第190話 迫る、期末テスト!
水先を倒し、恐らく全ての間男は爆砕した!
黒幕たる校長は、新たな間男を生み出すこともなく、沈黙を保っているようだ。
何故か?
恐らく、11月という季節は特別なイベントなどもなく、カップルの盛り上がりが無いからである。
それどころかだんだん寒くなり、日も短くなり、むしろテンションが下がっていく月だ。
ここは狩り時ではないと判断しているのだろう。
2月と11月は売れないという小売のセオリーと同じである。
「勇者は妙なことに詳しいですねミノリー」
「ネットサーフィンも趣味だからな……。そうやってると雑学の知識を得たり新作の情報を掴んだりできるんだ」
「NTRゲーム関係の情報が流れてることがあるんですかミノリー!?」
「あるんだなあ」
「勇者の世界こそが末世なのではありませんかミノリー」
そうかも知れない。
俺達はコートなどを羽織り、通学するようになった。
こっちの世界は夏が酷暑でない代わりに、冬が寒い。
温暖化が起こっていないので、このあたりにも平気で雪が降るのである。
そう!
雪だ!
「わあー! あっくん、雪ですよ!」
「本当だ! 帰る頃には辺り一面、真っ白になっているかもねえ」
赤佐と響がイチャイチャしながら前を歩いている。
響を鍛えたことで、二人のカップル関係は盤石になったようだ。
ラレ男がNTRされる理由は、押しの弱さや戦闘力の低さによるところが大きい。
このうち、戦闘力を徹底的に強化するとだ。
ラレ男もチャラ男などに絡まれた際に、こいつを瞬殺できる実感があれば心の余裕を持てる。
「城之内くん、もうすぐ11月が終わるけど、いよいよ期末テストが来るんだ」
「ええっ!? もうか!? 高校生ってテストばっかりしてるじゃないか!!」
なんか自分が若い頃もそうだった気がするが、覚えちゃいない。
もう十年くらい前なのだ。
「城之内くんも高校生じゃないですか」
そうだった。
今は城之内雪之丞の肉体に間借りし、高校生活を満喫しているのだった。
「テスト勉強を見てもらっていいだろうか? いつもすまんな」
「大丈夫。僕も城之内くんには世話になっているし。今年はオカルト研究会の黒須さんも参加するって。ほら、応援団によく顔を出してるでしょ」
「ほぼ掛け持ちみたいになっているな。オカ研は秋になると暇になるらしい。冬は冬で新しいオカルト探しが始まるようだが……」
あれ?
なぜ俺は黒須の動向に詳しいのだ?
「それはですねミノリー。勇者が最近、たまに意識が途絶えることがあって、その間は城之内雪之丞さんの肉体は自分の意志で動いているのですミノリー」
「えっ!? じゃあその間何をやってるんだ」
「黒須さんとデートしてますねミノリー」
「な、な、なんだってー! どうりで時間の流れが異常に早く感じるはずだ。一ヶ月の半分は俺の意識が無くなっているんじゃないか。これはつまりどういうことだってばよ?」
「この肉体が勇者の憑依に適応し、自意識を取り戻してきているのだと思いますよミノリー。ジョンと同じですねミノリー」
この世界は現実に限りなく近いので、魔法などが存在しない。
ドッペルゲンガー的な肉体を用意してそこに意識を移す……というわけにはいかないのだ。
これはどうやら、俺もタイムリミットが近いようだ。
本物城之内が完全に肉体の主導権を取り戻す前に、黒幕を撃破せねば。
というか……。
「城之内、黒須みたいな女が好みだったのか。黄瀬とか猛烈にアプローチしてきてるだろうに」
「派手な女子は苦手みたいですよミノリー」
「心根が陰の者なのだな……」
ということで。
俺は城之内と、ノートを使って交流をすることにした。
交流用ノートを購入する。
その一ページ目に本日の日付と、挨拶を書いた。
『よう。俺はお前に取り付いている意識、ネトラレブレイカーだ。お前の肉体を使って、7ヶ月間という時間を過ごさせてもらった。お前の青春の一部を持っていってしまった事は申し訳ない。だが、あと一ヶ月で黒幕である校長が現れる。こいつを爆砕するまで肉体を使わせてもらう』
「凄い言い分ですねミノリー。私だったら怒りますねミノリー」
「なんだと。ちゃんと申し訳ないって言ってるだろ」
「誠意が感じられないんですよね勇者の文章はミノリー」
そんな数値化できないものは使いこなせん!!
翌々日……。
俺の意識が1日分飛んだところで、城之内からの返答があった。
『はじめまして、ネトラレブレイカー。こうやってやり取りするのは初めてになりますね。僕はあなたの目を通して、全ての出来事を体験していました。だから、あなたが過ごさせてくれたこの一年間は、僕にとっても代えがたい凄い思い出になっています。目立たない普通の、いや、普通未満で友達もいなかった僕が、今は応援団の団長までやってて、凄く声も出るようになったし、友達もたくさん増えた。ありがとう。体はもちろん使っていいです。最後まで協力します』
「な、なんて話の分かる奴なんだ!! 響に匹敵するぞ!!」
「幼馴染と知力を持っていなかった響さんですねミノリー」
「おいやめろかわいそうだろ」
それを考えると、城之内は完全にモブだったと言えよう。
『お前の体で無理をしまくっているが、体を鍛えて経絡を強化しているから心配はいらない。あと、俺の意識が無いときでも基礎トレはきちんとやれ。第三眼も意識して使うのだ。あと、黒須には告白した? 告白したらNTRフラグが立つからな』
『ありがとう。体、鍛えてます! 権田原先生とも君のフリをして、一生懸命会話してます。三猿のみんなは見た目は怖いけど、いい人たちです。花京院先輩は僕の様子がおかしいことに気付いてるみたいです。響くんと赤佐さんには勉強を教えてもらえてありがたいです。あと、黄瀬さんは胸を押し付けてくるのをやめてほしいです。黒須さんとはその……クリスマスに告白しようかなって』
黄瀬め、セクハラ攻撃してるな!?
黒須と城之内の仲が急速に縮まっていることに焦っているのだろう。
お前は失恋側だぞ!
そしてタイムリミットがクリスマスは正解。
ここで黒幕を倒し、俺は城之内に青春を取り戻してやるのだ。
こうして奇妙な文通が始まり、季節は12月へ。
俺がときめき学園で過ごす、最後の月が始まる。
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