第175話 マスカレード悲しき過去!
「花京院先輩、どうぞ」
「ああ、悪いな」
冷えた麦茶を受け取り、花京院はこれをぐっと飲んだ。
もう秋とは言え、まだまだ残暑がある。
運動した肉体に麦茶は染み渡るよな。
「お前達も知っているだろうが、俺は応援団の仲間たちと一緒に離島キャンパスへ飛ばされた。あそこは地獄だった……! インターネット環境は無く、電話すら通じない。月に一度来るフェリー以外は外界と閉ざされた、学園とは名ばかりの監獄……!」
「現代日本なのにそんなのあるのか!? ほんと?」
さすがに俺も怪しんだ。
花京院は真剣そのもの。
マジらしい。
「その地はとある間男の狩り場でもあった。応援団にいた女子の中に、奏美もいた。知っているな希美」
「うん、奏美先輩……。あたしを妹みたいにかわいがってくれてて……、まさか!」
「そうだ。彼女は間男の手に堕ちた。俺達は必死に救おうとしたが、人知を超えた強さの怪物の前には刃が立たなかったんだ」
重々しく語られる花京院の過去に、息を呑む三猿。
「そうか……! ジョジョがいなけりゃ、あの化け物どもに対抗することなんかできねえんだ……!」
「俺達、使徒とかいうのがサクサク刈り取られていくからすっかり舐めてたわ」
「本当は雑魚みたいに見える奴ですら、人間を超えた強さを持ってるんだよな……」
そうだぞ。
ちなみに響を鍛え上げたので、下位の使徒なら対抗できるようになった。
三猿はもうスタイルが完成されてしまっているのと、頭脳による補助が期待できないので成長はしないだろうな……。
「離島の名は、姦陀島……。この学園に巣食う黒幕は、姦陀島の間男と親しかったようだ。だからこそ、気に食わない生徒を送り込む流刑地として機能させていたんだろうな」
父兄が黙ってなくない?
さすがにそこまでの無法は無理じゃない?
「勇者よ、暗示ですよ暗示ミノリー」
「暗示って言えばなんでも通ると思うなよ」
流石の俺もツッコミに回ってしまうような話だ。
奏美という女は間男に堕ち、快楽の虜になってしまったらしい。
青菅が慕うような出来た女性だったようだが、それですら使徒の前ではただの女である。
なぜならNTRゲームなので、そういう方向に世界が改変されるからだ。
ってことで、奏美を取り戻そうとした花京院と仲間たちは敗れ、ほとんどの元応援団部員は命を落とし、あるいは間男の軍門に下ったらしい。
最後まで抗った花京院だったが、人間でしか無い彼では手も足も出なかった。
だが!
何度もの、死線をくぐるような反抗の中、ついに花京院が命を落とそうとしているその時!
突然、世界の流れがゆっくりになったらしい。
現れたのは、一見して浮浪者のような、釣り竿を担いだ老爺。
『わしは剣神じゃよ。若いの、お前このままなら死ぬのは分かっておるな?』
「分かっている! だが! 俺は俺であるために、諦めるわけにはいかん!!」
『ほほっ! 今世は軟弱者ばかりになったと思っておったが、骨のある男もおるようじゃな! 良かろう。わしの剣を少しばかり教えてやる』
ということで!
時間が経過しない空間で、花京院は血反吐を吐くような修行をし、木刀を授けられたのだ。
「老師、なぜ木刀なんですか」
『だってお前、銃刀法とかあるじゃろ。あと竹刀袋にちゃんと入れておかないと、木刀でも捕まるからな』
ということで、時間は動き出した。
一瞬前とは別人になった花京院は、その剣技で間男の全身を破砕!
「な、なぜいきなりお前が強く!? そんな……そんな力がどうして……!」
「貴様に答える義理はない! ハアーッ!!」
「ウグワーッ!!」
ということで間男は爆砕された。
奏美は助けられたのだが、既に長い間快楽漬けになったことで学園への復帰は絶望的……!
花京院は彼女とともに本土に返り、奏美を入院させたのだという。
「うおおおーん! なんて悲しい過去なんだーっ!!」
「許せねえーっ! 間男の使徒許せねえーっ!!」
「こんなのって、こんなのってあんまりじゃねえかーっ!!」
三猿が男泣きしている!!
話を聞いていた青菅もうるうるしているし、響は難しい顔をしていて、赤佐は目が真っ赤だ。
「なるほどな……。NTRゲームのビターエンドだ。そりゃ復讐鬼になるというものだ……」
俺は花京院という男の、ネトラレブレイカー・マスカレードの存在理由を完全に理解したぞ。
そりゃあ、復讐に燃えながら学園に来てみたら、なんかよく分からん覆面の男がプロレス技で使徒を仕留めてたらびっくりするよな。
「城之内。お前はなんだ? どうしてあの化け物どもと戦う。お前も、大切な誰かを奴らに奪われたのか? 復讐のために戦っているのか……!?」
炎のような眼差しである!
熱い!
故に、これを受け止めた俺はこう返事するのである。
「何も」
「なにっ!?」
「特に何も奪われていないし、俺はそもそも間男どもと何ら関わりが無かった。戦う理由も本来はない!!」
「な、なんだとーっ!! ではなぜ……なぜお前は命を懸けて、次々に間男どもを撃破しているのだ!? 応援団という組織を復活させ、まともに部活動をやりながら、多くの女たちを守り続ける!!」
「それは……そこにたまたま間男がいるからだ! いるから潰すだけだ!! 今の俺の精神状態的に、賢者モードだから間男が暗躍するのが癇に障るのだ! 故に倒す!!」
「……この男……俺が知るどんな奴とも違う……! 精神的な怪物……!!」
あと、NTRゲームを遊んでるから様々なシチュエーションに詳しいので、趣味は実益を兼ねるなあと思いながら活動しているだけだ。
NTRブレイカーズはなんか、俺に絆されて協力してくれてるだけだぞ。
つまり……俺が命を賭して使徒を次々に撃滅するのは……それが趣味だからという他あるまい。
趣味で世界を救っているのだ!!
特別な背景とか、因縁とかそういうものはない!
たまたま間男を倒すモチベーションがあり、たまたまその能力があるのでやっているだけである。
「勇者は言うなれば意志を持った虚無ですからねミノリー」
「そう、それ」
なんか唖然としている花京院なのだった。
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