第209話 ちょっと多めに使徒を狩る!
さて。
三面鏡を退治し、降臨者側は一旦手を引っ込めた状態だが……。
相手が引いた分だけ押し込むのが俺流だ。
中条が寝たところで、俺はまた体を使わせてもらうことにした。
おっと!
立ち上がったら夏乃がフラフラと外に出ていくところではないか。
まるで夢遊病のようである。
これは何かと言うと、遠隔で精神操作してくるタイプの怪異に操られているのである。
そして男の家に行って、叡智な事をするわけだな。
それを夜中に起きた中条が追跡し、目撃してしまう。
何故か体が動かず、その光景が終わるまで見てしまうのだ。
だが今は違う!
俺がネトラレブレイカーの状態になっているからだ!
追跡するぞ!
そして第三眼を使用する。
ほうほう、夏乃の頭から光る糸のようなものが家の外へ伸びていっている。
「どれどれ……。おっ、きちんとサンダルは履いているな。偉い」
俺も中条のスニーカーを引っ掛けて後をついていく。
夏乃は寝間着だが、中条だって寝るためのパジャマなので問題ない。
それにこれはゆったりしていて、動くのにはちょうどいいのだ。
ほうほう、夏乃が導かれていくのは一軒の家である。
真っ暗な御降村の中、唯一煌々と明かりが灯っている。
夏乃が扉をノックし……ニヤケ顔の男がそれを出迎える……というところで俺がエントリーだ。
「ツアーッ!!」
頭上の光る紐をチョップで叩き切る!
糸が切れた人形のように、夏乃が倒れ込んだ。
「な、なにぃーっ!? なんだお前はーっ!? ハッ! お前は……数日前にやって来たという雑誌記者! 雑貨屋たちを怪しい技でのしたのはお前か!」
「さすがは閉鎖環境の田舎だ。噂が伝わるのが早いな。それでどうする? 俺はこの娘を連れて帰るが、その前に怪しいことをしようとしていた貴様を叩き潰そうと思っている」
「顔色一つ変えずに恐ろしいことを!! 狂人め!! だが、今宵の俺には守り神がついていて下さる! 糸のお方! 糸のお方~!」
男が名を呼んだ瞬間、俺の頭上から無数の糸が垂れ下がってきた。
それはどんどんと太くなり、綱のように変わる。
「ツアーッ!」
俺がチョップで切り裂くと、ちょっとだけ粘ついた。
この粘度……。
俺のチョップでなければ張り付いて拘束されてしまうだろう。
「なんで手刀であの方の糸を切り裂けるんだ!?」
驚愕する男。
そいつに、糸がぺたりと張り付いた。
「あっ、しまった! 糸のお方! 俺です! 人違いです! ウグワーッ!!」
男は人で空に吸い上げられながら、無数の糸に巻き込まれて細く細くよじれていく。
ついに、顔だけが太い糸の表面に浮き出したような姿になり「ぎゃあああああ」とか叫ぶだけになってしまった。
無差別なタイプの使徒か!
しかし実体が見えない今、どう攻めたものか考えてしまうな。
おっと、夏乃を回収!
俺は軽気功で疾走すると、倒れている夏乃を担いだ。
そこに、ふわふわと糸が集まってくる。
なるほど、俺の動きが鈍くなったと見て、絡め取って殺す気か!
一つ、試してみるか!
ツアーッ!!
迫りくる糸の群れ目掛けて、俺は空を打った。
震脚の要領で、空中に発剄を放ったのである!
すると、糸がびりびりと震えて近くの糸と絡まりあった。
しばらく絡んだ糸がもぞもぞ動いていたが、上空でブツリと切れる音がして、糸の集まりが落ちてきた。
切り離したか。
つまり……頭上に敵がいる!!
俺は夏乃を抱えたまま、家屋の上へと飛び上がった。
そこには無数の糸が張り付いている。
そして糸を束ねるものが夜闇に紛れて存在しているではないか。
「むおー! 城之内くん! 彼奴は全ての糸と繋がっていますぞー!」
「この声はメガネ先輩!! つまりどういうことだってばよ!」
「糸に向かって、城之内くんの発剄みたいなものを放つのです! それが奴に届きますぞ!」
「なるほどー!!」
糸は慌てて、メガネ先輩の声がした方向に飛んでいく。
だが、メガネ先輩はさすがなもので、既にその気配が消えていた。
糸がふらふらと探しているな。
油断したものだ!
俺は糸の一つをぐっと掴んで……。
「ツアーッ!! 浸透勁!!」
引っ張りながら勁力を叩き込んだ!
『ウグワーッ!!』
頭上で叫び声がして、慌てて糸を断ち切ろうとする感触がある!
馬鹿め!
お前が糸に集中した瞬間……。
「ツアーッ!!」
『ウグワーッ!!』
何者かは俺の発剄にやられ、ボトッと落ちてきた。
巨大なミノムシのようなやつだ!
こいつが糸によって人間を操り、あるいは人間を釣り上げて精気を吸い尽くすようなことをやっていたのだ。
だが、姿が見えてしまえばこっちのもの!
俺は夏乃をちょっと屋根の上に寝かせると、ミノムシを抱え上げながら走った!
全身に糸が絡みつこうとするが構うものか!
『ヤメローッ! ヤメローッ!!』
何をされるのか悟ったミノムシが叫ぶ!
「お前はやめろと言われてやめたことがあったか!? ないだろう! あったとしてもここで爆砕する!! ツアーッ!! ランニングパワーボム!!」
屋根から飛び出し、地面にミノムシを叩きつける!
慌てて糸を吐き出してクッションにしようとするミノムシ!
だが、俺は空を震脚で蹴って加速。
ミノムシの体は糸を追い越し、何よりも早く地面に叩きつけられてクレーターを生み出した!
『ウグワーッ!!!!!!!!!』
絶叫とともに、ミノムシが潰れ、爆散した。
中から人骨らしきものがゴロゴロ出てくるが、まあパワーボムの衝撃で全部粉々になった。
「うーむ! 恐るべき敵だった。夜の戦いでは久々にピンチになったな。助かった、メガネ先輩!」
「いやいや、仲間は助け合いですぞ。では!」
声だけがして、またメガネ先輩の気配が消えたのだった。
あの人も怪人だな。
「うーん……」
屋根の上で声がする。
夏乃が目を覚ましたらしい。
俺は彼女を迎えに屋根上へ飛び上がった。
「大丈夫か、夏乃」
「あっ……譲二さん……! あれ? 私どうしてこんなところに……?」
「さあな。寝ぼけたのかも知れないな。俺に掴まっているがいい。家まで連れて行ってやる」
夏乃をお姫様抱っこすると、彼女は「きゃっ」と言った後、くすくす笑い出すのだった。
「なんだか……お姫様になったみたい。譲二さんって王子様だったりする?」
「ははは、それは夏乃ちゃんの夢かも知れないな。さては、これも君の夢の中かな……」
なんかクサいセリフを吐きながら、俺は彼女を家に送り届けるのだった。
いやあ、こうやっているとパルメディアでのマリーナを思い出すなあ。
強力な使徒を二体倒したし、今度はパルメディア辺りから援軍が来ないかなーなんて思う俺なのだった。
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