第207話 屋内に侵入者あり! 悪魔の三面鏡を撃破せよ!
帰宅した俺達だが、すぐに様子がおかしいことに気付いた。
小瀬家に踏み込んだ瞬間、足元がぐにゃりと歪んだのだ。
そこはいつの間にか、古びた日本家屋に変わっていた。
「これは……なんだ……!? また何かの攻撃だって言うのか!? 次から次へと……おい、守り神!」
『よく分からん。調査を頼むぞ。俺は非実体故においそれと手出しできん』
「ううむ……役に立つのか立たないのか……」
三和土から上がると、ギシリと軋む音がした。
家屋はどこにも窓がなく、眼の前には廊下が続いている。
ぽつりぽつりと置かれた行灯が、辛うじて視界を保ってくれている。
「気を付けて進まねば……。何があるか分からないからな……」
「先輩、左右は引き戸になってるみたい」
「おい祐天寺、パカパカ開けるな! あっ」
開いた扉の中は真っ暗闇だった。
廊下に置いてある行灯をずらし、照らしてみる。
そこは、古い時代を思わせる部屋だった。
板張りの壁と床、むしろが敷かれ、文机と棚がある。
どれもが古び、黒い何かで汚れていた。
血か……?
その時。
外をガサガサと何かが這ってくる音がする。
なんだ!?
何かがやって来ている!?
「祐天寺!」
「は、はい!」
扉を締めて、二人で息を潜める。
扉は一部が格子状になっており、そこから外の灯りが漏れてきていた。
行灯に照らされて、這ってきた何者かのシルエットが見える。
キリンのように長く長く首が伸びた、巨大な女だ。
十二単から、何本もの腕が飛び出て、それが床を這いずっている。
俺達がいるところで、そいつは停止した。
『誰ぞ……。誰ぞ、人の残り香ぞある……』
「……!!」
祐天寺が声を漏らしかけた。
俺は彼女の口を手で封じる。
格子に女が近づき、じっと覗き込んでくる……。
『いたあ』
にたりと笑った口の中は、お歯黒で真っ黒だった。
扉が突き破られる!
「祐天寺!」
俺は彼女を突き飛ばし、伸ばされた女の腕に打ち据えられる!
ぐうっ!
意識が……。
意識が……!?
ま、まずい!
これは……。
■
「ツアーッ!! 選手交代だ! 伸ばされた腕を掴んでーっ!!」
『何ぞ!? 何ぞ起こったか!?』
「アームブリーカー!! ツアーッ!!」
『ウグワーッ!!』
無防備に腕を伸ばすとは素人め!
俺はその腕を掴み、逆関節で肩に叩きつけたのだ!
腕の一本が使い物にならなくなった化け物……使徒は、絶叫をあげながら床の上でのたうち回る!
「のたうち回るだと!? 馬鹿め! 体勢を立て直すチャンスを自ら捨てたな! 終わりだ! ツアーッ!!」
文机を蹴りながら天井を駆け上がり、引き戸を支える、かもいとなげしをぶち抜きながらの……浴びせ蹴り!!
『な、何ぞーっ!!』
「怪異っぷりの強い外見とでかさとパワーにおもねり、受けのテクニックを怠ったお前の怠慢が敗北の原因と知るがいい! ツアーッ!」
『ウグワーッ!?』
浴びせ蹴り一閃、使徒の頭部を叩き割る!
勢い余ってそこから全身を真っ二つに割った!
当然、使徒は粉砕!
『ウグワーッ!? ひどいーっ!!』
「どうやら周回しか能が無い雑兵だったようだな……」
「第二人格のネトラレブレイカーさん!!」
「ああ。これは家屋の中を作り変えるタイプの使徒の攻撃だ。素早く俺にチェンジ出来て良かった。行くぞ祐天寺遥、ついてこい。全ての部屋を開けていくぞ!」
「は、はい!」
「写真も撮りまくれ!」
「はい!」
その後、家屋の中を走ってくる戦闘タイプの使徒……。
神楽舞みたいな姿をした、オカメのお面をつけて、手足が刀になったやつを、
「ツアーッ! 手足を刀にしてつかみ技が出来なくしたことが貴様の敗因!! 刀の腕を受け止めてからのカンヌキスープレックス!!」
『ウグワーッ!?』
爆砕!
通路いっぱいの大きさで迫る、巨大な女の顔をしたオオムカデを……。
「逃げ場がない環境で突っ込んでくるとは、試合のいろはを知らぬ素人め!! ツアーッ! シャイニングウィザード!!」
『ウグワーッ!?』
相手の攻撃ごと尻尾まで貫通、爆砕!!
「す、凄い……!! どっちが怪異だかもう全く分からない……!!」
祐天寺の恐怖心も晴れてきたようだ。
そう、正しく体を鍛え、技を身に着けていればこのような連中は恐るるに足らず。
あとは似たような使徒ばかり来るので、流れ作業で倒していくぞ!
途中から面倒になったので、全てモンゴリアンチョップで仕留めた。
『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』
「全部で十六体の使徒がいたようだな。そしてこの家を変化させた敵の正体は……こいつか」
日本家屋の最奥にたどり着いた。
迷路みたいになったら、速攻で壁をぶち抜いて風通しを良くしていたのだ。
なので通ったところかどうかすぐに確認できたぞ。
攻略時間は二時間ほどだろうか。
屋内を徘徊する使徒を速攻で全滅させたから、探索がスムーズだった。
『オオオ……。数少ない安らぎの場所である……拠点を悪夢で飲み込めば……普通は絶望するはずなのに……』
三面鏡があった。
その中に、血まみれの女が映っている。
そして、血まみれの女がドン引きしている。
「布団の中に怪異がいるとか、風呂場に怪異が出てくるとかはもうパターンなのだ! 俺のバトルスタイルはそういう連中にも対応している!」
『ば、化け物……!!』
「ツアーッ!!」
三面鏡なので、普通に持ち上げて床に叩きつけて割った!!
『ウグワーッ!? こ、こんな理不尽なやられ方をするなんてぇーっ!! そもそもまだ人質の話もしてないのにーっ!!』
「言われてみれば、小瀬家の母娘がいないな。あ、出てきた」
三面鏡が作り上げていた日本家屋風の異空間が消えていく。
その後には、小瀬家の三人が倒れていた。
人質を取るとは卑怯な奴め。
だが、人質をどうこうする発想をする暇など与えるわけがあるまい。
俺の怒涛の攻略を見てテンパったところを、回復する前に粉砕した形だ。
「これでかなりの数の使徒を爆砕したな。降臨者によるこの世界の守りも、かなり緩んできたんじゃないか……?」
なお、祐天寺遥はここで気が抜けたらしく、へなへなとへたり込んでいるのだった。
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