第212話 テキ屋は色々知っているようだな!
さて。
昨夜のことだが、中条は色々あって正体がなくなるほど酒を飲まされ、そのまま美春の部屋に連れ込まれ、なんと夏乃も合わせて3Pしたらしい。
こいつ……今までの主人公体の中で一番モテるな……。
いや、俺がアクションした結果、中条の信頼度がぶち上がっただけとも言えよう。
ちなみにその夜で絞り尽くされた中条は今朝になってもぶっ倒れたままなので、俺が体を使っているのである。
「よし、今日も村の会議に乗り込むぞ」
「先輩、昨夜は帰ってこないと思ったら……いつの間にかネトラレブレイカーさんに入れ替わってますね?」
「ほう、分かるか……」
「常に臨戦状態みたいな空気を纏ってる人なんか、普通いませんもん」
祐天寺遥には完全に理解されてしまったようだな。
なお、俺が元気に朝食の席に現れたら、美春も夏乃もなんか色っぽい視線を送ってくるのだ。
俺は賢者モードだから通用しないぞ?
「昨夜より硬派な感じの譲二さんもいいですねえ」
「なんだか私、こっちの譲二さんのほうが好きかも……」
「お母さんもお姉ちゃんもおかしくなってない?」
秋奈の言うことは正しいぞ!
祭りが近づくにつれて、この村には女性をそういう気分にさせる呪いみたいなのが満ち始めているのだろう。
なお、超越者の庇護下にあるネトラレブレイカーズには通じないのだ。
セレスなんかそういうの基本的に全く効かないしな。
多分、彼女は女神であり、超越者たちと本質的に同格だから効かないんだろう。
「ほう、朝飯は納豆と佃煮、そして漬物か」
「雑貨屋さんが利用できなくなってから、お料理があまり用意できなくなってしまって……ごめんなさいね」
「いや、構わん。雑貨屋だが、逢魔が時あたりが一番利用しやすいと思うぞ。その時間帯はこの村の人間にも近しい者が店員をやっている」
「あらそうなんですか!? 雑貨屋さん、離婚してから独身だったと思ったけど……」
そいつはこの話が終わるまで帰ってこない。
栃子が代理でやってくれるのだ!
「素朴な朝飯も美味い。それはそうと、今日の会議に俺も行こう」
「ええ、はい。お越し下さいな。今日の譲二さんはなんだか……すごく頼りになりそう」
ということで、美春と夏乃と秋奈、そして祐天寺遥とともに会議に参加したのだった。
村の連中、働きもせずにここで茶を飲んで村祭りの話ばかりしているのか。
俺が入ってくると、男どもがこっちを見て、また来たのかという顔をした。
そしてすぐに、公民館の空気が張り詰める。
この場に一人、鍛え抜かれた臨戦状態の戦士が現れたのだ。
空気が変わらないほうがどうかしている。
「お、お、おかしいな……。なんだか汗がダラダラ出てくる……」
ハゲ頭の村長が汗を拭いながら、目を泳がせている。
それは本能的に恐怖を感じているのだ。
この村の男どもは、多かれ少なかれ使徒の因子を秘めているようだ。
それ故に、天敵である俺がいると恐怖を覚える。
「今回は俺も会議に参加させてもらってもいいかな?」
「い、いや、部外者は参加できない……」
「俺も、参加させて欲しいと言っているのだが……?」
「あっあっあっ」
俺の気迫に当てられた村のおっさんが、泡を吹いて倒れた。
うーむ、並の使徒の一割も力のないおっさんではこんなものだろう。
雑貨屋の爺さんは殺す気で来てたぞ。
あいつは半分人間やめてたな。
ぶっ倒れた男が廊下に運ばれていった。
そいつを見て、秋奈が「あの人、あたしのおっぱい触ってくるからきらーい」とか言うのだった。
「ほほう、では後でもう少し教育をしておいてやろう」
「ほんと!? なんか今日の譲二さん頼りになるなー」
ピリピリした空気の中で会議が進む。
とは言っても、大した話はしていない。
どこの誰が、ここの担当だとか。
どこそこの娘はまだ帰ってこないのかとか。
そういう話ばかりだ。
そんな中、新たな登場人物が現れた。
「どうもどうも、遅くなりまして」
「ああ、待ってたよ!」
やって来たのは、強面の大男だ。
白いスーツに柄物の赤いワイシャツ。
袖口から見える手には入れ墨がある。
テキ屋らしい。
つうかヤクザではないか。
村長はこの場のピリついた空気をどうにかすべく、テキ屋に話を振った。
「あと四日で祭りだろう。店を出せる場所も決まったから、そちらでどこに何を出すか割り振ってくれ」
「こいつはどうも! それで、集客の方はどうなんで?」
「近隣の村に声を掛けてるよ。前夜祭は大いに盛り上がるだろうな。何せ、この辺りは他に娯楽もないことだし」
どうやら御降村周辺には、いくつかの村が点在しているらしい。
そして祭りの日は、その村々から大勢の客を呼ぶと。
娯楽がない時代の村人たちはこの祭りを楽しみ、テキ屋たちは村人たちが落とす金を手に入れる。
では、この閉鎖的な村がそうまでして祭りをやる理由はなんだ?
「俺が会議に加わるのを嫌がるくらいなのに、どうして祭り本番は外の人間を積極的に呼び込もうとするんだ?」
こういうのはちゃんと声に出して聞いておかないとな。
村人たちがビクッとし、テキ屋がじろりと俺を見た。
そして目を細める。
「あんた、外部の人だろう? そうだったらこの村の祭りのことが分からないのも当然だ」
テキ屋は笑顔を作ってみせた。
「祭りには、あちこちの女子供も来るんだよ。屋台や出店がたくさんの祭りは楽しいからな。みんな大いに楽しみ、そして普段は触れ合わない近くの村の連中と顔を合わせる。そして、一部の女子供は御降村の良さを知って、住み着いたりするのさ」
「ほう、なるほど」
これはゲームでは語られなかったディテールだ。
女を生贄に捧げる村が、どうして存続できているのか。
それは近隣の村から女を調達するからなのである!
そのための餌が、前夜祭なのだろう。
これ、テキ屋は何もかも分かって協力しているな?
後々敵対することになりそうだ。
「祭りはもうすぐだ。大いに楽しんでいってくれよ」
「ああ、大いに楽しませてもらおう」
テキ屋が歯を見せて笑い、俺もにこやかに微笑んだ。
何故か村人たちが、俺の笑みを見て震え上がっているのだった。
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