第170話 二学期は文化祭の準備だ!
二学期になった。
夏休みはあっという間だったな。
半分はあちこち駆け回って応援をしていた気がする。
俺の顔も、運動部中に知れ渡ってしまった。
この機に、俺は権田原先生に接触を図った。
「この様子がおかしいときめき学園において理性を保っている。あなたはもしや特別な存在なのではないか」
「あら! お目が高いわね~! アタシ、間違いなく学園最高の筋肉を持ってるわよ! 留学生のボブくんはなかなか凄いけど、でもせっかくの素材を活かしきれてないわ。それに彼ったら足が長いから、バランスよく筋肉をつけるのは大変よー? 背があまり高くなくて足が短い日本人って、ボディビルには有利なんだから!」
うおーっ!!
ボディビル談義!!
あと、権田原先生は普通にデカいでしょ。
ボブと同じくらいのタッパがあるじゃん。
せっかくなので、応援団の活動ついでに彼のトレーニングに付き合うなどした。
引退した男子バレー部の先輩たちもいるではないか。
「受験勉強の追い込みがな、このトレーニングでいい感じに気分転換になるんだ」
「あーっ、太ももに効く~っ!!」
「チキンレッグはゴメンだからな!」
「ジーンズに入らねえ太ももを目指すぞ!!」
燃えている!
「あななたち! いいわよぉーっ!! すっごくいい! 輝いているわぁーっ!! そうそう! バレーをやめたって、まだまだ幾らでも挑戦できるものはあるもの! まずは己の肉体に磨きをかけて、ボディビルに邁進しましょーっ!」
うおおーっ! と歓声をあげる三年生男子たちなのだった。
だがまあ、トレーニングはかなり有用だな。
俺は今まで、実戦の中で使う肉体だけを鍛え上げてきた。
今回のこれは、基本的には筋肉を肥大化させるためのトレーニングだ。
だが、権田原先生はトレーナーとしての資格も持っていた。
「城之内くんは格闘技をやっているでしょう? だったら、トレーニングの仕方は変わってくるわ。中程度の運動を既定セット数こなしつつ、全身をまんべんなく鍛える。必要なだけ筋肉がつけば、あなたの技は全体的にパワーアップするはずよー! そう! 力こそパワー!!」
「なんて説得力だ」
こうして俺は体を鍛え……。
「ほう、オカ研は文化祭で展示を? てっきりお化け屋敷をするのかと思っていたが」
「ハハハ、我らの内向趣味ぶりを舐めてもらっては困りますな」
メガネ先輩が顎を撫でながら笑う。
それが年頃女子の仕草か?
そう。
ときめき学園は文化祭が近づいていた。
夏休み明けに中間テストがあり、宿題の成果を確認させられる。
それが終わった二週間後に文化祭だ。
オカ研はひと足早く、テスト準備期間にもう展示の用意をしているらしい。
「我らは中間テストは余裕ですからな」
「オカ研勉強できたんだな」
「そうですぞ。どれくらいできるかと言うと、私はお茶水野女子大学生活科学部心理学科への推薦がほぼ決まっていましてな」
「偏差値68のとこじゃん!!」
本当に勉強できたんだな、オカ研。
「時に城之内殿はネトラレブレイカーとして活躍しておられるようですが……もしや何か行き詰まりを感じて私のところを訪れたのでは?」
「鋭い……」
最近、権田原先生にコーチングしてもらい、体を鍛え直していたところだった。
城之内雪之丞の肉体は中肉中背。
ラグビー部の小原くんと比べると、肩幅も体の厚みも無い。
全て、俺の技のキレでカバーして戦えていただけだ。
ここで体を鍛え直せているのは大きい。
中間テストまでの期間で、俺の肉体はトレーニングを経ておよそ10%のパワーアップを果たした。
すべての技の威力が一割増になるのである。
だが、まだ足りない。
あの四天王、ボブと用務員と戦うには、足りないのだ。
「良いでしょう。私が勉学の傍ら、この異様な学園で色恋とは距離を取りつつ身につけたオカルトの真髄、城之内殿に授けましょう。なに、お気になさらず。次代のホープである黒須殿と仲良くしてくれている礼です。彼女があんな乙女のような表情をするとは思っておりませなんだ」
はっはっは、と笑う十八歳の女子。
お前本当は何歳なんだ。
俺はメガネ先輩から手ほどきを受け、なんかよく分からんオカルトの儀式に付き合った。
「ほぼ無意味なイニシエーションですよミノリー」
「まあまあ。精神修養みたいなもんだ。こうやって儀式の中に身を置くことで己を見つめ直す……坐禅みたいなもんだな」
「儀式中にチンチラと言語を交わさないでいただきたい。はて、チンチラが言語を……? もしやオカルト……」
セレスの存在はオカルトそのものだろうな。
この一見無駄に見える行為をしたことで、なんかよく分からないが俺の視野が広がった。
「ふ、ふふふ……。これで城之内くんも……私達の仲間入りですね……」
黒須が妙に嬉しそうなのだ。
「まあな。オカ研には合宿で助けられたからな。こちらからも少しくらい歩み寄る。なんか数々の儀式を体験して、こう……知覚がグーッと広がった気がするんだ」
「城之内くん……身につけたことがすぐ実になるっぽいですから、普通に眉間に第三の目みたいなものが開いたんだと思います……。うちだと先輩しか開いてないので」
第三眼というのは額に目があるわけではなく、目に見えないものを眉間で感覚的に捉えられるみたいなやつだな。
えっ!?
メガネ先輩そんなことできたのか!?
じゃああの人、使徒とか全部見えてるんじゃないのか。
うーむ、思った以上に大きな収穫だったかも知れない。
この特訓を経て、ネトラレブレイカーはネトラレブレイカー・セカンドにパワーアップしたのである。
そんな俺の耳に、とんでもない情報が入ってくる。
それはなんと……。
俺が活動していない間に、学園内で新たなネトラレブレイカーが動き出したというものだったのだ!
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