第219話 強制的に祭りを始める気か!!
全ての使徒を片付けた俺達。
テキ屋な百鬼夜行の中には、洒落怖系の使徒もいたようだが……。
やっぱ、単体で出てこないとダメだよな。
個性が埋もれてしまう。
俺達ネトラレブレイカーズが、まとめてやっつけてしまったのだった。
「あれ? テキ屋が一人もいない……」「屋台が放置されてる」「わっ、焼きそば焼いている最中じゃん」
うむ。
テキ屋は全員、君たちがさっき見ていた花火になったぞ。
綺麗だったろう。
「ではわたくし、近場の屋根まで登って狙撃の準備をしますわね」
「おお、ヴェローナ臨戦モード」
「この状況下で、降臨者が黙ってると思いますの? 絶対にやらかしてくるに決まっていますわ」
「奴らへの理解が深い。そもそも、超越者がやって来てこの隕石をぶん殴ればいいんじゃないか」
「それはできないのですわ。やるとすれば、この世界を丸ごと吹き飛ばすことになりますもの。あの方、ジョナサンと戦ってから変わりましたのよ? 世界は支配するものではなく愛でるものだと言って、今では王国と友誼を交わしていますわ」
「変わるもんだなあ! どうりでちゃんと駐車場にUFO停めて我が家に来るはずだ」
奴が世界を守るなら、降臨者は俺達の手で決着を付けねばならんと。
「しかし……まだ俺は実体化できないようだな。中条の体を借りているしかない。まあ、それぞれの世界の主人公に憑依するのはいつものことだな」
「はえー、先輩の体でもネトラレブレイカーさんになると、そこまで動けるんですねえ。すごーい」
祐天寺が感心している。
「うむ。俺が乗り移ることで常識を超越した力を発揮できるようになるんだ。それがさっきの花火だぞ」
「見ましたよ! でもあんなの、記事にしても誰も信じてくれないだろうなあ……」
あまりにも荒唐無稽すぎるものな。
「オカルトというものは、多くの現実的な事象の中に、明らかに異質なものが一滴混じっているからこそオカルトたり得るのですぞ。ですが城之内くんのそれは、多くの異常が山盛りでやって来るばかりで、その中に一欠片の現実的さもありませんからな!」
はっはっは、と愉快そうなメガネ先輩。
実際、本当の異常事態なんてのは徹頭徹尾異常で理解不能に決まっているではないか。
という話をしていたら、セレスが「むむっ」と声を漏らしたのだった。
そして、スーッと黄瀬の中に入り込む。
「わっ、どうしたのセレスちゃん?」
「どうやら降臨者が、予定を早めたようです。いえ、多分日付的には翌日に変わったのでしょう。だから儀式を進められるようになったのだと思われます」
「なにっ! 俺達が壊した太鼓が元に戻っていく!」
「面妖な……!」
ダイオンと花京院が破壊したはずの、ミクダリの大太鼓。
それがぎしぎしと音を立てて再びその形をなしていく。
いや、大きく歪み、あちこちにこの世のものならざる触手みたいなので固定されているではないか。
村の男達が、太鼓のバチを持ってふらふらと集まってくる。
そして、小瀬家の三人もふらふらと……。
「いかん! 強制的に儀式をやるつもりだぞ! こうなれば、村の男どもを全員叩きのめすしか……」
「なに、ジョナサンよ。ここはわしに任せておけ! 女衆よ! 旦那が他所の女と、卑猥な祭りをしようとしておるぞ! いいのか? 今年も見過ごしていいのか? 毎年モヤモヤしてるじゃろうが?」
ここで唸りをあげる、ネイアの種まき!!
彼女は村の人間に化けて、村中の夫婦に不和の種を撒いていたのだ!
つまりは……。
「あんたー!! 今年はもう許さないからねーっ!!」「あたしというものがありながらーっ!!」「いい年して若い女に色目使って! 大学に行ってる息子に情け無いって思われてるよ!」
村の奥さん軍団が、舞台に向かって詰めかける!
舞台を囲おうとしていた柵が踏み倒され、男たちは奥さんたちに掴みかかられて「ギヒェー!!」と悲鳴をあげた。
「なんという恐ろしい光景だ!」
「じゃろ? こやつらが恐れるのは身内じゃよ。いかに超越的な存在の意思で祭りに参加してるからと言って、同居している妻に後ろめたく思ってないわけがあるまい」
「なーるほど」
ネイアは、奥さんたちの間に燻っていた不満に火を付け、今日という日まで大きく燃え上がらせていたのだ!
御降村の祭りが今、自壊しようとしている……!
なお、独身者はネイアがみんな叩きのめしてしまったらしい。
用意周到!
「なんだこりゃあ……」
「これはまた、のどかな光景というかなんというか……。世界の危機は、家庭の危機の先にあったんだな……」
唖然とするダイオンと、何やら納得している花京院。
この状況では、力を振るうまでもないな。
ご家庭に任せておけばいい。
小瀬家の三人のみ、ボーッとした状態で舞台の上にいる。
「な、な、何が起こっているんだ!! おい村の衆!! 何をしとる!? ミクダリ様の祭りだぞ!? ええい、夫婦喧嘩なんかしてるんじゃない! 舞台に上がれ! 女を犯すんだ!! それがミクダリ様の望みだぞ!!」
村長が一人、舞台の前でぴょんぴょん飛び跳ねている。
そこに黄瀬がトコトコ近づき……。
「お、おお……! 祭りは外から来た神子も大歓迎だぞ! さあ、お前も舞台に上がって……」
というところで、セレスが乗り移っている黄瀬は村長の体をつかみ……!
「いきなり抱きつくだと!? わはは、情熱的な……な……なぁーっ!?」
情熱的なブロックバスターだ!!
相手を横抱きにしながら、ひっくり返すように後方にぶん投げる技である!
「ウグワーッ!」
吹っ飛ぶ村長!
炸裂する舞台!
砕け散る舞台!
「きゃーっ」
正気に戻って転がされる小瀬家の三人!
「ふうーっ。これで全ての儀式は潰えましたね!」
「うわーっ、おじさんの汗がぺとぺとしてるー」
やり遂げた感があるセレスと、手のひらをワキワキさせて顔をしかめている黄瀬。
村長は壊れた舞台から足だけを突き出して、ヒクヒク蠢いている。
「これで本格的に、降臨者のパワーアップは避けられたな。また舞台を作り直せば分からんが、御降村の夫婦の人間関係がそれを許すかな……?」
きっと許されないだろう。
つまり降臨者は、村の住人をそっくり入れ替えない限り、儀式完遂の算段はつかなくなったのだ。
ゲームをしていた時は難攻不落に思えた因習村だったが、圧倒的力で押し潰せば攻略可能だった。
「後は……ヤケクソになった降臨者が出てくるだけだな」
俺は、御本尊である隕石を見上げる。
村に突き立った隕石に、ピシッと一条の亀裂が走るところだった。
おいでなすったぞ!
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




