第192話 始まる最終決戦!
雪しんしんと降る中、試験最終日が終わる。
明日は終業式。
その後は冬休み突入だ。
恐らくこの冬休みを、俺は迎えることができない。
生徒昇降口から外に出て、その予感を確信に変える。
雪の中、校長が立っていた。
彼の前には、二人の少女がいる。
黒須聖美。
黄瀬翔子。
目のハイライトが無くなった少女二人を伴い、校長が不敵に笑っていた。
これはMC……マインドコントロール状態というやつだ。
NTRに向かうためのパターンの一つだな。
『二学期が終わる前に、懸念ごとは片付けておこうじゃないか』
「同感だ」
人質を取って、戦いを挑んできたな。
俺もそれに応じた。
人質の命を盾にして俺に不利な条件を突きつけてもいいが、俺はそんな事をしたらカッとなってフルパワーでアタックしてしまうのである。
だが……。
俺の言葉が出るのと同時に、別の言葉も吐き出されていた……!
「黒須さん……! 黄瀬さん……!! お前……なんてことを!!」
「!?」
『!?』
俺と校長が同時に驚く。
いや、本当に驚いた。
これは、城之内雪之丞の生の言葉だ。
ついに彼は、俺が目覚めた状態のままでも動けるようになった。
体のコントロールが城之内に渡る。
「校長! 二人を解放しろ!!」
『ほお……』
校長の表情が、戸惑いから笑いに変わる。
混乱しているなりに、状況を理解したのだろう。
『あの男は君の……第二の人格のようなものだったか。随分と真っ直ぐな……学生らしい学生に戻った』
俺と校長が……いや、城之内と校長が対峙しているのを、後から来た生徒たちが見守っている。
彼らは皆、これから何が始まるのかを理解しているのだ。
「学園は、僕らのものだ!」
城之内の叫びが響く。
「あなたが今までやってきていたことは許されない! 僕があなたを止め……学園を取り戻す!!」
城之内はポケットに入っていたマスクを被った。
いいぞ!
行け、城之内!
「僕は……ネトラレブレイカー!! 行くぞ、校長!!」
うおおおおおお!!
歓声が上がる。
なぜ相手が校長なのか?
理解できている生徒はおるまい。
だが、誰もが本能的に察していた。
これこそが、学園の明日を決める最大の戦いになると。
校長もまた身構えて応じる。
『人質など取る必要が無かったな! 君のような素直な生徒であれば、私は大好きだぞ! そおれ、技を仕掛けて来なさい! 拳法か? プロレス技か? そのどれもに私は対応できる!!』
「ツアーッ!」
嵐のようなチョップの連打!
これを校長は次々に受け流す。
ネトラレブレイカーはチョップから変化してのチェーンパンチ!
これもまた、校長は見事に受け止める。
城之内、俺が使っていた技を見事に己のものにしている。
努力したのだろう。
やるものだ。
ただ、敵はさらにその上を行っているだけだ。
城之内雪之丞は人間だ。
どうしようもなく、人間なのだ。
故に、人を超越した怪物である校長の前では、その真っ直ぐな攻めは通用しない。
「どうして……! どうして僕の技が通らない!」
パンチ、キック、さらに投げ技を仕掛けようとして抜けられ……。
『次は私の番だ! オリャーッ!』
「ウグワーッ!!」
ねじり込むような掌底を喰らい、ネトラレブレイカーが吹っ飛んだ!
雪の中をバウンドしながら、校庭まで転がっていく。
「ネトラレブレイカー任せろ! 次は俺だ!!」
そこに駆けつけてくるマスカレード。
『おお、君も来たか! そして君たちも!』
響! そしてミザル!
戦える奴が全員出てきたな!
いやあ、感慨深い。
『オールスターか! 感慨深いなあ。よし諸君、私を倒すことができたら、全ては不問にしようではないか! ハハハハハ! まあ無理だと思うがね』
おっと、校長と感慨深い、のところで感想が被っちまった。
「勇者は精神性が人間じゃないので一致するのでははないですかミノリー」
そんなバカな。
俺も正真正銘の人間なのに。
なお、俺の視点は今、城之内の体を離れてこの戦いを俯瞰する状態になっている。
マスカレードを筆頭に、仲間たちが校長に攻撃を加える。
素晴らしいコンビネーションだ。
校長の腕に飛びつき、折ろうとする響。
猿拳で校長を翻弄し、一撃を決めるミザル。
そして音速の剣撃が校長の頭部を打つ。
ついに校長が、雪の中に倒れ伏す……と見えた。
生徒たちから歓声が上がる。
倒れかけた校長は……。
『実に……実に感動した! 生徒たちはここまでの力を身に着けていたのだなあ! ふははははは! 教育者冥利に尽きるというものだ! だがぁ……』
倒れかけた状態から、重力を無視して元の体勢に戻る校長。
腕に取り付いていた響が、軽く振り払われた。
「ウグワーッ!」
「あっくん!!」
赤佐の悲鳴だ。
そしてミザルのフェイントを無視した校長の蹴りが、彼を吹っ飛ばす。
「ウグワーッ!!」
「ミザル~!!」
「ミザル~!!」
キカザルとイワザルも叫ぶ。
最後に、マスカレードの剣を全てくぐり抜けて、校長の腕が首を掴んだ。
何発か受けた剣の攻撃で、校長の化けの皮が剥がれつつある。
校長に化けていたそいつは、マスカレードを片手で持ち上げながら、自ら校長の皮を剥ぎ取った。
観衆から上がる悲鳴。
そこにいたのは、青い肌に赤紫のドリルみたいな髪をした長身の男だった。
明らかに頭身が高くなったな?
