ぬおおーっ!!』
「やっぱり半熟降臨者だとこんなもんか。原作では姿を見せないから強さが分からないんだが、盛られてたんだな」
「結界を作ることに特化したタイプの侵略者だったのかも知れませんね。では仕留めますか」
「おう、やるか」
俺達の背後から飛んでくる魔弾が、帯による妨害を受けなくなったので降臨者を捉え始める。
穿つことは出来なくとも、超遠距離からの連続打撃として効果を現しているのだ。
『うももももーっ!!』
よろける降臨者。
そこをダイオンが独楽のように回転して弾いた。
さらに花京院が殴って押し返す。
『うまもーっ!!』
そして俺が降臨者をキャッチ!
パワーボムの体勢にしたところで、俺の隣にコーナーポストが出現する!
これは……。
下で、ネイアがサムズアップしている。
この意を汲んで、セレスがポストの上に駆け上がった。
俺が抱え上げている降臨者の上に、膝を落とす!
「行くぞーっ!! ツープラントン式……パワーボム!!」
「落下を加速させますよーっ!!」
『るうおおおおーっ!!』
超高速で落下した降臨者が仮初の地面に叩きつけられ……大地が砕ける!
その下には境内!
さらに落下して、俺とセレスでその速度を加速!
降臨者の頭が、境内に衝突!
御降村全体が激しく振動する。
この村は隕石が落下してきたところにできた、クレーターのような作りだ。
ただ、この規模の隕石としてはクレーターが小さすぎる。
隕石はギリギリの高さで浮いており、接近した衝撃が作りだしたクレーターだったのだ。
それが、降臨者の地面激突と同時に隕石もまた落下した。
圧倒的重量が、クレーターを抱えた山に掛かる。
その結果、猛烈な地すべりが起き始めた。
御降村が……!
丸ごとツルッと滑って山の下に向かっていく!
「なななな、なんだかとんでもないことが起きておるのう! うおおおーっ! ジョナサン! 前じゃ! 前を見よ!」
「城之内くん! 突っ込みます! 電車が巻き込まれますーっ!!」
「あ、麓に電車が走ってたのか!! おっしゃーっ! ここで食い止めるぞ!!」
俺は体内の気みたいなものを、全力で対流させる。
「手伝いましょう、勇者よ。豊穣の力を注ぎ込みます」
後ろから抱きつくセレス。
「うひょー! ジョジョに抱きついたの初めてなんだけど! っていうかこの後、これ以上のことが待ってるわけだよね? うひょひょ、緊張してきました、胸のバクバクがヤバい」
「黄瀬が緊張感を削ってくる! だが猛烈な勢いで気が溜まった! それじゃあ行くぞーっ! みんな近くの何かに掴まれ! せーのっ!! 発剄……震脚!!」
その姿は、四股を踏むように見えたことだろう。
振り上げ、振り下ろした足が、滑りながら移動する御降村を地面へと繋ぎ止める楔となる。
轟音が響いた。
周辺一帯にそれなりの規模の地震が起きたことだろう。
単独で震度4くらい出せるようになってしまったな。
ああ、御降村?
線路と数センチの距離で停止した。
そして、御神体たる隕石がぼろぼろと崩れていく。
「よっしゃ、勝利だな?」
「終わった終わった……! 今度は戦えたぞ!」
「わたくしが乗っていた建物が倒壊してしまいましたわ」
仲間たちが集まってくる。
栃子もひいひい言いながらへたっている。
幽霊なのに地震が通じるのか。
『何も……何も喋らない方が神秘性が担保されると思っていたが……やめだやめ!! お前ら……お前ら……一体なんなんだーっ!!』
おっと!?
降臨者の怒声が響き渡る。
それは、地面に叩きつけた紫色の降臨者からではない。
砕けかけた隕石からだ。
隕石は卵の殻のようになっており……。
そこから、アホみたいに巨大な怪獣めいた何かが現れる。
「なんだ、お前、まだそんな眠てえこと言ってるのか?」
ダイオンが鼻で笑った。
「こっちにゃ、女に手を出されるとブチギレて、世界まで救う頭のおかしい奴がいるんだよ」
「ああ、そうだ。君には想像もできんだろうが」
花京院も笑っている。
「その男は、命を賭した戦いに身を投じる理由を持っていない。ただ、悪を討つ事を趣味とするとんでもない男だ」
「ま、常識では測れませんわね。だからこそ、あなたがたも彼のことを理解できないのでしょうけど」
ヴェローナがちらりと俺を見て、ネイアも「いやはや全く。何もかもが常識の埒外じゃ」と頷いた。
「そこがイケてるの! ジョジョを知ったら他の男なんか視界に入んない! ヤバさが違うもの!」
黄瀬が目を輝かせる。
同じ口から、セレスが言葉を発した。
「私が選び、私がこの戦いへ誘った戦士ですから。私の選択は何も間違っていなかったと自信を持って言えます。ねえ、勇者よ」
『だ、誰だ! そんな者が余の邪魔をしたというのか! なんなんだお前はーっ!!』
問われてしまった。
答えるのがセオリーであろう。
「俺はネトラレブレイカー!! 愛なきNTRを生み出す降臨者よ! 今ここで爆砕してやる! まあ愛あるNTRでも爆砕するが!!」
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