第164話 サメか!? いや間男だ!
厚木先生が見事な肢体を惜しげもなく晒しながら、水の中を自在に泳ぐ。
うーむ、あれほど素晴らしいボディをしながら運動能力も高い。
天は彼女に二物を与えたのだ。
「ひ、ひぃー、城之内くん、手を離さないで下さい~」
「黒須は浮き輪を付けていてすら危ういな……。マラソンの名手だったのでは? いや、マラソンが強いのにどうして体はぷにぷにしているんだ……?」
「フルマラソン走り切るとさすがに身が締まります……」
「全身にエネルギーが蓄えられてるのか!」
浮き輪がなくても浮きそうに見えるが、本人がバタバタするので全く泳げるようになりそうにない。
「厚木先生、この女に泳ぎの極意を教えてもらいたい」
「いいだろう! 泳ぎというのは水を恐れていてはできないぞ。いいか? 水は放っておけば自然に浮くもの。脱力から始まるんだ」
「ははあ」
厚木先生がやって来て、黒須に手取り足取り教えている。
黒須も黒須で、逃げ場なしと腹をくくったようだ。
そこへスケベ根性の男どもが、教えてほしそうに近寄ってきたぞ。
俺はいつでも奴らを撃退する準備ができている。
さあ来い。
「おいどけ! 幾ら応援団長だろうと、俺が美夜子先生に手取り足取りエッチな水泳を習う権利を邪魔する資格は無いぞ」
「では俺を倒してから先に進め! ツアーッ!」
「ウグワーッ!!」「おのれ応援団長!」「この数を相手にどれだけ足止めできるかな!?」
「有象無象がどれだけいたところで物の数ではない!!」
「な、なんだか城之内くんが変な戦いを始めています……!」
「海に来て、みんなテンションが上がっているんだろうな」
厚木先生は基本的に大変鈍感なので、気付かないのだ。
そのままのあなたでいて欲しい。
「それはそうと、その気になった一般生徒はまるで出来損ないの使徒だな!」
「案外、この学園は黒幕が使徒を生み出すために作った工場なのかも知れませんミノリー」
「なるほど! その発想は無かった! ツアーッ!」
「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」
厚木先生に群がろうとする男たちを、次々に蹴散らしていくぞ!
みんな水着の前方を三角形に盛り上げおって!
動きが鈍くなっているから勝負にもならない。
片っ端からボディスラムで水中に投げ込んでいく。
さて、次はどいつだ……?
みんな性欲で頭が鈍っているから、次から次にやって来る。
これはしばらく、連中の相手をすることになりそうだ……。
そう思った矢先である。
突如、性欲男子たちの集団が「ウグワーッ!?」と吹っ飛んだ!
なんだ!?
何か黒いものが、水中を高速で泳いできたのが分かる。
それが体当たりをして、性欲男子をふっ飛ばしたのだ!
「黒い影……サメか!?」
猛烈な勢いで遠ざかった影を見る。
それはターンして、再びこちらに迫ってくるところだった。
むむっ!
その先には厚木先生と、泳ぎを教わる黒須の姿が!
サメから手が伸びて、厚木先生のブラを掴まんと……!!
「させんぞ! ツアーッ!」
俺は軽気功で飛び上がり、水上を走ってジャンプ!
黒い影目掛けてフットスタンプを叩き込んだ!
「ぬおーっ!? 海中だというのに頭上から!!」
黒い影は水面から跳ね上がりつつ、呻いた。
こいつ……!
サメかと思ったら、間男ではないか!
さっき追い払った三人組の一人だ!
好色三兄弟とか言ったか。
その一人は、サメのような泳法を武器とする使徒だったのである!
「うわーっ、なんだなんだ!?」
強烈なしぶきの中で、厚木先生は目を開けていられない!
今のうちに決着をつけるのである。
「今の俺に、お前では通用しない! 間男よ、爆砕せよ!」
「な、なにぃーっ!?」
着水するサメ男目掛けて、俺は海面を滑りながらのスライディングキック!
奴がこれをもろに食らってまた水上に跳ね上げられた。
サメの力を持つが、運動性能もサメになってしまったために小回りが効かないのだ!
「うがあああああああ!! バカな! そんなバカな! 海という俺のホームグラウンドで、こうも一方的に……」
「学園編序盤に出てきていれば強敵であったろう! だが、経験値が溜まった今の俺にとってお前はただのネギを背負ってきた鴨! さらばだ間男!」
俺はいったん水中に深く潜り、そこからのロケットのごとく浮上!
水圧変化は体内から気を巡らせることで相殺。
落下してくるサメ男目掛けて、水中から高く跳躍した俺が衝突した!
「ツアーッ! 昇竜崩拳!!」
「ウグワワワーッ!?」
サメ男は二度と海面に触れることなく、空中で爆散した。
俺は再び着水すると、厚木先生と黒須の元に戻っていく。
幸い、サメ男の爆発で周囲に海水が降り注いでおり、みんなこの超自然現象に夢中で俺が戦っていた事に気づいてはいない。
奴の断末魔など、カップルのキャッキャウフフに紛れて誰の耳にも届くまい。
「うわーっ、海の水が降り注いでいる!? 何があったんだ! 黒須、私の手を離すなよーっ!」
「う、うふふふふ、オカルト……! オカルトですぅ……! テンション上がってくるなあ……!」
必至に教え子の手を掴んで守ろうとする厚木先生!
良い教師だなあ。
そして彼女の腕にしがみつきながら、俺のやってた事を全て見届けて満足げな黒須!
俺が戻ってくると、黒須が厚木先生の腕から離れてザバザバ泳いできた。
おおっ、バタ足してる!
「城之内くん、お、お疲れ様でした……! やっぱり、強いですね……!」
「ああ。芸が無い超人タイプの間男だった。あのレベルなら今までもごまんといたからな。だが……上位使徒のあの二人が出てくるならこうは行くまい」
今も奴らは、この砂浜の何処かにいて獲物を見定めているのだろう。
必ずや叩かねばならないのだった。
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