第197話 我が家に超越者が遊びに来たぞ!!
『いい感じで主人公がヒロイン全員と合流する形になったな』
『ふむふむ、これって本来のルートから外れる流れだったんですか?』
『そうなる。実際はくねくねに出会うことで必ず気絶するんだ。そこでサブヒロインの祐天寺遥と別れ、小瀬親子に拾われる。祐天寺遥の行方を探すとサブヒロインルート、小瀬家で過ごすと彼女たちのルートというわけだ。だが、上手いこと両方のルートをまとめられたようだ』
『倒してよかったですね、あのくねくねとやらを。あまり強い使徒では無かったようですが』
『正気であれば意識を撹乱され、あるいは狂わされてしまう恐ろしい相手だ。故に俺達の前では無力だった』
『まるで勇者だけでなく、私も正気ではないような言い方ですね……』
『しれっと俺が正気ではないというのを既成事実にしようとするな』
こちゃこちゃ言い合いながら、俺達は中条と祐天寺についていく。
これより、因習村NTR世界での戦いの始まりなのである。
では、そもそもどうして、俺達が非実体の姿でここにやって来ることになったかなのだが……。
今から一時間ほど遡ることになる。
■
「超越者が紹介してくれたゲームだが、そろそろ回想ルームが埋まるぞ」
「勇者はコツコツとよくやりますねえ。一度使ったら賢者モードになるから、遊ばなくなるものなのではありませんか」
「俺は回数やれるんだ。そもそもセレスは俺との夜のことは知っているはずでは?」
「夜に私と実っているのに、昼は昼でゲームを楽しんでいる精力が不思議すぎます」
「それだけに賢者モードになると俺は長い。そして強い……」
「勇者の賢者モードは、異世界を救いますからね、比喩ではなく」
「だろう? つまり俺の叡智ゲームには価値があるんだ」
「いつぞやは遊びすぎて夜に実れなかったじゃないですか!!」
「あっ、やめろやめろぽかぽか叩くなー」
PCの前でそんな事をしていたら、母が「お友達が来たわよー!」と呼んだのだった。
はて、友達とは。
「おかしいですね、勇者はこちらの世界に友達はいなかったはずですが」
「おい言い方ってものがあるだろ」
実際は高校時代の友達がいたのだが、一人は結婚して嫁さんの実家に引っ越して行ってしまい、もう一人は若くして酒で内臓ぶっ壊して死んだのである。
なんたることだ。
人生何が起こるか分からん。
それはともかく、いないはずの友人が訪ねてきたという。
何者であろうか。
玄関まで向かってみた。
セレスも俺の後ろをついて、階段を降りてくる。
『よう、ネトラレブレイカー』
「あっ、超越者!!」
そこには、以前戦ったときと同じ姿のままの超越者が、平然と立っていたのだった!
いくらなんでも怪しすぎだろう。
もしかして、普通の人間にしか見えないような偽装でも施して来たのか?
「あんたの友達って外人さんだったのねえ。肌なんか緑色で」
「普通に宇宙人の姿に見えてるんじゃねえか!! ちょっとは隠せよ!」
『俺様の姿をどうして誤魔化す必要があるんだ。どこに出しても恥ずかしくないオーバーロードだぞ』
本日は日曜日なので、自宅にいる父親まで顔を出して超越者の姿を見ている。
「母さん、せっかく友達が遊びに来たんだ。この間俺が買って来た取っておきのお茶請けを出してやろう」
「あらいいですね。可愛いお嫁さんはできるし、国際的な友達はやって来るし、最近いいことばかりだわ」
この両親には危機感というものが無いのであろうか。
しかしまあ、俺の人間関係は、全て異世界で構成されているな。
超越者を部屋に呼び込むと、俺とセレスと超越者でかなり手狭になった。
六畳間で、セレスも寝られるように大きめのベッドがあるんだぞ。
そこにPCとデスク、それからちゃぶ台に本棚。
そして俺が買い集めている叡智なフィギュアが並んでいる。
『ほう、ここが貴様の部屋かネトラレブレイカー。いい趣味だな……。これはこれは……』
フィギュアを持ち上げてしげしげとスカートの中身を確認する超越者。
こいつ、分かってやがる。
「超越者はどうして勇者の家に遊びに来たのですか? それもどうやって?」
『ああ、俺様の宇宙船で来たぞ。世界間移動ができるのは知っているだろうが。船は衛星軌道上に浮かべてあるが、降り立つ際のポッドは駐車場に停めてきた』
おお……。
謎の宇宙ポッドが停められた駐車場と、それを見たであろう人々の反応を想像してしまう。
「なるほど、つまり超越者はこのゲームの世界に勇者をいざないに来たと」
『そうなるな。降臨者め、世界の壁を強固にしていやがる。俺様の介入を避けるためであろうが、このままではネトラレブレイカーも入り込めまい』
「俺が物思いにふけっている間に話が進んでるじゃないか! つまりどういうことなんだ?」
『この間、俺様が貴様に紹介したこのゲーム……因習村NTR~奪われた美人母娘と後輩~だが』
「いいゲームだった。もう三回くらい使った」
「お陰で実りのチャンスを一回飛ばされました! プンプンですよ!」
『おう、それは済まん事をした……』
超越者がセレスに謝ってる。
『気を取り直してだ。この世界が、俺様と統轄者に並ぶオーバーロード、降臨者の根城になっている世界なのだ。これはゲームの形をしてはいるが、降臨者がプレイヤーから精気を集め、己を復活させるための装置になっている。見よ。既にこのゲームは8000DLを超えている。明日にはセールが開始され、このゲームの価格は50%オフになる。そうなれば、10000DLが見えてしまうだろう』
「良いNTRゲームが売れるのはいいことなのでは?」
『10000DLされてそれだけのプレイヤーがこのゲームを遊ぶことで、降臨者は完全な復活を遂げる! そうなれば、数多の並行世界はこの強力なオーバーロードの侵略を受けることになるだろう。無論、俺様も貴様に負けなければ並行世界侵略をするつもりだったが』
「今は新作ゲーム作ってるんだよな? NTRものの戦記物シミュレーションファンタジー」
『うむ、乞うご期待』
「楽しみ!」
「似た者同士ですねえ……」
そこへ、母が麦茶とお茶請けを持ってきた。
おおっ、これはクッキー生地でバタークリームをサンドしたやつ!!
父の出張土産である。
あの男、還暦間近なのにバリバリ仕事しているからな。
三人でもりもりとバタークリームサンドを食べつつ、会議を進める。
『美味いな……。つまりだ。俺様では存在が大きすぎて、現状では侵入ができない。貴様と女神が思念体となり、この世界へ入り込むのだ。そこからは流れでどうにかやってもらいたい』
「アドリブ任せ過ぎる」
『8000DLとは言ったが、既に海外では割れによる違法DLが横行しておる。違法DLはソフトメーカーによる侵食セーブが通用しないため、遊んだ瞬間に魂と精気を吸いつくされて死ぬ。故に奴は復活寸前になっている可能性もある』
「思わぬところで違法DLの恐怖が語られたな」
『貴様らがこの世界で、降臨者が世界管理のために放っている使徒を滅ぼしていけば世界強度が下がる。そうなれば、俺様や弟子が入り込めるようになるだろう』
「なるほど分かった協力しよう」
「勇者よ、決断が早すぎます」
「ちょうど今賢者モードだし……」
ということで、俺とセレスは新たなる戦場……因習村世界へと向かうことになったのである。
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