第200話 取材という名のフラグ回収である!
「このゲーム……因習村NTR~奪われた美人母娘と後輩~だが、序盤が長い」
「先輩が虚空に向かって語りだした……!!」
『確かにそうですね。後ろでずっと見ていましたが、感情移入させるためにこちらの遥さんや、小瀬家の美春さん、夏乃さん、秋奈さんとの交流フェイズが長いです』
「幻聴と会話し始めた!」
「ああ。つまりこのままではかなりの時間が掛かるはずだ。だが、中盤の入口である村人の襲撃がついさっき起こった。これは明確に、この世界の支配者……降臨者による介入と見ていいだろう。悠長にやっていては無理やりBADENDに持っていかれて、俺達はこの世界から弾き出されるぞ。そのための……取材という名のフラグ回収だ! もしもーし! 都会から来た記者です! この街の祭りについての取材をさせてください!」
近くの家窓が半分開き、闇の中から視線だけがこちらを見ていた。
俺が声をかけると、ピシャっと窓が閉まる。
馬鹿め。
窓を閉ざした程度で俺のインタビューから逃れられると思っているのか!
本来ならNTRイベントを起こさねば集められぬ情報だが!
そんなもの、力ずくで押し通る!!
「ツアーッ!! ガラス窓を割らない程度の遠当て!!」
スコーンと外れるガラス窓!
「ウグワーッ!?」
家の人が巻き込まれてぶっ倒れたな。
窓からニューっと俺が顔を出す。
「取材よろしいかな?」
「ヒィーッ!! ば、化け物!!」
化け物的な因習村の住人たちと言えど、俺がそれを超越してしまえばただの人に過ぎない!
「答えるのか、答えないのか、どっちなんだい?」
「ヒィーッ! こ、こ、答えます!!」
ということで、フラグが立ったぞ。
じきに行われる祭りについての情報を獲得。
御降神社についての事を、祐天寺遥にメモさせる。
「先輩、こんな凄い取材をする人だったんだ……。しかも明らかに並ならぬ功夫の腕前……。香港映画みたい」
そうか、この時代、香港アクション映画とかが流行っていたんだったな。
あれは遠当てとかしてなかった気がするし、まだこの頃には気弾とかかめ◯め波は存在していなかった。
俺の遠当てが、オリジナルになる時代である。
次なる取材は、村に一軒だけある雑貨屋。
何周目かでここにいる店主が変わるんだよな。
一周目からしばらくは、さっき戦ったナタを持っていた爺さんだ。
小瀬家ルートに入って、うち二人のヒロインのエンディングを見ると、店主がお姉さんになる。
気だるい雰囲気の、目に隈がある女性。
年齢は二十代前半くらい。
そしてこのゲームに、出てくる女で、固有名があるのにモブや名前だけということはありえない。
そう!
つまりこいつは……。
行方不明になったはずの栃子だな。
「いらっしゃい。私がここにいるのに、あなた達が二人でやってくるなんて……。どうやらこの巡りはおかしくなってるみたいね」
「ど、どうも。ええと、お会いしたことありましたっけ……?」
遥が恐る恐る尋ねる。
栃子がにんまりと微笑んだ。
「言っても分かんないと思う……。私がいるということは、本来はミクダリ様が力を増している状況なんだけど……」
目を細めて、俺を見る。
「俺が介入したからな。既にこの世界のループのフラグはズタズタだぞ」
「みたいね。慌てて私を呼び起こしたみたい。あーあ、この巡りなら、私はまだ死んでるはずなんだけど……。そもそも、ここの店主はどこよ」
「俺がボディスラムで倒した」
「ミクダリ様から力を授かってたはずの男よぉ? 生身の人間がどうこうできるわけがないわ。……ってことは、あなたは化け物ってこと。あっは」
栃子が笑った。
「勘弁してえ……。私は意味ありげな事を言うだけで、戦闘力が全く無い端末なんだから……」
『やけくそみたいな感じになってますね』
「ちょっと待って。実体が無いやつがもう一人いるんだけど!」
「おい祐天寺遥。今聞いてる内容をサラッと記録しておくんだぞ。ループとかミクダリ様とかそういうのな」
「訳解んないですけど、何故かメモできてます……。なんだこれ」
「世界の強制力とかそういうやつだ。祐天寺遥のメモにそういう力があるんだ」
「……あのう……。あなた、本当に先輩ですか? なんか全然違う人と話しているみたいな……」
「そうだな。言うなれば……二重人格というやつだ」
『勇者は口からすらすらとでまかせが出てきますねえ』
「あっ!! な、なるほどー!!」
『あっ、信じた』
納得してしまった。
流石、短大を出てすぐにオカルト雑誌の編集者に就職する女である。
「納得するんだ……。えー、私の話はお役に立てたかな? ミクダリ様は昼は眠っているけど、あちこちで端末が耳をそばだててるから。この雑貨屋は端末である私やあの爺さんがやってるから、爺さんを倒すか私が裏切れば安全」
「お前、黒幕に連絡を取るつもりか?」
「そんなあ。滅相もない……。あなたみたいな化け物を前にして虚勢は張れないわ。二度も死ぬのは嫌だし」
「賢いな。ではこちらにつけ」
「先輩、悪役みたいな物言いだ……」
「二重人格だからな」
「それなら仕方ないですね……」
「魔法の言葉じゃない」
栃子が呆れている。
「でも、私が味方になったとしても……。夜には村が牙を剥くわよ。私、子供の頃は、夜は絶対に外に出るなって言われてたの。それに、村の周りの林にも入るなって。ミクダリ様が従える強大な怪異が、夜の世界を支配している。いくらあなたが化け物だって、あの怪異と戦うのは分が悪いわよ……?」
確かに。
それぞれに対策が必要な怪異……つまり、使徒がいる世界だ。
原作のゲームでは、人間でしか無い中条が主人公だったため、対応できなかった。
だが、主人格が俺に切り替わっていれば話は別だ。
メタ知識で対応することが可能になるだろう。
おっと、そろそろ時間のようだ。
中条の意識が戻って来る。
「元の人格に戻る頃合いだ。いいか祐天寺遥。俺は中条譲二の第2人格……ネトラレブレイカーだ」
「横文字の名前!!」
「また会おう」
意識の主導権を手放す。
中条譲二、話を進めておいてやったからな。
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