そして体は全身タイツめいた宇宙服に覆われている。
『見事だ……見事だよ諸君……! 私の虎の子の四天王を退け、ここまでやって来た。敬意を表して私自らが諸君を仕留めにきたのだが……。いやはや、感動した。人間風情の身でここまで練り上げるとは』
「ぐうううう……離せ……離せ……!!」
必死にもがきながら、木刀を振り上げるマスカレード。
「先輩!!」
青菅の悲鳴が響く。
花京院が絡むとヒロインみたいなムーブするやつだな。
木刀が叩きつけられるが、元校長には通じない。
奴はマスカレードを地面に叩きつけた。
「ウグワーッ!!」
マスカレードが悶絶する。
「ま、まだだ! 僕はまだ戦える! 二人を……二人を返せ、校長先生ーっ!!」
強烈なドロップキックで飛びかかるネトラレブレイカー!
だが、これを元校長は振り返りながら、片手で掴み取った。
『あの怪物から肉体を取り戻した。人間性の勝利だな。実に喜ばしく、人の可能性を感じる素晴らしい事態だ。だが』
「うわあああああ!!」
片手で振り回される城之内。
『どれだけの可能性があっても、人では私には及ばんのだよ。本来の力を発揮するまでもなく……』
マスカレードの横に叩きつけられるネトラレブレイカー。
「ウグワーッ!!」
『結末はこのようなものだ。この世界は私が作り上げた狩り場。君たちはどれだけ成長しようと、私の想定の域を出ることはない。いや、私が想定した上限には達してくれた。素晴らしい。素晴らしい……! そして君たちには大事な人もいるようだ』
元校長が見回すのは、赤佐と青菅と黄瀬と黒須。
『それを奪い、ネトラレの力を存分に得た後……私は彼に挑むとしよう。この統轄者が、世界の採集収穫を行う!』
圧倒的だった。
全ての技は、攻撃は通じない。
ネトラレブレイカーの力を使いこなしたはずだった城之内も、元校長……統轄者には届かなかった。
絶望的なまま、戦いは終わる……。
そう思えた時である。
「ネト……ラレ……ブレイカー……さん……。オカルトの力……こんなもの、じゃ……」
黒須の口が動く。
倒れた城之内が、この光景を俯瞰で眺める俺に手を伸ばした。
「僕達じゃ……届かない……! ネトラレブレイカー……!! 力を……!」
「ネトラレブレイカー……!」
絞り出すように、マスカレードが名を呼んだ。
「ジョジョ……!!」
三猿が俺を呼ぶ。
「ヤバい方の城之内くん……!!」
響、俺をそんな風に思ってたの初めて聞いたぞ!!
「城之内くん!」
「ジョジョ!」
「助けて……ジョジョ……!」
赤佐が、青菅が、黄瀬が。
「みんな、彼の名前を呼ぶんだ!!」
現れたのは、厚木先生だった。
まさかあなた、俺の存在を感知していた……!?
厚木先生が頷くのが分かる。
「みんなで呼ぶんだ! 学園を守る存在の名を! 彼の名前を! せーので行くぞ! せーの!!」
そこにいた、全ての生徒が声を合わせて叫んだ。
「ネトラレブレイカーッ!!」
うおっ!?
空間をビリビリと震わせる魂の叫び!
実体を失ったようだった俺にも、響く。
届く。
「勇者の肉体が再現されますミノリー!」
うむ。
どうやら……最後の戦いは、この世界におけるネトラレブレイカーの肉体で行えるようだ。
雪原の中、校庭の中央に俺が現れる。
応援団が用いる大きめの学ランが、内から盛り上がる筋肉でパツパツになっている。
上背は城之内よりもでかい。
俺がプロレスをする際に理想とするタッパだ。
『なんと……!! 生徒たちが私の作り出した世界を逆用し……お前を召喚したというのか……!! なんということ! なんという成長だ! これは……これは想定外だった!』
統轄者は生徒たちを振り返り、次いで俺を見て笑った。
『後はこの怪物を排除し、素晴らしい成長を見せた君たちを……私が取り込むだけ』
「ツアーッ!!」
俺が既に跳躍している。
校庭程度の距離であれば空間を手で連続震脚して超加速、そこから放たれるドロップキックで瞬時に横断できるのだ!
喋っている最中の統轄者の顎が、俺の両足で撃ち抜かれた。
『ウグワワーッ!?』
回転しながら吹っ飛ぶ統轄者。
宙返りしつつ着地する俺。
「戦いの最中に演説するのはマイクパフォーマンスでもない限りは攻めてくださいと言っているようなものだぞ!! 俺の前で語りたいならマイクを持て!! 身を持って知れたな! 授業料は後払いでいい」
理不尽な強さを誇る統轄者を、理不尽さで蹂躙する!!
これが俺である!
『お前……お前ぇぇぇぇぇ!!』
統轄者が吠えた。
俺を睨む。
『なんなんだお前は! 本当に、突然現れて……!! 私の計画を全て……全て潰していった……!! だがここで、お前を倒せば全ては元通り! 私は予定通り力を得ることができる……!! お前を……理由のわからないお前を……倒して……!』
「俺の名はお前ではない」
俺は身構える。
ようやく、最終決戦スタートだ。
「俺はネトラレブレイカーだ!! 行くぞ統轄者!」
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